2014年11月アーカイブ

スマートフォンなど電子端末を長時間使うと、眼精疲労や首や肩の筋肉疲労、手のしびれ、いわゆる"ストレートネック"など、体にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られている。こうした「スマホ症候群」と呼ばれる症状を引き起こすからには、スマホを使うときに相当な負荷がかかっているのだろう―そう考えた米ニューヨークの脊柱外科専門医、Kenneth K. Hansraj氏らが調べた結果、首が前に傾くほど首の骨にかかる負荷が増え、最も悪い姿勢では27キロにも上ったという。これは日本の小学3年生(8歳)の平均体重に相当する負荷だ。詳細は、医学誌「Surgical Technology International」11月号(2014; 25: 277-279)に掲載されている。

 「スマートフォンなどの携帯情報端末は世界中で使用されているが、使用する際にはどうしても姿勢が悪くなる」と話すHansraj氏は、一般的な体格の人をモデルに解析。首の曲がる角度は正常な姿勢(角度ゼロ)の場合でも4.5~5.4キロの負荷がかかっているが、首の曲がる角度が15度になると12キロ、30度で18キロ、60度では27キロもの負荷がかかると推計された。

 文部科学省の調査では、日本の小学3年生(8歳)の平均体重は男子で27.1キロ、女子で26.4キロとなっている。

 さらに、携帯情報端末の平均利用時間は2~4時間、年間累積700~1,400時間で、高校生の場合では5,000時間にも上るといわれている。その間、首の後ろに子供を乗せているのと同じ程度の負荷がかかっていることになるのだ。

 Hansraj氏は、首への負荷がさまざまな障害をもたらす可能性があると懸念を示した上で、「最新の技術革新を使わずにいることは不可能に近いが、スマートフォンなどを利用する際には首を自然な湾曲に保ち,前かがみの姿勢を避けるよう努力すべき」とアドバイスしている。



~ しみるのは歯?歯ぐき?実は2タイプある知覚過敏のひみつ ~

■あなたはどっちの知覚過敏?

むし歯ではないのに歯がしみる――これが知覚過敏です。とくに冷たいものがしみるという特徴があります。
歯の外側はエナメル質というかたい組織でおおわれています。その中には少しやわらかい象牙質という組織があり、
象牙細管という細い管を通して歯の神経とつながっています。
知覚過敏は、この象牙細管から刺激が神経に伝わり、痛みが生じることで起こります。


■知覚過敏には2つのタイプがあります。

1)歯に由来するもの
歯ぎしりなどにより、歯が薄くなったところにひびが入ったり、エナメル質の根もとが削れたりします。
そうすると、その部分から神経に刺激が伝わりやすくなります。

2)歯ぐきに由来するもの
通常、歯の外側はかたいエナメル質におおわれているためすぐに痛みは伝わりません。
しかし、加齢によって歯ぐきが下がると、エナメル質におおわれていない歯ぐきのキワの象牙質が露出し、
神経に刺激が伝わりやすくなります。

~ 歯ぐきを意識したブラッシングが最大のカギ!知覚過敏の予防法 ~


■むし歯じゃないのに歯がしみる!その原因は?

知覚過敏とは、むし歯ではないのに冷たい水や空気に触れて歯がしみるなどの状態をいいます。
とくに冬は知覚過敏を感じやすい時期でもあります。
そんな気になる知覚過敏について、高柳歯科医院院長の高柳篤史先生にお伺いしました。

「知覚過敏はおもに2つの原因があります。歯ぎしりなどで、歯をおおうエナメル質が削れることで起きる
"歯由来"のものと、加齢などによって歯ぐきが下がることで起こる"歯ぐき由来"のものです。
どちらか一方だけが原因の人もいますが、両方の原因が混在している人もいます」


▼しみるのは歯?歯ぐき?実は2タイプある知覚過敏のひみつについてはこちら
http://www.well-lab.jp/201411/basics/3002


■こんな症状がある人は知覚過敏かも!?

歯がしみるという共通点がある「知覚過敏」と「むし歯」ですが、それぞれのサインを高柳先生に教えていただきました。


●知覚過敏のサイン
・むし歯ではないのに冷たい食べもの・飲みものがしみる
・冬の冷たい空気がしみる
・歯と歯ぐきの境目がくさび状に削れている
・痛みは一時的で、刺激のあったときだけしみる

●むし歯のサイン
・進行すると冷たいもののほか、温かいもの、甘いものがしみる
・歯に穴があく、黒くなる

■知覚過敏で気をつけること

知覚過敏は日常のセルフケアが大切です。気になる方法について、Q&Aでチェックしていきましょう。


Q 知覚過敏になりやすい部位はありますか?
A 前歯と奥歯の中間にある「小臼歯部(しょうきゅうしぶ)」(犬歯の一本後ろの二本の歯)は、
  食べものをすりつぶすとき、歯に横から力が加わりやすく、知覚過敏になりやすい部位です。

Q 知覚過敏になりやすい季節はありますか?
A 冷たいものを飲んだり食べたりする機会の多い夏と、気温が低く、水道水の温度も低くなる冬は、
知覚過敏が生じやすくなります。


■知覚過敏のセルフケアで重要なのは「ブラッシング」

知覚過敏の痛みは一時的なので、我慢する人も少なくありません。しかし、痛む歯を避けて
歯みがきがおろそかになると、むし歯や歯周病の原因になります。
そこで、セルフケアの際のブラッシングのコツをご紹介します。

1 脇の部分の毛が短い「ふつう」か「やわらかめ」の歯ブラシで、小刻みに磨きましょう

2 知覚過敏を防ぐ成分が含まれているハミガキ剤を使用しましょう

3 露出した歯の根の表面のむし歯の予防には、フッ素入りハミガキ剤の使用がおすすめです

虫歯を放置するとガンの原因になるって本当?
虫歯を放置するとガンになる!?

「虫歯を放置するとガンになる」と聞くと、とてもびっくりなニュースですよね。実際のところはどうなのでしょうか?

結論から言うと、虫歯からがんになる可能性はまずない、と言っていいでしょう。あえて言うならば、欠けてとがった歯が長期間舌に当たり続けることで、舌に腫瘍をつくってしまうことはありえるでしょうが、確率はとても低いと思われます。また、歯が欠けることは、虫歯でなくてもあることですね。

■虫歯を放置してしまうとどうなる?

虫歯でむしろ心配なのは、深い虫歯を放置しておくことで菌が身体の中に達し、蜂窩織炎や心臓の炎症、脳炎などの重篤な感染症になってしまうことです。この場合、もちろん熱が出たり、強い痛みなどほかの症状も出ますので、病院に行くことになりますが、治療をしても間に合わず、まれに亡くなってしまう方もいます。

ただ、亡くなるほど深刻な状態になったほとんどのケースでは、感染が重くなりやすい基礎疾患(重い糖尿病や免疫不全など)を持っておられると思います。もちろん、まったくの健康体の方の場合でも、あまり深い虫歯を長いこと放置しておくと、何らかの感染を起こすことは十分ありえますので、注意が必要です。

■虫歯は早く治療したほうがいい

ここまで読んで、ドキッとした方も多いのではないでしょうか。ですが、ここで言う深い虫歯、というのは、神経に達しているもの、たとえば、痛みや腫れが相当でているのに、歯科に行かず、市販の鎮痛剤で何とかごまかしながら仕事や学業をしているといった場合を言っています。

「ここ、もしかしたら虫歯かなー?」と思う程度の浅いものや、つめたいものを食べたときにちょっとしみる程度のものでは、全身の感染症を起こすことはまずありませんのでご安心くださいね。いずれにせよ、虫歯はないに越したことはありませんから、歯磨きやデンタルフロスなど毎日のケアをお忘れなく

「腰痛に対する恐怖や不安があると腰を大事にしすぎる。その結果、かえって痛みが長引き、治りが悪くなる」と松平医師。

 脳には、痛みを抑える内因性の鎮痛システムが備わっているが、ストレス状態が続くと機能低下し、痛みに敏感になる。

 骨折やがん、感染などの病気がもとで起こる要注意の腰痛は、時間帯や動作に関係なく常に痛むなどのサインがある。これらがないなら、ストレスが関係した「非特異的腰痛」の可能性が高い。X線検査を行うと椎間板の老化などが映ることがあるが、形態の変化と痛みの強さは必ずしも一致しない。そのため、非特異的腰痛への画像検査は、世界的に推奨されていない。非特異的腰痛は腰痛全体の85%を占める。「非特異的腰痛だと分かったら、まずは安心することが大事。その上でセルフケアを進めていくといい」(松平医師)

腰痛の発症と慢性化に関係する要因
【発症】
・過去の腰痛歴
・持ち上げ動作が多い
・職場の対人関係ストレス
【慢性化】
・仕事の満足度が低い
・体のストレス症状
・腰痛で苦しんだ家族がいる
 1年間腰痛のなかった836人で腰痛発生要因を調べた結果、心身のストレスが浮上。一方、軽い腰痛のある1675人で慢性化にかかわる因子を調べた研究では、仕事の満足感の低さほか、ストレスに起因する身体症状などが挙がった。(データ:Spine;37,15,1324-1333,2012/PLoS ONE;9,4,e93924,2014)

~こんな腰痛は要注意のサイン~

●時間帯や動作に関係なく痛む ●胸部痛 ●発熱 ●がん、ステロイド治療、HIV感染の既往 ●栄養不良 ●体重減少 ●広範囲に及ぶ神経症状※がある ●脊椎や椎間板の変形による脊柱変形

 骨折、腫瘍、感染などを疑わせるサイン。発症が20歳未満もしくは50歳超も要注意。※神経症状とは、重い腰椎椎間板ヘルニアなどで神経根が強く圧迫されて生じる。片側の脚の痛みが腰痛より強い、足部に痛みが放散する、同じ部位のしびれと感覚麻痺などがサイン。(『腰痛診療ガイドライン2012』より)

この人たちに聞きました

牛田享宏さん
 医師。愛知医科大学医学部教授。学際的痛みセンター長。運動療育センター長。専門は運動器疼痛。「腰痛を理由に手術を受けても、痛みやしびれはたいてい残ります。メスを入れると神経を傷つけるリスクなども発生します。それでも受けるメリットがあるかをよく考えて判断してほしいと思います」

松平浩さん
 整形外科医。東京大学医学部附属病院22世紀医療センター運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座特任准教授。「非特異的腰痛は心配のない腰痛。自分の腰痛に対するネガティブなイメージが、腰痛を治りにくくするので、医療機関で検査を受け非特異的腰痛だと分かったら、安心してセルフケアに取り組んでください」


 急に起こってきた腰痛の多くは2週間以内に改善する、ストレス状態が続くと痛みが長引き、慢性化しやすい。これは、心身ともに緊張した状態が続くことにより自律神経のバランスが崩れるから。実際、痛みが長引いたり、繰り返し起こったりする慢性腰痛に発展するリスク因子を調べた研究で、(1)ストレスに起因する心身反応としての身体不調がある(2)仕事に対する満足度が低い(3)腰痛で苦しんだ家族がいる──という3つが挙がった。「家族歴が影響するのは遺伝的に腰痛を起こしやすい体質があるとも考えられるが、腰痛が恐怖を伴う記憶になっていることも大きい」と牛田教授。

