2012年6月アーカイブ

歯科医療の現場から〉 高齢者の虫歯 (2012年6月14日中日新聞)

細菌増えれば肺炎に

 「年を取ると甘い物が欲しくて」とご高齢の患者さんは言う。その甘い物とは、砂糖が含まれているあめが多い。そうした人によく見られるのが歯頸部(しけいぶ)(歯肉との境目)の虫歯。この虫歯は非常に予後が悪く治療に時間がかかる。歯肉の下まで虫歯が深く進んで治療がやりにくく、そして広範囲、急性、多発性である。

 その理由の1つは、歯周病や加齢で歯の根面(こんめん)が露出しているためである。歯冠部のエナメル質は外界と接するため外胚葉性(がいはいようせい)組織で酸にも強いが、根面のセメント質は歯槽骨と接する中胚葉性組織のため酸に非常に弱い。そしてセメント質が無くなって表面に出てくる象牙質も酸に非常に弱い。また、あめは口の中に長くあるため、口の中が長時間酸性を保つ。

 アルツハイマーや手が自由に動かない等の要因もあり、短時間で多くの歯がまるで木が根から折れるように失われていく。歯根は残ったままなので、細菌数も増殖する。こうした歯周病を含めた口腔(こうくう)内細菌は免疫が落ちた高齢者を誤嚥性肺炎にしていく。そして多くの方が肺炎で苦しんで亡くなる。

 実際にそうした症例に遭遇しても、何とかかめるようにするのが精いっぱいである。高齢化社会への対応は、訪問治療や送迎など歯科からアプローチする「医療が出向く時代」になってきたと言える。保険医療制度など公的な対応が十分であることが望まれる。そして、あめはノンシュガーのタイプにすることも忘れずに。(静岡県歯科医師連盟評議員 鈴木龍)

歯磨き習慣、1歳半目安に (2012.6.2 産経新聞)

■親子そろって、楽しく・正しく虫歯予防

 生涯を通じた歯の健康維持は、幼いころからの健全な食習慣と毎日の歯磨きが第一歩だ。虫歯のない美しい歯並び、正しいかみ合わせや口中の病気予防は、心身の成長や健康増進にも深いかかわりが指摘されている。4日からは「歯の衛生週間」も始まるが、親子そろっての歯磨き習慣は、心身ともに健やかな家庭づくりに直結している。

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 「ごく普通に歯磨きの習慣を身につけ、おやつを食べ過ぎないようにし、酸性の飲み物を日常的に口にする生活を送らなければ、虫歯などを特別に心配することはありません。歯磨き後のチェック、仕上げ歯磨きなどの日常的なケアは、親子のコミュニケーションを図る機会にもなります」

 日本大学歯学部付属歯科病院長で小児歯科の白川哲夫教授は、歯磨きによる日々の手入れ、毎日の正しい食生活など、生活習慣の大切さを説く。生後半年ごろから乳歯が生え始めるが、白川教授は、奥歯の第一乳臼歯が生え、かみ合わせができ始める1歳6カ月くらいには、歯の健康チェックを本格化させたいという。

 「生え始めたばかりの歯は軟らかく、虫歯の危険性が大きい。1日に何度もお菓子やジュースを口にすれば、歯の表面からカルシウムが溶け出します。1歳半健診の受診を一つの目安に、好き嫌いのない、きちんとした食生活のリズムをつくり、歯磨きの習慣を身につけることが大切です」

 ◆「寝かせ磨き」も効果

 歯磨きの習慣づけは、毎日の繰り返しが重要だ。まず歯ブラシを口に入れることから慣れさせ、親のまねをさせて楽しませることから始めたい。「水の吐き出しができない子供は、そのまま飲み込んでしまっても問題はありません。何よりも子供が進んで歯磨きすることが大切で、興味に応じて電動歯ブラシを与えるのも良い」と白川教授。親子そろっての歯磨きは、歯磨き後の爽快感を共有でき、達成感とともに褒めることで子供の気持ちも高まる。

 白川教授は「磨く順番は特に関係がありません。全体をくまなく磨くことが大切です。歯の裏側、利き手側の歯など、大人でも十分な歯磨きができていない部分があります。さらに子供の場合は前歯の表側の付け根に磨き残しが多く、チェックや仕上げ歯磨きが欠かせません」という。小学校入学までは膝の上に子供の頭を乗せての「寝かせ磨き」が効果的だ。

 「1本の歯を失うことで歯全体のバランスが崩れ、乳歯を早く失うほどに永久歯に大きな影響が出ます。歯の色の変化にも注意しましょう。歯磨きに加えて1日1回デンタルフロスで奥歯などの歯間の手入れができれば理想的です。歯茎など子供の口の中は敏感ですから、力まかせにならないように気をつけましょう」

 ◆かみ合わせや歯並びも

 虫歯とともに気をつけたいのが、かみ合わせや歯並びだ。でこぼこや隙間のある歯並び、下の前歯が上の前歯よりも前に出るかみ合わせなど、さまざまな症例がある。虫歯や歯周病にもかかりやすく、言語の発声に影響し、審美的要因から情動の形成や対人関係などの社会性にも影を落とす。

 「指しゃぶりの癖で歯に力が加わり、上下をかみ合わせると大きな隙間ができる場合もあります。生活習慣に気を配って未然に防ぐことも可能ですし、かみ合わせの不具合から食事時間が長くなる例や、外見上から発見が難しいケースもあります。小児歯科では、乳歯のかみ合わせが完成する3歳くらいからの治療に有効性を認めて取り組んでいます」と白川教授は早期での処置を呼びかけ、言葉を続ける。

 「永久歯がほぼ生えそろう中学生くらいまでは小児歯科を掲げる専門医の受診をお勧めします。お子さんの成長とともに、親御さんも少なくとも半年に1度は歯科を受診し、親子ともに健康な歯で明るい毎日を送っていただきたいと願っています」

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