2013年5月アーカイブ

甘く見ないで子供のムシ歯(2013/5/27東京新聞)

もうすぐ「歯と口の健康週間(6月4~10日)」。子どもの歯は小学校高学年で永久歯へ生え替わるまで変化し続けるため、虫歯予防には保護者のチェックが欠かせない。乳歯期から生え替わり時期の予防のポイントを専門家に聞いた。(宮本直子)

 「『どうせ抜けるから』と乳歯の虫歯を甘く見てはだめ」と話すのは昭和大学歯学部の井上美津子教授(小児歯科)。乳歯が虫歯になると、永久歯も虫歯になりやすくなり、歯並びにも影響する。話す、食べるなど口の機能の発達にも支障が出る場合もあり、乳歯期からの予防が肝心だ。

 そもそもなぜ虫歯になるのか-。虫歯は口の中の細菌が糖質を分解して酸を作り、歯のミネラル成分を溶かしてできる。唾液の力で歯はある程度修復するが、食後も甘い物をダラダラ食べるなど、酸にさらされる時間が長いと修復が追いつかず、虫歯になる。井上教授は「おやつの時間を決め、メリハリのある食生活が予防の第一歩」と話す。

 甘い物の取り方とともに虫歯の二大原因といわれるのが磨き残し。虫歯の原因菌のすみかになっている歯垢(しこう)がたまると、虫歯になる危険が高まる。

 小児歯科医院「キッズデンタル」(東京都)の小児歯科専門医坂部潤さんは「小学校中学年までは親が仕上げ磨きし、磨き残しをチェックして」とアドバイスする。歯の成長に応じ、歯磨きのポイントも変わる。

 乳歯は生後五、六カ月で下の前歯から生える。歯が生えてきたら最初はガーゼや綿棒をやさしく口に入れて汚れを取り、その後、少しずつ歯ブラシに慣れさせる。歯ブラシのヘッドは小さめのものを。持ち方は力を入れず鉛筆持ちにする。

 一歳半から二歳で奥歯が生えてくる。複雑な溝があり、すき間なく生えるので前歯に比べ虫歯になりやすい。歯ブラシで届かない歯間の汚れはデンタルフロスで取り除く。「乳歯が生えそろう三歳ごろから習慣にすると効果的」と坂部さん。片手で使える持ち手付きタイプを薦める。

 永久歯への生え替わりは六歳ごろ始まる。生え始めの永久歯は歯質が弱く虫歯になりやすい。特に六歳ごろに生える奥歯「六歳臼歯」は虫歯になることが多い。磨きにくく、汚れがたまりがちなので保護者がチェックを。

 「仕上げ磨きは回数より質が大事」と坂部さん。歯垢がたまりやすい歯と歯茎の境目などに注意し、一日一回夜寝る前にしっかりやる。デンタルフロスも週に二、三回以上取り組めば磨き残しを防げる。歯磨き後に塗るフッ素ジェルも歯質強化には効果的だという。

 基本は家庭での予防だが、歯並びや歯質には個人差があり、歯科での定期健診も心掛けたい。「虫歯の自覚症状が少なく、気付かないうちに虫歯が進行する場合もある」と坂部さんは注意を促す。

◆予防のポイント 

・食生活にメリハリ

・仕上げ磨き 小学校中学年まで

・3歳ごろからフロス

・フッ素ジェルも効果

 

味覚異常(2013/5/20 福島民友新聞)

味覚異常

 口腔内の環境にも起因

 味覚異常はさまざまな原因で起こります。最も代表的なものは亜鉛欠乏症です。亜鉛欠乏症の場合は血液検査で簡単に診断がつき、薬物療法で改善します。そのほかに薬剤の副作用、脳梗塞などの神経障害、放射線治療の副作用などによっても起こります。
 薬剤性の場合には、その基礎疾患によって休薬できないこともあり、対応が難しくなることもあります。神経障害は、他の症状にも注意が必要で、時には鑑別困難なこともあります。
 しかし、多くは精神的な問題や、口腔(こうくう)内の環境に起因しています。
 口腔環境は、食事や会話により、常に変動しており、しかも気になり始めると常に気になりやすい場所です。ほとんどは一時的なものが、精神的な要因で違和感が残ってしまう、いわゆる心因性といわれる状態です。
 味覚は感覚です。感覚はその方だけにしか分からないものなので、こういったことが起こります。普通は心因性であることが分かり、患者さんが、それを受け入れることができれば、症状は消失してしまいます。
 しかし、そのきっかけとなったり、実際に口腔内の味を変えてしまうのが、むし歯や歯周病です。さらには、義歯の汚れによる口腔内のばい菌の増加などが、味覚異常を起こす原因となっていることも少なくありません。これは精神的なものではなく、口腔環境を整えることで改善します。味覚に異常を認めたら、まずは近くの歯科医院に相談してみましょう。

顔の左右どちらかに激痛、生活に支障来す「三叉神経痛」

飲食も困難に

顔の左右どちらかに痛みが生じる「三叉(さんさ)神経痛」。

年間10万人当たり4~5人の割合で見られ、季節の変わり目に症状が出る傾向がある。

痛みが強烈なため生活に支障が出て、高齢者では飲食が困難になることもあるという。

東京医科大学病院麻酔科の大瀬戸清茂教授に聞いた。

 三叉神経は、痛みなどを感じ取って脳に伝える知覚神経の一つ。

脳幹部から左右に1本ずつ出ていて、それぞれ額、頬、顎の3方向に枝分かれしている。

 大瀬戸教授は「三叉神経痛は加齢に伴って増える病気で、女性に多いことが特徴。

原因は、脳幹部から3方向に分かれる手前の部分が、周囲の血管に圧迫されて痛みが

起こると考えられています」と説明する。

 多くは顔の左右どちらかに起こり、風に当たる程度の刺激でも痛む。

発作は個人差があるが、1回に5~20秒、長くても2分以内に治まる。

 「痛みは激烈で『虫歯をたたかれたよう』と言う人もいます。

それがよく起これば当然、日常生活に支障を来します」(大瀬戸教授)

 また、高齢者では飲食ができないで体重が減ったり、脱水になったりする人もいる。

「顔に激しい痛みが起こるようなら、この病気を疑って痛みの治療を行う

ペインクリニック、あるいは脳神経外科、神経内科のいずれかを受診してください」

(大瀬戸教授)

 診断は、特徴的な症状でほぼつくが、脳腫瘍など他の病気でないことを確認する

ために磁気共鳴画像装置(MRI)による検査が行われる。

 治療法は薬物療法、神経ブロック、手術、定位放射線治療(ガンマナイフ)の4通り

ある。一般的なのは薬物療法と神経ブロックだ。

「薬物療法は、発作痛を抑えるカルバマゼピンという薬が広く用いられています。

ただし、この薬は眠気や転倒などの副作用があるので、服用中は注意が必要です」

(大瀬戸教授)

 神経ブロックは、かつては神経あるいは神経節に麻酔薬を注入して痛みを感じない

ようにしていたが、最近は高周波熱凝固法が普及している。

「これは痛みのある神経に金属針を刺して高周波を流し、その熱で神経を破壊して

痛みの伝達を遮る治療法です」と説明する大瀬戸教授。

いずれの治療法も一長一短があるので、医師とよく相談することを勧めている。


2012年6月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)

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