脳には内因性の鎮痛システムが備わっている。その一つがセロトニン、ノルアドレナリンによる「下行性疼痛抑制系」。ストレス状態が続くと、この働きが低下し、ちょっとした痛みにも敏感に反応する
[左]健康な状態。痛みが脳へ上がってくると、セロトニン、ノルアドレナリンなどが分泌され、痛みを和らげる
[右]慢性痛がある状態。脳でのセロトニン、ノルアドレナリンの出が悪くなっているせいで、弱い痛みも強く感じる(イラスト:いたばしともこ)
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脳には内因性の鎮痛システムが備わっている。その一つがセロトニン、ノルアドレナリンによる「下行性疼痛抑制系」。ストレス状態が続くと、この働きが低下し、ちょっとした痛みにも敏感に反応する
[左]健康な状態。痛みが脳へ上がってくると、セロトニン、ノルアドレナリンなどが分泌され、痛みを和らげる
[右]慢性痛がある状態。脳でのセロトニン、ノルアドレナリンの出が悪くなっているせいで、弱い痛みも強く感じる(イラスト:いたばしともこ)

 牛田教授によると、痛みが脳で不快な感覚としてキャッチされるときには「つらい、苦しい」という情動体験を伴う。情動を伴う記憶は容易に再生されるため、腰痛経験者は重い物を持ち上げようとしている絵を見ただけで、不快感や腰の痛みが出る人が少なくないという。

痛みが生じたときの反応は、対峙と逃避に分かれる。恐怖のあまり逃げると不安は次第に大きくなる。痛みを避けようと安静を心がけ、注意が痛みに集中。かえって痛みを長引かせ、治りにくくする。悪循環を断つカギは、楽観的に痛みと向き合うことだ。(参考:J Behav Med;30,1,77-94,2007)
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痛みが生じたときの反応は、対峙と逃避に分かれる。恐怖のあまり逃げると不安は次第に大きくなる。痛みを避けようと安静を心がけ、注意が痛みに集中。かえって痛みを長引かせ、治りにくくする。悪循環を断つカギは、楽観的に痛みと向き合うことだ。(参考:J Behav Med;30,1,77-94,2007)

腰痛や坐骨神経痛がある患者(20~50歳)と、年齢などの条件が同じ健康な人(各46人)にMRI検査を行った結果、両者の差は神経根の圧迫のみだった。アンケートでは、腰痛群のほうがストレスが高く仕事の満足度が低かった。(データ:Spine;15,20,24,2613-2625,1995)
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腰痛や坐骨神経痛がある患者(20~50歳)と、年齢などの条件が同じ健康な人(各46人)にMRI検査を行った結果、両者の差は神経根の圧迫のみだった。アンケートでは、腰痛群のほうがストレスが高く仕事の満足度が低かった。(データ:Spine;15,20,24,2613-2625,1995)


 体の不調として悩む人が少なくない「腰痛」だが、骨や椎間板などの形態とはあまり関係のない「非特異的腰痛」が多いことが分かっている。心身のストレスが深く関わるため、心と体の両方に働きかける対策が効く。2回に分けて、最新研究データをもとに今すぐ実践できる方法をご紹介しよう。

■痛みへの不安による"安静"が慢性化招く

 突然腰が痛む"ぎっくり腰"が起きたり、痛みが長引いたりすると、腰椎椎間板ヘルニアなどが心配になるかもしれない。しかし、「画像上の変化があっても痛くない人のほうが多い」と愛知医科大学学際的痛みセンター長の牛田享宏教授は話す。

 実際、スイスで行われた研究では、痛みのない人の中にも椎間板のヘルニアがあり、ほぼ同じ条件で腰痛がある人は、ない人より、うつ、不安などを伴う割合が高かった。

 そこで今、腰痛を引き起こす因子として注目されているのが心理社会的要因、すなわち心身のストレスだ。「腰痛の多くが心理社会的な要因から引き起こされる痛みであることは古くから知られている。若い世代ほどこれが大きいのは間違いない」と牛田教授。

 実際、日本人836人を2年間追跡し、腰痛の発症要因を調べた研究では、(1)過去の腰痛歴(2)頻繁な持ち上げ動作(3)職場の対人関係──という3つのリスク因子が浮上した。

 研究を行った東京大学医学部附属病院22世紀医療センター特任准教授の松平浩医師は「介護職や看護師など腰に負担のかかる仕事はそれ自体がリスクになる。デスクワーカーは猫背などの不良姿勢をとり続ける身体的負荷に加え、仕事に追われる状況や、上司との関係などのストレスも筋緊張を強めている可能性がある」と話す。

■腰痛には2つの原因がありました
「体」 負担のかかる動作の繰り返しで疲労が蓄積
 持ち上げ動作や不良姿勢の持続などで、体に過度の負担がかかると腰痛が出やすくなる。腰痛持ちの家族がいるとなりやすいことから、遺伝的な"体質"も影響するようだ。
「心」 ストレスによる緊張と不安が痛みのもと
 対人関係ストレスなどが強いと交感神経優位の状態が続き、筋肉が緊張して腰痛が出やすくなる。ストレス状態に、痛みに対する不安が加わると、治りにくくなり、慢性化を招く。

腰痛は女性の不調の第2位。1位は肩こり、3位は手足の関節痛と、筋骨格系が上位3つを占める。医療機関に通院する割合も高血圧症に次いで腰痛が多い。ちなみに男性の不調は腰痛、肩こりの順に多い。(データ:平成25年国民生活基礎調査/厚生労働省)
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腰痛は女性の不調の第2位。1位は肩こり、3位は手足の関節痛と、筋骨格系が上位3つを占める。医療機関に通院する割合も高血圧症に次いで腰痛が多い。ちなみに男性の不調は腰痛、肩こりの順に多い。(データ:平成25年国民生活基礎調査/厚生労働省)

慢性痛は専門職などデスクワーカーに多い
18歳以上の日本人1万人あまりに筋骨格系の慢性痛の有無を調査。15.4%に慢性痛があり、腰(65%)、首・肩(各55%)、ひざ(26%)の順だった。職業では、専門職、事務・技術職などに多かった。(データ:J Or thop Sci;16,424-432,2011)
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慢性痛は専門職などデスクワーカーに多い
18歳以上の日本人1万人あまりに筋骨格系の慢性痛の有無を調査。15.4%に慢性痛があり、腰(65%)、首・肩(各55%)、ひざ(26%)の順だった。職業では、専門職、事務・技術職などに多かった。(データ:J Or thop Sci;16,424-432,2011)


高齢者が歩きやすい地域に住むと、精神機能低下が遅くなる可能性があることがわかった。

この結果は、米カンザス大学(ローレンス)臨床心理学助教授のAmber Watts氏らの研究で示され、米ワシントンD.C.で開催された米国老年学会(GSA)年次集会で発表された。

研究では、思考障害も記憶障害もない高齢者39人および軽度アルツハイマー病を有する高齢者25人を対象に、2年間で、注意力や記憶といった知的技能を評価する一連の検査を行った。研究終了時に、歩きやすい地域に住む被験者では 身体的健康(体脂肪が少なく血圧が低い)、知的技能がともに良好であった。

ただし、今回の研究は、歩きやすい地域に住むことがより良い転帰の直接の原因であることを証明するようにデザインされたものではなく、運動しやすい地域と身体的・精神的健康の改善可能性の関連を示したに過ぎない。また、学会発表された知見は一般に、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。

Watts氏は、「それでも、今回の研究結果は、高齢者、介護士、医療従事者、建築士、都市設計家に役立つことを示している可能性がある。人が歩くのは、どこかに行くためか、楽しみのためである。歩行の種類によって、近隣の特徴が異なる可能性がある。高齢者では歩行時の安全性が重要な問題であり、これには渡る時間が十分ある信号や、整備された歩道、止まって休めるベンチなどが関与する」と述べている。(HealthDay News 11月13日)

口腔(こうくう)ケアにより口の中をきれいにして歯周病を予防すると、糖尿病などの全身疾患の悪化や高齢者の誤嚥(ごえん)による肺炎の発生を防ぐことは徐々に知られるようになった。最新のデータでは、入院患者への積極的口腔ケアで在院日数や合併症を減らせることなども分かり、口腔ケアが命に関わっていることがますます明らかになってきた。日本歯科大新潟生命歯学部の田中彰教授(口腔外科)は「今や口腔ケアが全身の健康維持・増進の鍵になりつつある」と話す。

 歯科領域と全身疾患の関係が分かってきたのはごく最近の話だ。1999年の英医学誌ランセットに口腔ケアで高齢者の肺炎を減らすことができると初めて報告したのは日本の歯科医だった。

 「現在は外科や泌尿器科など、口の中とは関係なさそうな領域でも口腔ケアを実施する病院が急増している。在院日数や合併症を減らし(感染を予防)、患者の回復を早めることが分かってきたからだ」と田中教授。

 従来、歯科と医療の領域は別々で、双方が関連するデータが得られなかったが、肺炎を減らせるという指摘以降、医療者側にも口腔ケアの重要性が認識され始めた。

 「自分でも確かめるため、脳梗塞や脳卒中、がんなどの入院患者を抱える新潟市内の病院で、専門的な口腔ケアをした群としない群に分けて調べてみた。ケアをした群では、明らかに体を異物から守る白血球数が少なく、体内の炎症を示すCRP値も低く、発熱も少なかった」と説明。総タンパクやアルブミンも増加し、栄養状態改善を示したという。

 歯周病では、口内の歯周病菌などの病原菌が歯と歯茎間の溝から血液中に入り、全身を回って糖尿病や心臓病を悪化させることが分かっている。

 2012年度の診療報酬改定では、手術前後の口腔ケアが健康保険で認められ、歯科チームとの医療連携が進み、全国の病院で推進されることになったという。

 昨年11月の中央社会保険医療協議会に提出された資料によると、千葉大病院の入院患者を対象とした口腔ケア実施群と非実施群の在院日数を見た比較では、消化器外科で実施群29日に対し、非実施群は42日。在院日数を13日間も減らせた。

 同じく心臓血管外科では29日対39日、小児科84日対135日、血液内科96日対108日と在院日数で大差が出た。抗菌薬の投与期間やCRP値でも明らかな改善が示され、口腔ケアの重要性が裏付けられたという。

 病院で口腔ケアが必要とされるのは、手術前後の人、集中治療室(ICU)に入っている人、がん患者はじめ、脳梗塞、臓器移植、血液透析の患者など多岐にわたる。

 「問題は、病院で行われた口腔ケアが在宅医療や外来通院、転院、また慢性期や介護状態へ移行したときに速やかに継続、移行していけるかだ。今やライフステージの全段階で専門的、日常的口腔ケアが必要とされることが分かってきた」と指摘。

 さらに、大災害の発生時の口腔ケアも特に重要だという。阪神大震災では肺炎による震災関連死が急増し、避難住民の口腔ケアの重要性が明らかになったからだ。


口内炎 口の中を清潔に保ち休息を(2014/11/24 福島民友新聞)

