風邪をひいた後にせきだけが何週間も続くようであれば、せき喘息(ぜんそく)という病気かもしれない。夜中から早朝に激しくせき込むようなら要注意だ。さらにこの病気は、喘息の初期症状であることが分かってきた。放置していると喘息に進む可能性もある。「早めに気付いて治療を始めてください」と千里山病院呼吸器・アレルギー内科(大阪府豊中市)の安場広高医師は呼びかける。
冬だけでなく花粉の時期も要注意
せきが続くことを訴えて受診する人は、全国の内科外来患者の3分の1を占めるほど多い。そのうち、3週間以上も長引くせきの約6割がせき喘息という。喘息のような「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」という喘鳴(ぜんめい)がなく、エックス線写真でも異常が見られないため、見逃されることがあるようだ。
安場医師は「夜中から早朝にかけてせきが出ます。眠れないほどにせき込むので昼間に眠くなり、生活の質が落ちます。風邪によるせきは2週間程度なので、それ以上続くようならこの病気の可能性が高いでしょう」と話す。
原因は、風邪のウイルスや百日ぜき菌による気道の炎症がきっかけとなることが多い。ほかにスギやイネ科の花粉、ハウスダスト、ダニ、ペットなどのアレルギーが原因の人もいるという。風邪を引きやすい冬や、花粉が飛散する春は要注意だ。
一酸化窒素濃度の検査受けて
せき喘息が疑われる場合、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を測る検査が行われる。気道が炎症を起こしていればNOの数値は高くなる。喘鳴も息苦しさもなく、肺機能も低下していないというせき喘息は、これまでの検査では見つかりにくかった。
NOの検査は最近、健康保険が使えるようになり、大学病院を中心に全国200カ所ほどで実施されている。安場医師は、NOの検査について「せき喘息を見つける唯一の客観的な診断方法です」と説明する。
治療の選択肢の一つには、気管支の炎症を改善する吸入ステロイド薬と気管支拡張薬が一緒になった配合剤が挙げられる。この薬を飲み始めると、3~4日で夜間のせきが止まるという。
最近、せき喘息は、喘息の初期症状であることが分かってきた。早めに治療を始めれば喘息に進むのを止めることもできる。安場医師は「3週間、夜中にせきが止まらなければ迷わず受診を」と助言している。
(編集部)
2013年11月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)