口の中清潔に保ち休息を

 口内炎は痛みもあり嫌なものです。ひどいときは仕事が手に付かなくなることもあるようです。
 原因は多岐にわたりますが、明らかなものとしては細菌、ウイルス、真菌などの感染症、薬物、アレルギー、白血病、尿毒症などの関与が挙げられます。そのほか、歯のかぶせ物がきちんと合っていなかったりすると粘膜や舌への刺激によって発症することもあります。
 また、体力が落ちているときに発症することが多いため免疫機能の関与が推測されています。誘引としては全身疲労、風邪、胃腸障害、ビタミン欠乏、抗菌薬またはステロイド薬の服用、過度の喫煙なども挙げられます。
 予防方法としては口腔(こうくう)清掃を適切に行い、清潔な状態に保つこと。栄養バランスの良い食事や十分な休憩、熟睡できる睡眠環境や時間をしっかりと取ること。ストレスのない生活と喫煙を控えること。こういうことから免疫機能の維持向上を図ることが大切です。
 そのほかに歯が欠けてとがっている場所、きちんと合っていない銀歯や樹脂の詰め物などは歯科医院で適切な対応をしてもらうことが必要でしょう。また、放射線療法や化学療法を行っている患者さんはその病状や療法に応じた適切なプラークコントロールがとても重要です。口内炎は皆さんが忙しくて気付かない大事なことを教えてくれているのかもしれません。(県歯科医師会)

能勢さんたちの研究グループは、1997年、地元の松本で長寿健康社会の達成を目指して始まった産官学の共同プロジェクトの中で、学術面を担当した。「だれでも、どこでも、いつでもでき、お金もかからず、長続きしやすい運動で体力向上の効果が上がる最良の運動処方を探求し続けた」(能勢さん)。そしてたどり着いたのがインターバル速歩だった。

 当初は全身運動になるウオーキングで1日1万歩に着目したが、思った効果が得られなかった。運動生理学では、その個人の最大体力の70%以上の運動を一定頻度で、一定期間すると効果があるという基本理論がある。たんにウオーキングをするだけでは、最大体力の70%以上の運動になりにくかったのだ。

 インターバル速歩で効果をあげるポイントは、「ややきつい」と感じる高負荷の運動(その人の最大体力の70%以上)を加えること。能勢さんによれば、「自分の最も速い歩きを100としたら速歩は70くらいの速さ。3分もすれば胸がドキドキして息がちょっとはずむ程度」。心拍数を測らず、感覚的な判断で構わないという。

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 インターバル速歩を続けて運動不足を解消することで、生活習慣病の予防や改善の効果も期待できるという。5カ月間続けた人には、血圧、血糖値、肥満度を示すBMI(体格指数)などの数値改善が見られたそうだ。

 運動不足や加齢が筋肉の萎縮や全身性の慢性炎症を引き起こし、糖尿病や動脈硬化など様々な生活習慣病につながることがわかってきた。予防するためには筋肉をつければいいのだが、とりわけ筋肉が太い大腿筋を強くするのが効率的だ。

■60分以内に牛乳

 運動後60分以内に牛乳を飲むなどして乳糖(ブドウ糖)と乳たんぱく質(アミノ酸)を補給するとさらによい。筋肉の吸収率が高まるこの60分は、効果的に疲労を回復させ、筋肉の肥大に役立つゴールデンタイムだ。

 NPO法人熟年体育大学リサーチセンター(JTRC)健康推進コーディネータの森川真悠子さんはインターバル速歩について「生活の中で効果を実感でき、前からやっておけばよかったという声を聞く」という。「達成感も得やすい。まずは2週間続けてみてほしい」と能勢さん。体力がついてくると、いろいろなことに挑戦する意欲も高まってくるだろう。

◇            ◇

■うつ病などの運動療法に活用

 インターバル速歩を病気の治療に活用しようとする動きもある。デンマークのコペンハーゲン大学の研究によると、2型糖尿病患者がこの運動を取り入れたところ、インスリン抵抗性の数値が改善したという。

 能勢さんらの調査でも、インターバル速歩をすることで、うつ傾向の改善が見られた。青葉こころのクリニック(東京都豊島区)では、JTRCと連携し、うつ病の運動療法に取り入れている。院長の鈴木宏さんは「効果が見られる。一人ひとりに合わせた専門的な指導が重要」と話す。 このほか、遺伝子の働きとインターバル速歩とのつながりについても分析が進められている。


 「若いころのようにはいかない」。歳を重ねるとともに体力の低下を感じる。運動不足による体形の変化や生活習慣病も気になる。今はよくても、いずれ日常生活に支障が出るかもしれない。対策は今のうちから体力をアップしておくこと。速く・遅くを交互に繰り返して歩く「インターバル速歩」は、手軽にできる運動不足解消法の一つだ。

 年を取っても今の体力をできるだけ維持し、将来も自立した生活を送りたい。そのためには日ごろの運動が必要だ。だが忙しい人や運動習慣のない人にとっては、それが難しい。

 インターバル速歩は「ややきつい」と感じる程度に3分間サッサカ歩き、3分間ユックリ歩く。「サッサカ」ではずんだ息を「ユックリ」で調える。それを交互に繰り返していく。1日30分~1時間。30分なら「サッサカ」と「ユックリ」1セットを5セット。これを週4日する。

 運動不足を感じていた松本市の百瀬敬子さん(56歳)は、職場や自治体の広報などから情報を得て5年前から始めた。「道具などがいらず、とりかかりやすかった。歩行にメリハリがあって飽きず、続けやすい」という。

■分割しても効果

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 仕事でまとまった時間がなかなか取れないため、朝、犬の散歩をしながらと、昼休みのできるときだけに分けた。インターバル速歩は5セットを一度にまとめてしなくても効果が出る。自分の生活スタイルに合わせやすい。

 インターバル速歩の開発で中心的な役割を担った信州大学大学院(松本市)医学系研究科教授の能勢博さんは「人間の体力は20歳代がピーク。30歳以降、歳を10歳とるごとに5~10%ずつ衰える」と指摘する。

 とくに40歳を過ぎたあたりから、下降カーブが急になる。ただ、50~60歳代までは衰えがあっても、他の部位で補うなどして自分では日常生活に支障を感じない。しかし、そのままにしていると70歳代で、要介護の状態になりかねないため、体力を維持する運動の継続が必要になる。


腎疾患と睡眠時無呼吸を合併する糖尿病患者では腎疾患の進行が速いことが、米サウスカロライナ医学大学のRoberto Pisoni氏らの研究から示された。睡眠障害のスクリーニングが、腎機能が急速に低下する患者の同定に役立つ可能性があるという。


閉塞性睡眠時無呼吸は2型糖尿病に一般にみられる病態だ。閉塞性睡眠時無呼吸は睡眠中に上気道が喉の背側の軟組織で塞がれることによって生じ、呼吸の一時停止やあえぎ、いびきなどの原因となる。

2型糖尿病患者ではまた、慢性腎疾患(CKD)を合併するリスクも高いことが知られている。

Pisoni氏らは今回、睡眠時無呼吸と糖尿病、および腎疾患発症の関連について検討するため、糖尿病と腎疾患を合併する56例に睡眠時無呼吸をスクリーニングするための質問票を用いた調査を行った。

その結果、患者の61%が睡眠時無呼吸の高スコアであり、これららの高スコア患者では低スコア患者に比較して大幅に腎機能が低下していることが分かった。

Pisoni氏らは、「閉塞性睡眠時無呼吸の高スコアは、透析には至っていないCKDで糖尿病性腎症合併患者に多くみられ、腎機能の急速な低下に関連していることが分かった。この簡単なアプローチで、CKDが急速に進行するリスクの高い患者を同定することができる」としている。

同研究は糖尿病患者における睡眠時無呼吸と腎機能低下の関連を確認したが、その因果関係を証明するものではない。

この研究結果はフィラデルフィアで開催された米国腎臓学会(ASN)年次集会で報告された。学会発表の研究結果は、ピアレビューを受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。(HealthDay News 11月14日)

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 脂がのったサンマにマツタケ、サツマイモ、クリやナシ...。おいしいものが多い季節。つい食べ過ぎて、体重が気になる人もいるのでは。そんな「食欲の秋」には、医学的な裏付けもあるという。食欲は自分でコントロールできると唱える専門家も。太りにくい体をつくり、秋の味覚を楽しみたい。 (発知恵理子)

 「秋は、全身のさまざまな器官の基礎代謝が高まる。腸などは夏よりも動きが良くなり、空腹を感じやすい」。虎の門病院(東京都港区)内分泌代謝科医長の宮川めぐみさんは、こう話す。

 夏の暑さに慣れた体が秋の冷たい空気にさらされると、人は体温を保つために体内でより多くの熱を生み出そうとする。生命を維持するエネルギーである基礎代謝は上昇し、内臓などもよく動く。このため食べ物を多く必要とし、おなかもすくというわけだ。

 「もちろん、おいしい食べ物が豊富で、夏の暑さから解放されることなどもある。さまざまな要素が連鎖的に反応して食べ過ぎ、太る」と言う。

 脳内の神経伝達物質の一つで、精神の安定をもたらすセロトニンの不足も一因とされる。満腹感を与え、食欲を抑制する働きもあるからだ。セロトニンは日光を浴びることでも増えるが、秋からは日照時間が短くなる。不足すると、食べ過ぎやうつ病、不眠症を引き起こす原因になる。

 食べ過ぎてしまったら「翌日はできるだけ小食に。午前中に水を飲んで、よく排尿すること」と話すのは、漢方専門医で山内クリニック(相模原市)院長の山内浩さん。ただ「食べ過ぎたという実感がない人も多い」と指摘する。朝起きて両手を握り、前日より力が入らずに腫れぼったく感じるようなときは、食べ過ぎの兆候だという。

◆運動し、空腹感を抑制

 食欲とうまく付き合うには。「あなたは半年前に食べたものでできている」の著書がある食欲コンサルタントの村山彩さんは、「『正しい食欲』を取り戻せば、好きなものを好きなだけ食べても、健康的で太らない体を手に入れられる」と話す。

 その方法とは、健康な人であれば、無理のない範囲で「ランニングなど二十分以上、汗をかく運動」をしてから「一汁三菜などバランスの良い食事を二回続けてとること」。これを「二週間のうちに三セット繰り返す」。

 「ポイントは、運動が先。順番を間違えないでほしい。食べたくなったら走るなどして『体の大そうじ』から始めると、普段より野菜が食べたくなったり、脂っこいものが欲しいと思わなくなったりする」と村山さん。

 無理して食欲を抑えるのではなく、運動を取り入れることで自然と食べたいものが変わっていくという。「自分の体は食べたものがつくる。何をどう食べるかは、どう生きるかと同じくらい重要」と力を込めた。

<strong>3週間以上せきが続くなら要注意</strong>(Thinkstock/Getty Images)
3週間以上せきが続くなら要注意(Thinkstock/Getty Images)

 風邪をひいた後にせきだけが何週間も続くようであれば、せき喘息(ぜんそく)という病気かもしれない。夜中から早朝に激しくせき込むようなら要注意だ。さらにこの病気は、喘息の初期症状であることが分かってきた。放置していると喘息に進む可能性もある。「早めに気付いて治療を始めてください」と千里山病院呼吸器・アレルギー内科(大阪府豊中市)の安場広高医師は呼びかける。

だけでなく花粉の時期も要注意

 せきが続くことを訴えて受診する人は、全国の内科外来患者の3分の1を占めるほど多い。そのうち、3週間以上も長引くせきの約6割がせき喘息という。喘息のような「ぜーぜー」「ひゅーひゅー」という喘鳴(ぜんめい)がなく、エックス線写真でも異常が見られないため、見逃されることがあるようだ。

 安場医師は「夜中から早朝にかけてせきが出ます。眠れないほどにせき込むので昼間に眠くなり、生活の質が落ちます。風邪によるせきは2週間程度なので、それ以上続くようならこの病気の可能性が高いでしょう」と話す。

 原因は、風邪のウイルスや百日ぜき菌による気道の炎症がきっかけとなることが多い。ほかにスギやイネ科の花粉、ハウスダスト、ダニ、ペットなどのアレルギーが原因の人もいるという。風邪を引きやすいや、花粉が飛散する春は要注意だ。

一酸化窒素濃度の検査受けて

 せき喘息が疑われる場合、呼気中の一酸化窒素(NO)の濃度を測る検査が行われる。気道が炎症を起こしていればNOの数値は高くなる。喘鳴も息苦しさもなく、肺機能も低下していないというせき喘息は、これまでの検査では見つかりにくかった。

 NOの検査は最近、健康保険が使えるようになり、大学病院を中心に全国200カ所ほどで実施されている。安場医師は、NOの検査について「せき喘息を見つける唯一の客観的な診断方法です」と説明する。

 治療の選択肢の一つには、気管支の炎症を改善する吸入ステロイド薬と気管支拡張薬が一緒になった配合剤が挙げられる。この薬を飲み始めると、3~4日で夜間のせきが止まるという。

 最近、せき喘息は、喘息の初期症状であることが分かってきた。早めに治療を始めれば喘息に進むのを止めることもできる。安場医師は「3週間、夜中にせきが止まらなければ迷わず受診を」と助言している。

(編集部)

2013年11月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)

 日に日に寒くなる季節を迎え、ふだん体をあまり動かさない人はますます運動不足になりそう。だが寝たきり予防など高齢者の健康維持には「歩行」と「筋力トレーニング」の両方のセットが大切という。歩くのは少しずつの累積でも意味があるので、まずは取り組むことが重要だ。国の支援で効果などの社会実証事業も始まった。

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 「高齢者がいつまでも元気に健康を維持するには、脳と動脈と筋肉をどう若返らせるかがキーポイントだ。それに必要なのが有酸素運動と筋トレだ」と筑波大学の久野譜也教授は指摘する。有酸素運動とはウオーキングやジョギングなど比較的時間を継続してできる運動のことだ。

 日本人の高齢者が寝たきりになる原因は認知症、脳卒中、転倒・骨折の3つが大きな比率を占めている。久野教授が言及した脳は認知症にかかわる。動脈硬化などは脳卒中につながり、筋肉が衰えれば転倒して骨折する恐れも高まる。これらを改善できれば、寝たきり予防にも役立つと期待できるわけだ。

 有酸素運動は血管の健康にとって重要で、筋トレはもちろん筋力の維持につながる。脳と認知症に関しては運動でアルツハイマー病が治るという意味ではないが、一部の軽度認知症では有酸素運動と筋トレの組み合わせが予防に有効という研究報告も世界的に出てきているという。

 日ごろ何もしていない高齢者にとって手軽な有酸素運動は歩くことだろう。目標はまず1日に合計で8000歩だ。これは一度にまとめてでなくても、細切れに分けてでもよいという。

 毎日8000歩である必要もなく、1週間の合計でみても構わない。毎日規則正しく1日分を歩かないとついつい怠けがちになる人もいるかもしれないが、半面、その日にできなかったからといってあきらめるのも早計だ。日によってばらついても、1週間の合計で8000歩の7日分の5万6000歩に達すればよいそうだ。

 久野教授によると、移動に車やバイクを使う比率が高い、つまり徒歩や自転車の比率が低いと考えられる自治体では肥満の人の割合も高い傾向があるという。車を利用するより電車など公共交通機関を利用する方が歩数が多くなる傾向もある。車だとどうしてもドア・ツー・ドアになりがちだが、電車やバスならある程度の距離を歩くことになるからだ。

 高齢者は病気の予防だけでなく、生活の機能を維持することも課題になる。「生活機能はやはり移動能力が大きい。移動能力はすなわち筋力なので、歩くだけではだめだ」と久野教授は筋トレの重要性も説く。筋肉はエネルギーを消費する基礎代謝に大きく影響しているので、筋肉が減ると肥満につながる恐れもあるという。

 今年10月、筑波大やみずほ銀行などと新潟県見附市や福島県伊達市などの自治体は、運動をすると買い物などに使えるポイントを地域住民に付与する事業を始めると発表した。国の「健幸長寿社会を創造するスマートウエルネスシティ総合特区」に参加する6市で実施し、健康づくりの動機付けの制度を実証する。

 同総合特区は住民が自然に歩いて暮らすまちづくりを目指している。データ分析に基づく健康施策を推進し、医療費などの削減につなげるのも狙いだ。

 ただ、住民にはもともと運動に熱心な人たちがいる一方で、健康にあまり関心がない人たちもいる。特区の関連で取り組む今回の実証事業は、そうした無関心層にも運動をしてもらうのが目的で、付与する「健幸ポイント」が動機付けにどの程度効果があるかを調べるという。

 ポイント付与は40歳以上の市民が対象で、地域ごとに定員があり、合計では1万人以上の参加を目指す。期間は12月から来年3月までの予定だ。

 今回4カ月間の実施だが、年間にして最大2万4000ポイントを獲得できるよう仕組みを設計している。1ポイントが1円相当なので年間2万4000円相当になる。獲得したポイントは共通ポイントの「ポンタ」や商品券、寄付など利用方法を選べる。

 これまでも健康づくりのポイント制度は各地の自治体や企業の健康保険組合にあった。だが、年間でせいぜい5000円の水準で、大きな成果は出ていなかったという。今回の高めのポイントで無関心層にどの程度効果があるかは不明だが、従来の調査研究も踏まえてポイント付与の仕方も工夫しており、健康づくりへと行動変容を促す条件などを探れそうだ。

 運動不足の解消が必要と分かっていても、意欲を自分でなかなか高められない人は多いはずだ。動機となる事柄は金額に限らず人によって様々だろうが、個人レベルの動機付けにも役立つような研究の進展も今後期待される。




【11月15日 Relaxnews】眠っている間に嗅覚を刺激することで禁煙できる可能性を示した論文が、12日発行の米専門誌「神経科学ジャーナル(Journal of Neuroscience)」に掲載された。

 睡眠中の「条件付け」(ある条件に対して特定の反射や反応を引き起こすよう人や動物に学習させること)が人間の行動を変化させる可能性について研究しているイスラエル・ワイツマン科学研究所(Weizmann Institute of Science)の研究チームは、感覚刺激の中で唯一、人を眠りから目覚めさせない嗅覚を利用した。

 研究チームは禁煙を望んでいる喫煙者66人を3つのグループに分けた。第1のグループには睡眠実験室で一夜を過ごしてもらい、睡眠中に2種類の悪臭を嗅がせた。一つは腐った卵の臭い、もう一つは魚の臭いで、どちらもたばこの煙と混ぜてあった。翌朝、被験者たちには悪臭を嗅いだという記憶は残っていなかったが、実験後の1週間に吸ったたばこの本数はいつもよりも少なくなったと回答した。

 第2のグループには目覚めているときに同じ悪臭を嗅がせ、第3のグループには睡眠中に腐った卵、魚、たばこの煙の臭いを別々にかがせたが、両グループともに実験後の1週間に吸ったたばこの本数は減らなかった。

 最良の禁煙結果が出たのは、ノンレム睡眠のステージ2(4段階ある睡眠の深さのうち2番目に浅い)のときに悪臭とたばこの煙が混ざった臭いを嗅がされたグループで、実験後に喫煙量は30%減っていた。

 論文を執筆したアナト・アルジー(Anat Arzi)博士は「まだ睡眠中に禁煙する方法を発明したわけではない。それには全く別の研究が必要だ。ただし『条件付け』は睡眠中にも可能で、その条件付けによって行動が変化し得ることが示された」と説明している。

凝りほぐして「質」高める(2014/11/16 読売新聞)



 脂肪をため込みやすい冬。まずは食生活の見直しと運動と考えがちだが、ダイエットには睡眠も深く関係している。

 睡眠医療のエキスパート、秋田大学の清水徹男教授によると、「睡眠不足だと太りやすい」は最新の研究でも明らかだという。「満腹ホルモンと言われるレプチンは、睡眠不足だと少なくなる。一方で食欲ホルモンと言われるグレリンは睡眠不足の人ほど多い。その結果、空腹感と食欲が高まり、エネルギー消費が減ってしまう」。7~8時間寝ている人は肥満度が低く、6時間以下、あるいは9時間以上寝ている人には肥満が多いという。

 睡眠時間が少ないと、糖尿病、高血圧などの生活習慣病になりやすいこともわかっている。

 元ミス日本で睡眠コンサルタントの友野なおさんは「太りにくい体質作りには質の良い睡眠」と話す。「仕事で寝不足が続き、ストレス解消に毎晩ケーキやラーメンを食べていたら、2年間で10キロ以上も太った」という経験から、眠りの質を高めるワンポーズスリープヨガを考案した。全身にたまった1日の凝りをほぐし、血流を良くする。

 デスクワークや家事などで前かがみになることが多い人には、肩から腰をほぐす「コブラのポーズ」。ダイエットに最適なのは、腸を刺激して便秘も解消できる「橋のポーズ」。自律神経を整える効果もある。

 冬場は、起床後すぐ布団の中で行うグーパー(開閉)運動もいい。手足を30回グーパーするだけで脳を刺激してすっきり目覚めることができるという。


歩行時のひざ関節の痛みも両成分を摂取したグループの方が改善している。同研究所の神崎範之氏は「脚の衰えに対して軟骨成分の作用は確認していたが、今回筋肉成分をプラスすることで歩行速度や脚の筋力に対する新たな作用が得られた」と話す。

 文部科学省が発表した平成25年度の体力・運動能力調査結果によると高齢者(65~79歳)の体力が向上している。何歳になっても元気でいるために散歩やウオーキングを取り入れている人が増えている。

 神崎氏は「姿勢を正して歩けば上半身の筋肉を使うので運動機能の改善にもなる。日常生活の中でも意識して歩くことが大切」と指摘する。日常生活に、こういった成分を含むサプリメントなどを加えてみてはいかがだろう。(宇山公子)


ロコモティブシンドローム

 加齢とともに歩く速度が遅くなる、ひざが痛いなど運動器(筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板、神経)に障害が起こるロコモティブシンドローム(運動器症候群)は予備軍も含め国内で推計4700万人いるとされている。人の筋肉は加齢とともに減少し、20歳から80歳にかけて平均約40%減るという。

 サントリー健康科学研究所は、昨年の日本老年医学会学術集会で、筋肉に役立つ成分(以下筋肉成分)と軟骨に役立つ成分(以下軟骨成分)の組み合わせ食品の摂取が、脚の運動機能とひざ関節機能の健康維持に有効であると発表した。

 実験は、40歳から75歳未満の男女100人を対象に16週間行われた。2グループに分け、一方は両成分を含む食品を摂取し、もう一方のグループは筋肉成分と軟骨成分を含まない食品を摂取した。

 その結果、歩く速度、脚の筋力ともに両成分を摂取したグループに、より顕著に効果がみられた。歩く速度は100メートル相当で3.6秒速くなり、脚の筋力も、3.51キロ強くなっていた(体重60キロの場合)。

医療費の自己負担に月あたりの上限を定め、あまり大きな経済的負担にならないようにする高額療養費制度。今回は70歳以上の場合のルールを説明しましょう。

 前回に説明した70歳未満の場合と、考え方は同じですが、計算の方法がかなり違います。

 ポイントは、細かいものまで含め、すべての受診先の自己負担額を合計して限度額を超えたら、超えた分が戻ってくることです。


70歳以上の限度額の区分

 70歳以上の人の自己負担の限度額(月額)は、次のような区分になっています。

外来(個人単位) 入院・外来(世帯合算)

現役並み所得

4万4400円

 8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%

一般所得

1万2000円

 4万4400円

低所得Ⅱ

8000円

 2万4600円

低所得Ⅰ

8000円

 1万5000円



 所得のレベル分けは、自己負担割合の区分と同じ線引きで、世帯ごとに判定されます。

 ここでいう「世帯」は、住民票の世帯ではなく、公的医療保険の加入単位(家族のうち同じ医療保険の人)です。後期高齢者医療制度に加入している75歳以上の人をはじめ、一緒に暮らしている家族でも、保険が違うと、保険制度上は別の世帯になります。

 現役並み所得者(3割負担)とは、勤め人向けの社会保険や共済なら、標準報酬月額28万円以上の70歳以上の加入者本人と、その扶養家族で70歳以上の人。国民健康保険や後期高齢者医療制度なら、住民税の課税所得145万円以上の70歳以上の人が同じ世帯に1人でもいる場合です。

 ただし例外があって、70歳以上が1人だけの世帯でその年収が383万円未満か、70歳以上が複数いて年収が計520万円未満なら、申請すれば一般所得扱いになります。同じ世帯だった家族の1人が75歳以上になり、保険上の世帯が分かれて扶養関係がなくなったときも、全員の年収が計520万円未満なら、申請すると5年間に限って一般所得扱いになります。

・低所得Ⅱ(1割負担)は、世帯全員が住民税非課税の場合。

・低所得Ⅰ(1割負担)は、世帯全員が住民税非課税で、かつ全員が所得ゼロの場合です(公的年金は80万円以下なら全額控除されて所得にならない)。



 どれにもあてはまらないときは、一般所得です(1割負担。ただし2014年4月2日以降に70歳の誕生日を迎えた人は、75歳になる手前まで2割負担)。


まず外来の個人単位、次に世帯単位

 計算方法に進みましょう。70歳未満の人の高額療養費は、自己負担が月2万1000円以上になった受診先の分だけを合計して限度額と比べる方式ですが、70歳以上の人には、そういう面倒な線引きがありません。細かい金額の受診先を含め、その月に医療保険でかかった実際の自己負担を合計して、限度額と比べればよいのです。

 第1段階は、個人単位で外来の限度額を超えているかどうか。ここでいう外来には歯科外来、院外処方の薬局、在宅医療、訪問看護の自己負担を含みます。海外で受けた医療、やむえない保険外医療機関の受診、治療用装具、マッサージ・はり・きゅう・柔道整復師の施術など、療養費制度で保険から給付された費用の自己負担相当分も、入院時のものでなければ、足し合わせることができます(厚生労働省保険局保険課の見解)。

 第2段階は、世帯合算です。外来も入院も含めて、同じ保険の世帯に属する70歳以上の人すべての自己負担額を合計します。入院がなくてもかまいません。個人単位で外来の限度額が適用される時は、それで軽減される額を差し引いて、なお残る自己負担額だけを計算に入れます。そのうえで、世帯合算の限度額と比べます。


<適用を受ける手続き>
 社会保険や国保で70歳以上の人には、保険証と別に「高齢受給者証」が交付され、そこに自己負担割合の区分が書いてあります。後期高齢者医療制度なら、保険証に自己負担割合が書いてあります。現役並み所得・一般所得の場合は、それらを医療機関や薬局の窓口で示せば、高額療養費の区分もわかるので、ひとつの施設で支払う自己負担の月額は、手続きをしなくても、最初から限度額以下になります。いったん高額のお金を用意する必要がないわけです。

 しかし、低所得Ⅰ・Ⅱの場合は、あらかじめ「限度額適用認定証」を保険者(保険の運営者)からもらっておかないと、最初から限度額以下にはなりません。高齢受給者証や保険証に表示された自己負担割合だけでは、高額療養費の区分がわからないからです。

 もちろん、後から取り戻す手続きは可能です。低所得で限度額適用認定証がなかったとき、複数の受診先の合計や世帯合算で限度額を超えたときは、領収書を添えて保険者に高額療養費の申請をすれば、限度額を超えた分が、3~4か月後に戻ってきます。


<多数該当>
 70歳以上は、現役並み所得者だけに「多数該当」の制度があります。診療を受けた月を含めて最近12か月間の高額療養費制度の適用が4回目になるときは、限度額が4万4400円に下がり、負担が軽くなります。ただし、個人単位の外来のみで適用される分は、適用回数にカウントされません。


<長期高額疾病>
 慢性腎不全による人工透析、血友病による血液製剤の投与、HIV感染による抗ウイルス薬治療を受けている人は、限度額が月1万円になります。70歳以上の場合、所得は関係ありません。


70歳未満と70歳以上がいる世帯

 同じ医療保険の世帯に、70歳未満の人と70歳以上の人がいることもありますね。子どもが働いて社会保険に加入し、親が扶養家族になっているとか。夫婦の一方が会社役員で、もう一方が扶養家族とか。親子とも国保の同じ世帯とか。

 そういうときは、まず70歳以上の人について、70歳以上の高額療養費制度をあてはめます。それでも残った70歳以上の人の自己負担分と、70歳未満の人の自己負担分(1か所につき2万1000円以上の分)を加えたうえで、70歳未満の世帯合算方式の限度額を適用します。



 医療保険だけでなく、介護保険には「高額介護サービス費」、障害者総合支援法には「高額障害福祉サービス費」という制度があり、月単位の自己負担の上限を定めています。医療と介護の両方の自己負担を足して、年間の上限額を設定する「高額医療・高額介護合算療養費」という制度もあります。そのあたりを次回に説明しましょう。

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保 障を中心に取材。精神保健福祉士。2014年度から大阪府立大学大学院に在籍(社会福祉学専攻)。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

コラムへの意見・質問などは  こちら( t-yomidr2@yomiuri.com )
どの執筆者に宛てたものかをメールのタイトル等に書いてください


(2014年11月14日 読売新聞)

義歯を装着したまま就寝すると、肺炎のリスクが高まることが、日本大学歯学部の飯沼利光氏らの研究により明らかになった。

飯沼氏のグループは、平均年齢87.8歳の男女524名を3年間追跡し、口腔内の状態だけでなく医学的評価を毎年行なった。
対象者のうち義歯を装着する人は453名おり、そのうち就寝中も装着したままの186名(40.8%)では、就寝時に義歯をはずす人よりも肺炎のリスクが高いことがわかった。
義歯を装着したまま就寝する人の肺炎のリスクは約2.3倍で、認知機能障害や脳卒中既往、呼吸器疾患に伴う肺炎に匹敵するリスクの高さであるという。

義歯を使用している利用者には、ぜひ注意を促したいものだ。

牛乳を飲みすぎると健康によくないとする新たな研究報告が、英国医師会誌「BMJ」オンライン版に10月28日掲載された。これまでの研究では、牛乳に含まれるカルシウムが骨を強化するとされ、健康的な食品として牛乳が推奨されていたが、今回の研究によると牛乳に骨折予防効果はなく、死亡リスクの高さに関連するという。

この研究では、1日3杯以上の牛乳を飲む女性は、1杯未満しか飲まない女性に比べて死亡および心血管疾患のリスクがほぼ2倍であり、がんリスクが44%高いことが明らかになった。男性では、牛乳を1日3杯以上飲むと全体の健康リスクが約10%増大したという。

研究の筆頭著者であるスウェーデン、ウプサラ大学教授のKarl Michaelsson氏は、「この結果は、私自身も牛乳の摂取量を減らすほど、十分な説得力のあるものだった」と述べている。一方、付随論説の著者であるニューヨーク市立大学公衆衛生学部のMary Schooling氏は、現時点で性急に結論を下すべきではないと警告している。

今回の研究は、スウェーデンの女性6万1,000人、男性4万5,000人を対象としたものだ。女性は1980年代後半、男性は1997年に、それぞれ別の研究で食事に関するアンケートに回答していた。回答時の年齢はいずれも39歳以上だった。牛乳を飲む習慣と健康データを比較した結果、多量の牛乳の摂取が、男女ともに研究期間中の死亡リスクの上昇に関連していることがわかった。女性では、1日3杯以上牛乳を飲むと全体の骨折リスクが16%、股関節骨折リスクが60%上昇することも判明した。男性では骨折リスクへの影響はみられなかった。

Michaelsson氏らは、死亡リスクの上昇は牛乳に含まれる糖分(乳糖、ガラクトース)によって説明できる可能性があると述べている。ガラクトースはマウスの早期老化を促進することが明らかにされており、また乳糖は炎症を促進すると同氏は説明している。一方、乳糖含有量の少ない発酵乳製品(ヨーグルト、チーズなど)の摂取量が高いと、特に女性では死亡および骨折の低減がみられたと研究グループは報告している。

米国栄養・食事療法学会(AND)のIsabel Maples氏は、ガイドラインを変更する根拠としては、今回の知見はあまりに予備的なものだとしている。「米国の食事ガイドラインでは、骨の健康のみならず、心疾患、2型糖尿病、高血圧を低減するためにも、1日3サービングの乳製品の摂取を推奨している。ガイドラインは一時の流行や昔ながらの助言に基づくものではなく、科学的根拠に着目したものだ」と同氏は述べている。ヘルスデーは米国酪農協議会にコメントを求めたが、回答は得られなかった。(HealthDay News 10月29日)

■骨盤を前傾させて歩幅を広げる

 肩甲骨を使った腕振りができれば、次は「骨盤」だ。歩くときに骨盤を意識している人は、あまりいないのではないだろうか。骨盤とは背骨と大腿骨(太ももの骨)をつないでいる骨で、上半身と下半身をつなぐ役割を担う。

写真6◎ 丹田の位置
へそから4~5センチ程度下の部位。人間にとって、体の重心に当たる
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写真6◎ 丹田の位置
へそから4~5センチ程度下の部位。人間にとって、体の重心に当たる

写真5◎ 骨盤を前傾させた姿勢
足を肩幅に開き、肩の力を抜いてリラックスして立つ。次にお腹に力を入れて、お尻を引き上げるイメージで骨盤を前傾させる
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写真5◎ 骨盤を前傾させた姿勢
足を肩幅に開き、肩の力を抜いてリラックスして立つ。次にお腹に力を入れて、お尻を引き上げるイメージで骨盤を前傾させる

 「骨盤の動きが固いと上半身と下半身がうまく連動せず、動きがバラバラになります。股関節から下だけを動かして歩く人がいますが、それは骨盤がうまく使えていない証拠。歩幅が狭くなり、足腰に負担がかかってしまいます」と金さんは話す。

 骨盤をうまく使って足腰の負担を減らすには、「骨盤を前傾させる」ことがポイントだそう(写真5)。しかし、「骨盤を前傾させる」と言われても、イメージしにくい人は多いはず。そこで丹田(へそから4~5cm程度下の部位)に力を入れてみよう(写真6)。

 丹田に力を入れると、体が安定するので誰かがあなたの体を押しても倒れにくくなる。重心を安定させて、お尻を後ろに引き上げるようにイメージすれば、骨盤は自然に前傾する。その際に注意したいのは、お腹を突き出さないこと。腹筋の弱い人が無理に骨盤を前傾させようとすると、お腹が突き出て腰が反りすぎてしまう。腹筋に適度な力を入れ、腰が反りすぎないようにしよう。

写真7◎ 骨盤を前傾させながら手を振る
肩甲骨を動かしながら腕振りをすれば、連動して骨盤も動きやすくなる
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写真7◎ 骨盤を前傾させながら手を振る
肩甲骨を動かしながら腕振りをすれば、連動して骨盤も動きやすくなる

 「骨盤を前傾させられれば、無理に骨盤を動かそうとしなくても、自然に歩幅が広がり、ダイナミックに歩くことができます。骨盤の部分も脚だと思って歩くといいでしょう。また、肩甲骨を動かしながら腕振りをすれば、連動して骨盤も動きやすくなります」(写真7)

 骨盤の動きが悪い人は、骨盤周りの筋肉をほぐすようなエクササイズ(写真8)を試してみるといいと金さん。一つは「骨盤回し」だ。手を腰にあて、骨盤をグルグル回すだけの簡単な運動だが、骨盤周りの筋肉がほぐれる。ポイントは、頭の位置を固定し、腰だけを回すように意識すること。

写真8◎ 骨盤周りの筋肉をほぐすエクササイズ(1)「骨盤回し」
足を肩幅程度に開き、リラックスして立つ(1)。次に手を腰にあて、骨盤をグルグル回す(2~5)。頭の位置を固定し、腰だけを回すように意識する
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写真8◎ 骨盤周りの筋肉をほぐすエクササイズ(1)「骨盤回し」
足を肩幅程度に開き、リラックスして立つ(1)。次に手を腰にあて、骨盤をグルグル回す(2~5)。頭の位置を固定し、腰だけを回すように意識する

写真9◎ 骨盤周りの筋肉をほぐすエクササイズ(2)「骨盤足踏み」
骨盤を使って、その場で足踏みをする。膝を伸ばしたまま、骨盤を左右交互に引き上げる
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写真9◎ 骨盤周りの筋肉をほぐすエクササイズ(2)「骨盤足踏み」
骨盤を使って、その場で足踏みをする。膝を伸ばしたまま、骨盤を左右交互に引き上げる

 もう一つは「骨盤足踏み」(写真9)。骨盤を使ってその場で足踏みをするだけの運動だ。膝を伸ばしたまま、骨盤を左右交互に引き上げるようにイメージしてみよう。

 今回は、「体幹を使った腕振り」と「骨盤を前傾させる」の2点のイメージがつかめればOK。この基本姿勢を普段から意識するだけでも、あなたの歩く姿は劇的に変わるはずだ。

(文:高島三幸=ライター、撮影:村田わかな)


Profile 金哲彦(きん てつひこ)さん
プロ・ランニングコーチ
1964年生まれ。早稲田大学在籍時に箱根駅伝で4年連続で山登りコースの5区を担当し、区間賞を2度獲得した。現在は、五輪出場選手向けのランニング指導から、一般向けのウォーキング指導まで、幅広い層に向けたコーチングを行っている。駅伝やマラソンの解説者としても活躍している。

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■肩甲骨を寄せて腕を引く

 ここからは、"体幹ウオーキング"を実践するためのコツを大きく2つ紹介したい。まずは体幹を使った「腕振り」から。基本の姿勢をつくるために、肩甲骨を背骨に向けて寄せてみよう(写真2)。すると自然に胸が開き、背筋がスッと伸びる。次に、その姿勢のまま腕を後ろに引いてみる(写真3)。引いた側の肩甲骨がしっかり動いているのを感じられればOKだ。

写真2◎ 肩甲骨を背骨に向けて寄せた姿勢を取る
(左)肩甲骨を寄せていない状態
(右)肩甲骨を寄せた状態
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写真2◎ 肩甲骨を背骨に向けて寄せた姿勢を取る
(左)肩甲骨を寄せていない状態
(右)肩甲骨を寄せた状態

写真3◎ 肩甲骨を寄せた姿勢から腕を引く
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写真3◎ 肩甲骨を寄せた姿勢から腕を引く


写真4◎ 肩甲骨を寄せるエクササイズ
(1)肩の力を抜いてリラックスしながら立ち、バンザイをするように左右の腕を伸ばす
(2)左右の肘を曲げ、胸を開きながら腕を引き下ろす
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写真4◎ 肩甲骨を寄せるエクササイズ
(1)肩の力を抜いてリラックスしながら立ち、バンザイをするように左右の腕を伸ばす
(2)左右の肘を曲げ、胸を開きながら腕を引き下ろす

 その時、肩が上がったり、肩甲骨の動きが固かったりする人は、肩に力が入っている。あるいは、肩甲骨の可動域が狭い可能性がある。腕振りを始める前に、「肩甲骨を寄せるエクササイズ」(写真4)を試してみるのがお薦めだ。

 そのエクササイズとは、顔を真っすぐ前に向けて立ち、肩の力を抜いてリラックスしながら立つ。次にバンザイをするように左右の腕を伸ばして上げてみよう。この時、腕が顔より前方にならないように意識してほしい。次に左右の肘を曲げ、胸を開きながら腕を引き下ろす。肩甲骨を背骨に寄せるように意識するのがポイントだという。


 今回は、かっこよく見える歩き方、すなわち"体幹を使ったウオーキング"を紹介したい。そもそも、かっこよく見える理想のウオーキングとはどのようなものだろうか。

 金さんによると、3つのポイントがあるという(写真1)。1つ目は「腕の振り方」だ。ウオーキングの時に、腕を大きく前に振る人がいるが、「体幹ウオーキング」では、腕は後ろに引くことが鉄則。その際、腕を動かすだけでなく、肩甲骨をしっかり動かすように意識することが大事だという。写真1―(3)参照。

写真1◎ 体幹を使った理想の歩き方
基本は、腕を後ろに引く際に肩甲骨をしっかり動かし(3)、片足が着地すると同時に、その足側の骨盤が前方に出るように意識しながら、体重を移動すること(4)。常に体の中心軸が少し前傾するよう心掛ける
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写真1◎ 体幹を使った理想の歩き方
基本は、腕を後ろに引く際に肩甲骨をしっかり動かし(3)、片足が着地すると同時に、その足側の骨盤が前方に出るように意識しながら、体重を移動すること(4)。常に体の中心軸が少し前傾するよう心掛ける

 2つ目は「体重移動」だ。片足が着地すると同時に、その片足の側の骨盤が素早く前方に出るように意識しよう。写真1―(3)→(4)参照。スムーズに体重が移動すれば、ムダのない歩き方になる。

 3つ目は「体の軸」だ。頭のてっぺんから足の裏まで1本の軸が通っているようにイメージしてみよう。その軸をほんの少しだけ前傾になるよう意識する。写真1―(5)参照。すると、着地時の衝撃を体幹で受け止めやすく、体がスムーズに前方へ移動できる。効率的に体重移動できれば、余計な部位に力が入らないため、長時間歩いても疲れにくくなるのだ。

 「これらの3つのポイントをふまえた歩き方と、自分の現状の歩き方を比較してみましょう。その違いを修正していくのが、『体幹ウオーキング』をマスターする近道です」と金さんはアドバイスする。


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耳元に響く「スーハー」の音で目覚めた。そうだ、CPAP(シーパップ)(持続陽圧呼吸)装置で睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療を始めたのだ。鼻のマスクを外すとシューと強い空気が流れ出る。慌てて本体の停止ボタンを押した。

 一息ついてみると、何だか頭が軽い。酸素が行き渡って脳が活性化されているといった感じ。夜中のトイレも一回だけだった。以前は、トイレに起きたり寝たりで、何時間布団に潜ってもだるさが残っていたが、これはすごい。

 ただ、問題も。旅行や出張でこの装置を持ち歩くのは難儀だ。重さ二キロ余のバッグ一個が余計になる。そこで、主治医から次善の策と聞いたマウスピース(口腔(こうくう)内装具)治療を試すことにした。口にはめた装具で下あごを前方に引き出して固定し、気道を広げるというもの。

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 紹介状をもらい、通院先と同フロアの歯科オノザワを訪ねると、その場で型取りに。小野沢彰院長(43)からは、思いきり下あごを前に突き出すよう言われた。おサルさんの物まねをするときのように。「あなたの場合、下あごの前後可動幅は十一ミリなので、八ミリ前に突き出した状態で固定するようにします」

 二週間後に装具は出来上がった。半透明の樹脂製で、エイリアンの「くちばし」の先のよう。上下の歯を溝に入れてかみしめると、がっちり吸い付く。下あごはサル顔で固定なので疲れる。口を開けられず、舌も動かせず、唾液がたまる。やはり違和感は強いが、我慢して寝た。

 一カ月後、この状態で簡易検査し効果を見た。結果は一時間当たりの無呼吸低呼吸が〇・七回と「健康人と同じ」(主治医)レベルに。CPAPほど目覚めの爽快感はないが、軽くて扱いも簡単だ。今後は時と場合に応じ使い分けることにする。根気は必要だが、いずれ慣れるだろう。

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 SASは、放置すれば健康に深刻な影響を与える。車の運転で事故を起こす、仕事の能率が下がるなどで他者に大きな迷惑をかけることもあり得る。しかし、複雑な治療、痛い治療、頻繁な通院はいらない。装置、装具の使用で劇的に良くなる場合が多く、治療費も高額ではない。

 「SASは重症といっても気にすることはない。心配な方は迷うことなく医師に相談を」。SAS研究の第一人者、成井(なるい)浩司・虎の門病院睡眠センター長は訴える。現在は、一般の開業医でも簡易検査を受け付けるところが多い。私もいつからSASだったのかは分からないが、今、診断されたことに感謝している。健康改善の余地はいくらでもある。成井医師の言葉を広く伝えたい。 (白鳥龍也)

<SASの治療費> CPAP治療には、定期的な通院を条件に健康保険が適用される。装置のレンタル代も含めた自己負担は、3割の場合で月5000円ほど。マウスピースも一般の上下一体型は保険対象。1万5000円前後(3割負担)で作製できる。

 

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 肥満でもない私(56)がなぜ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)になったのだろう。

 「あなたの場合は、あごが小さいことが原因でしょう」。主治医の中沢英樹・中沢プレスセンタークリニック院長の診断だ。あごが小さいのは喉までの奥行きがなく、もともと気道も狭いということ。加齢で筋肉が緩んでくるのに従い、発症しやすくなるという。

 そしてSASを放置しておくことは、確実に寿命を縮める。就寝中は一時間に十七分しかまともに呼吸していなかった私。そんな状態で健康を損なわないはずはない。少ない酸素を全身に巡らそうとすれば、心臓や血管に大きな負担がかかる。体へのストレスはホルモンや自律神経のバランスも崩す。長年の悩みである夜間頻尿も、こうしたことから起きていたようだ。

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 SAS治療が専門の虎の門病院(東京都港区)睡眠センターの成井(なるい)浩司センター長(58)によると、SASは高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などを招く元凶。患者は健康な人に比べ二~三倍もそれらの病気になりやすい。米国ではSASの高齢者の死亡率は二・七倍との統計もある。私もあと十年足らずで六十五歳以上の仲間入り。以前から血圧も高めだった。「早死に」のリスク十分だった。

 診断された当日、クリニックから渡されたのはCPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸)装置だ。高さと幅が約十センチ、奥行き約二十センチの本体に、長さ一・八メートルのホースがつながれ、鼻に当てるマスクとヘッドギアがつく。本体の背面から取り入れた空気に圧力をかけ、マスクから送り出す仕組み。これを装着して眠れば、空気圧で気道を押し広げてくれるという。

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 肥満だったら痩せればSASは改善するかもしれない。しかし、顔の骨格と加齢のせいだとしたら根治はない。中沢院長から「目が悪くなった人が眼鏡を掛けるのと同じ。治療器具を使い続けるしかありません」と告げられた。

 別室でスタッフに装置の使い方を教えてもらう。試着姿はものものしく、どこかの軍の毒ガス部隊かカルト教団の信者のよう。そのまま横になれば、瀕死(ひんし)の重病患者に見える。使い勝手だが、マスクから強い風が吹き出て、息を吸うのはいいがうまく吐けない。口を開けたら口から空気が漏れ出す。今度は息が吸えず、水面で苦しがる金魚のように口をパクパクさせていた。「口を閉じて自然に呼吸を」と言われ、やり直すと、息を吐く際には自然に空気の勢いが弱まることが分かり、ようやくこつがつかめた。

 しかし、これを着けて眠れるのだろうか。その夜準備を整え、緊張しつつ布団に。目を閉じる。呼吸は慣れたものの、「スーハー」という、ダース・ベイダーみたいな呼吸音が耳元に響いて気になる。頭と顔に密着するベルトやマスクも暑苦しい。「たいへんなことになったな...」。沈み込む気分とともに眠りに落ちた。 (白鳥龍也)

 <SASの患者数> 顔が長くて平らな日本人は、顔の骨格上も欧米人と比べてSASになりやすい。近年はさらに、食生活の変化などで肥満者が増加傾向にあるため、国内では現在、約500万人にSASの疑いがあるとされる。「21世紀の国民病」とも呼ばれるが、無自覚の人が多く、実際に診断を受け、CPAPの治療をしているのは約30万人という。患者はホルモンの関係で特に中高年男性に多く、同年代の女性の3倍に上るとの報告もある。

 

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「結論から言って、重症です」「エッ」-。主治医の言葉に絶句した。56年、健康に生きてきたつもりだった。私が重い睡眠時無呼吸症候群(SAS)だなんて。自覚症状はほとんどない。しかし、放っておけば命を縮める恐れがあるという。診断から治療までの体験を報告する。 (白鳥龍也)

 無呼吸低呼吸回数51回/時▽最長111秒▽平均51秒▽血中酸素飽和度最低値71%-。

 「無呼吸検査結果」と書かれた用紙に衝撃の数字が並ぶ。一時間に呼吸が止まるか浅くなる(低呼吸)状態が五十一回現れ、一回平均五十一秒、最長で二分近く、ほとんど息をしていない。裏を返せば、まともに息をしている時間は、一時間に十七分ほど。血中酸素飽和度という動脈血の酸素レベルは、正常とされる95%以上を24ポイントも下回る重度の酸欠状態だった。結果判定では、青・黄・赤に色分けされた棒グラフの赤ゾーンから飛び出した所に★印が打たれ「重症」とある。

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 私がSASを疑うようになったのは「いびきが大きく、呼吸が止まっていることがある」という家族の指摘が最初なのだが、昼間の眠気については気になる点はなく、深刻さを感じなかった。体形は身長一七三センチ、体重六六キロとほぼ標準。SASは肥満の人がなるもの、との認識だった。

 しかし、別の面で「もしや」と思う症状があった。夜間頻尿だ。ここ十年ほど睡眠中のトイレが近い。一晩に三、四回は起きる。酒量が多くなったせいとも思ったが、あまりにつらいので自宅近くの泌尿器科を受診した。前立腺やぼうこうの検査では異常なし。漢方薬なども処方されたが効かない。ある日、書店で手に取った尿トラブルに関する本に「SASが原因かも」との記述を見つけ、思い切ってSASの診療をしている職場近くの中沢プレスセンタークリニック(東京都千代田区)を訪れた。

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 診察前には昼間、どんなときにウトウトしたり、眠り込んだりしてしまうことがあるかの問診票を渡された。「座って読書しているとき」「午後横になって休息しているとき」など八項目に〇~三点をつける。十一点以上は要注意ということだが、七点だった。

 診察では、中沢英樹院長(69)からSASの仕組みについて説明を受け、簡易検査機器を渡された。約五センチ四方の本体をベルトで腹に装着し、鼻の息遣いを調べるチューブと、指先にかぶせて血中酸素飽和度を測るセンサーをつなげて眠る。機器では、いびきの音や体位も測定できるとのこと。これを三晩着けて出た結果が、冒頭の数字だ。

 当初は「一般に一時間当たりの無呼吸低呼吸回数が五回以上、四十回未満の場合、検査入院をしてもらい、さらに脳波などの測定で睡眠状態を詳しく調べる必要がある」と告げられていたが、簡易検査段階で五十回を突破したため「あなたの場合は"一発合格"だ」と、思わぬ診断を受けてしまった。このままだと、どうなってしまうのか。今後、どんな治療が待っているのか-。

<SAS(Sleep Apnea Syndrome)> 大半は睡眠中に喉周囲の筋肉が緩むことで、喉の壁や舌の付け根が奥に引き込まれて気道がふさがる、または狭くなることで起きる。加齢による筋力の低下、肥満で喉周囲に脂肪がつく、あごが小さく後退している、などの原因で重くなる。息が止まると無意識のうちに脳から非常信号が出て呼吸は再開するが、一晩に何十回も繰り返すと睡眠が分断され、昼間急激な眠気を覚えるといった症状が出る。2003年、JR山陽新幹線で起きたSASの運転士による居眠り運転が社会に衝撃を与えた。

「虫歯になったから歯医者に行く」というのが日本では一般的なことから、歯を失ういちばんの原因は虫歯だと思いがち。だが、現実は違うと語るのは、紀尾井町プラザクリニック院長の根深研一さん。

「歯を抜くいちばんの原因は歯周病で、その割合は約42%。それに虫歯が約32%と続きます。厚生労働省によると、40才で歯周病を患っている人は、85%にものぼります」(根深さん)

 まずは、想像以上に怖い歯周病について勉強しよう。

「虫歯が1本もないから、私は歯が丈夫」と過信する人がいるが、実は歯周病で一気に歯を失うケースも少なくない。

「口の中には300~700種類の常在菌が存在するのですが、虫歯菌と歯周病菌はまったく違う種類の菌。虫歯菌は、歯の見えている部分につきますが、歯周病菌は嫌気性菌といって、酸素が届かないところを好みます。歯と歯茎の隙間(歯周ポケット)や舌の上で繁殖します」(根深さん)

 では、歯周病はどうして起こるのか。富澤歯科医院院長で予防歯科をいち早く導入した富澤直基さんに聞いた。

「ばい菌の集合体であるバイオフィルムが歯肉の炎症を引き起こし、歯周ポケットを形成します。炎症が進むと、歯を支える歯槽骨が減って歯を支えられなくなり、ついには歯が抜けてしまうのです」

 また、歯周病の進行は"症状が出ては停滞する"を繰り返しながら進行するため、知らない間に進んでいることが多く、要注意だ。

「歯周病は歯の病気だけではなく、全身疾患と捉えるべき」と警鐘を鳴らすのは、ヨコハマデンタルクリニック院長の金子泰雄さん。

「歯周病菌が動脈硬化を起こしている血管に入り込むと、血管を狭める作用が増すため、心筋梗塞を引き起こします。そのほか妊娠中の場合は、低体重児や早産の要因になるともいわれています」(金子さん)

 実は今、歯周病は糖尿病の第6の合併症といわれている。歯周病がひどくなると、インスリンの血糖値をコントロールする働きを妨げて、糖尿病を悪化させるのだ。

「反対に、歯周病を治療すると、糖尿病が改善されるという報告も。つまり、相互関係があることがわかりました。このほか、歯周病菌は、さまざまな全身疾患のリスクを高めることもわかっています」

乳歯の虫歯が原因で変質した永久歯を"ターナーの歯"というそうですが、虫歯の菌やうみの放置は後に控えた永久歯にも影響を与えかねないのです。うかつに放置はできませんよね?


では、ターナーの歯にならないためには、どうすればいいのでしょうか? 

(1)歯科検診を定期的に行う

(2)正しいオーラルケアを欠かさない

(3)虫歯があれば早目に治療する

とくに、口の中の一番奥に生えてくる歯と、その手前の奥歯の間は最も虫歯になりやすいといいます。


以上、乳歯の虫歯を放置すると永久歯にまで悪影響が出るという話をしましたが、いかがでしたでしょうか? 歯科検診、オーラルケア、早目の治療がターナーの歯を防ぐポイントです。

歯の根っこにあるうみの袋は、治療をすれば奇麗になるそうです。ひどい虫歯があってもあきらめず、近くの信頼できる歯科クリニックに足を運んでみてください。

お子さんの歯の健康は上手に管理できていますか? 口の中に虫歯を発見しても、どうせ永久歯が生えてくるからと治療を後回しにしてしまう親御さんも、もしかしたらいるかもしれませんね。

ただ、子どもの虫歯の放置は、永久歯にまで悪影響を与える恐れがあるとご存じでしょうか? 

そこで今回は、富山県の小矢部市でクリニックを開業する歯科医、渡辺智良先生の協力の下、子どもの虫歯の放置はどのようなリスクがあるのか、まとめてみたいと思います。

■乳歯の虫歯の放置は永久歯の成長を妨げる

渡辺先生によると、乳歯は歯の表面を覆うエナメル質が永久歯と比べて少ないといいます。そのため虫歯の進行が早く簡単に根っこまで広がってしまい、歯の土台の部分にうみの袋ができやすいそうなのです。

うみを放置すると、乳歯の下で待機する生育中の永久歯にうみが触れます。その状態が続くと、永久歯は十分に成長できなくなり、歯の頭の部分が変形して、茶褐色に汚れたもろい状態になってしまうそうなのです。


入れ歯を装着したまま寝る高齢者では肺炎リスクが上昇することが、日本大学歯学部の飯沼利光氏らの研究でわかった。

「Journal of Dental Research」オンライン版に10月7日掲載された今回の研究で、飯沼氏らは、平均年齢約88歳の男女524人を3年間追跡調査した。その期間中、肺炎による入院が28件、死亡が20例みられた。

入れ歯を装着している453人のうち、睡眠時に装着している人は41%だった。装着したままの人では夜間に取り外す人に比べ、肺炎を発症する可能性が約2倍になった。また、睡眠時に入れ歯を装着している高齢者は、舌苔やデンチャープラーク、歯肉炎などの問題が起こる可能性も高かった。

飯沼氏らは、「夜間の入れ歯装着に関連する肺炎リスクは、精神障害、脳卒中の既往、呼吸器疾患に伴う肺炎リスクの高さに匹敵する」と述べている。

同誌の付随論説では、「今回の研究からわかったことは、つまり、睡眠時に入れ歯を装着しないよう高齢者に伝えるべきということだ」としている。

歯科とたばこ(2014/11/3 福島民友新聞)

歯科とたばこ

 本気で禁煙考えましょう

 「歯科とたばこ」。何の関係があるの? と思うかもしれませんが、関係があるんです。
 あらためていうまでもなく、たばこが体に良くないことは皆さん知ってはいるはずですが、自分は大丈夫だという根拠のない自信を持っていたり、やめたくてもやめられないという方がほとんどだろうと思います。
 たばこを吸って一番影響を受けるのが血管です。
 たばこのニコチンが血管を収縮させます。さらに血液をどろどろにし、末梢(まっしょう)へ新鮮な酸素と栄養素を十分に届けられなくなります。
 口の中の組織に酸素と栄養を運ぶ血液が流れるのは、ほとんどが細かい末梢血管です。たばこを吸うとただでさえ細い血管がさらに細くなって、どろどろした血液をうまく通してくれなくなり、口の中が栄養不足になってしまいます。そうなってしまうと歯の周りの組織の疾患である歯周病は治りにくくなってしまうのです。
 永久歯の抜歯原因は1位が歯周病、次がむし歯と続きますが、日本人男性の喫煙者を対象にした調査によれば、喫煙者は非喫煙者と比べて早く、そしてより多くの歯を失う結果となっています。
 たばこを吸っている本人のみならず、周りの受動喫煙でもむし歯・歯周炎のリスクは高まるともいわれています。禁煙、本気で考えましょう。

昔の人の方が、歯茎が健康だった?(2014/11/6 QLife Pro)

昔の人の方が、歯茎が健康だった?

西暦200年から400年頃、現在のイギリスにあたるブリタニアに住んでいたローマ人には歯周病が少なかった、という気になる研究結果が発表されました。


画像はwikiメディアより引用

これは、当時のものとされる303の頭蓋骨を分析して明らかになったそうです。

頭蓋骨には、何らかの炎症を抱えていた痕跡が現れているものもありました。特に虫歯は、現代人よりも高い割合でみられ、約半数の人が抱えていたとされています。一方で、歯周病にかかっている人たちの割合が低いことも分かりました。

秘密は生活習慣にあった?

現代人の15%以上がかかっているとされる歯周病ですが、この研究では、当時のローマ人の罹患率はわずか5%程度とされています。原因として考えられるのが、この民族の生活習慣。たばこを吸う習慣がなかったこと、そして、糖尿病にかかっている人が少なかったことが、影響しているとみられています。現代でも、たばこと糖尿病は、歯周病のハイリスク要因として知られています。

また、当時の寿命は40代とされており、小さい子どものうちに命を落とす人も多くいたとされています。40代まで生き延びた人の死因の大半が、何らかの感染症によるものであったと解釈されています。医療の面では、過酷な環境に置かれながらも、歯周病の罹患率にこれほどの違いが見られることは驚くべきことです。

生活習慣病や慢性病にかかるのを防ぐために、禁煙を行ったり、健康的な食生活を心がけたりすることの重要性が再認識される報告ですね。

アフタ性口内炎とは2?-2(2014/11/02 楽天WOMAN)

(1)口腔内を清潔にする

歯磨きやうがいを怠らず常に清潔に保つことが最も重要です。口腔内には、あらゆる細菌が棲んでいます。その繁殖を抑えることで、発症リスクを抑えます。

(2)定期的に殺菌をする

歯磨きやうがいで殺菌はできません。そこで洗口液(マウスウォッシュ)などを使って、口腔内を殺菌するのも良いでしょう。

ただし、洗口液はプロピレングリコールやラウリル硫酸ナトリウムなどの毒性のある薬品が含まれている為、逆に粘膜を傷つけてしまう場合もあります。

(3)口腔内を傷つけない

口の中を傷つけてしまうと、発症リスクが大幅に増大します。

(4)粘膜を弱らせない

口の粘膜は、ストレスや食事の刺激にとても繊細です。

正しい生活習慣を心がけ、ストレスを溜めないことも、予防に繋がります。

自然治癒するまでの期間

1週間から2週間程度で完治すると言われていますが、抵抗力や免疫力、刺激物の摂取などにより、2週間を過ぎることもあります。

また口内炎は、内臓疾患のシグナルになっていることも多いので、1週間以上続く口内炎は受診をオススメします。

アフタ性口内炎とは2?-1(2014/11/02 楽天WOMAN)

強い痛みを伴う口内炎で苦しむ多くがアフタ性口内炎と言われるほど、定番の口内炎です。

ではこの「アフタ性」とは一体何を表しているのでしょう。

アフタとは

皮膚粘膜表面が灰色から黄白色に変色した膜に覆われた5mmから6mm以下の大きさの潰瘍をアフタと呼び、それ以上に大きく深い症状であれば潰瘍と呼びます。潰瘍は完治しても痕が残りやすく、アフタは残らないのが特徴です。

アフタ性口内炎のできる場所

口腔内のあらゆる場所に発症します。

歯茎や頬の内側、舌や唇、上あごや、稀に扁桃腺付近にも発症します。

アフタ性口内炎の主な原因

細菌による炎症が主な原因です。

口腔内を噛んだり、痛めたりして、傷ができると、その患部に細菌が入り込み発症します。

また、口腔内の粘膜が弱っていたり、栄養不足やストレスによって免疫力が低下したりして発症します。

治療方法及び予防方法

口内炎は一度なると完治するまで痛みが続き、憂鬱になりがちです。

予防方法を知ることで、口内炎の発症リスクを抑えることができます。


口臭が気になるなら、深刻な病気の兆候である可能性がある、と専門家は警告しています。

イギリス、ロンドンにあるエレヴェン(Elleven)歯科の臨床ディレクターである、サミアー・パテル博士はこう述べています。

「歯茎の状態から歯の色にいたるまで、口は全体的な健康状態について知ることができます。口臭がきついと思ったら肝臓の病の兆候、口内炎は癌の兆候かもしれないのです。」
「歯と舌を磨き、定期的にフロスや口臭清涼剤を使ってみても、口臭が改善されない場合、身体の他の部分の疾患を示している可能性があります。これは、胃の疾患、消化不良、ときおり肝疾患が含まれていたりします。多くの場合、初期段階では自覚がありませんが、アルコールをたくさん飲んでいる人に発生する確率が高くなります。

黄色い歯を治療する最良の方法は、ホワイトニングの専門家の助言を求めればいいことですが、口臭や口内炎に関しては、歯科医の他に内科も受診されることをお勧めします。」
自分の口臭や口の中を今一度チェックしてみてはいかがでしょう?


口臭対策のグッズや予防についての情報があふれています。「『緑茶は口臭予防になるのですよね』と聞かれることがありますが、間違いです」と話すのは、歯学博士で歯科・口腔衛生・口臭外来の江上歯科(大阪市北区)の江上一郎院長。

口臭の正しいケア法について、江上医師にお尋ねしました。

■朝食を抜くのはNG

口臭の原因について、江上医師はこう説明します。
「口臭の源の一つは、口の中に常在している細菌です。だ液の分泌量が減っているときや口の中に食べカスがあるときは、口の中が酸性に傾きます。すると、細菌の活動がより活発になり、不快臭が発生しやすくなります。

これらの増殖やにおいを防いでいるのは、だ液です。

赤ちゃんのよだれをイメージしてください。だ液がサラサラで透明でふんだんに分泌されているときは、においは気にならないでしょう。においが発生するのは、分泌量が減って、白く濁って粘り気のあるときです」

口臭抑制の秘けつは、だ液にあるのだとか。はっとする話です。

そこで、だ液の力を念頭に置いた上で、「ちまたで耳にする口臭対策のノウハウは正しいのか」を、江上医師に伺いました。

Q1.緑茶やコーヒーを飲むのは有効!?

江上医師 × 緑茶に含まれる葉緑素には消臭作用、カテキンには殺菌作用があり、一時的には口臭を消すことができます。また、香りでごまかせそうに思いますが、口の中が渇いてだ液が不足しているときに飲むと、口臭予防としては逆効果になります。

コーヒーに含まれるカフェインと同様に、利尿作用があるのでだ液の分泌を抑えてしまうからです。

Q2.水を飲むのは有効!?

江上医師 ○ 緑茶やコーヒーと違って、水には水分補給の役割があり、口の中を潤わせます。口臭の元の一つ、口の中のベタつきを洗い流すイメージで飲んでください。口の中の乾燥を防ぎ、だ液の分泌を促します。

Q3.朝食を抜くのは有効!?

江上医師 × 空腹感やそのストレスから、口臭が発生する原因になります。食事をすると、消化や飲み込む動作を助けようとだ液が盛んに分泌されます。安定してだ液を分泌させるには、自律神経が関係します。リラックスモードで働く副交感神経を優位にするために、1日3食の規則正しい食生活を心がけましょう。

Q4.昆布をかむのは有効!?

江上医師 ○ 口の中は、異物を感じたらだ液が出るようになっています。

おやつ昆布(おしゃぶり昆布)をかむこともお勧めです。だ液の分泌を促すとともに、保湿成分の高いアルギン酸が豊富に含まれるので口腔内の乾燥も防ぐことができます。

Q5.舌の運動は口臭ケアに有効!?

江上医師 ○ 自分の口臭を不快に感じたら、口の中で舌先をぐるぐると上下左右に動かしましょう。だ液腺が刺激されてだ液がたまります。それを飲み込みむと、においは弱まります。

その後、口を半開きにして数回、呼吸をしましょう。口の中と外の空気を入れ替えると、においがおさまるでしょう。

江上医師は、次のアドバイスを加えます。
「口臭を予防するためのポイントは、だ液です。だ液が分泌される方法をとれば適切なケアができると覚えておきましょう」

ネバネバしただ液が口の中にたまったときは、口臭が発生するサインとのことです。サラサラのだ液が出るように意識しながら、水を飲む、舌の運動を行って呼吸を繰り返すなどを試してみましょう。

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