1時間ごとに2分、立ちあがって歩くことで、座りっぱなしでいることによる健康への悪影響を打ち消せることが、「Clinical Journal of the American Society of Nephrology」オンライン版に4月30日掲載された研究結果から示された。
毎日長時間座り続けていると心疾患や糖尿病、若年死亡などの多くの健康リスクが高まることは、過去の複数の研究で示されている。現在の運動に関する推奨では、成人は週に少なくとも2.5時間の中等度の運動をするようにとなっているが、米国人の80%はこの推奨を達成できていない。
しかし米ユタ大学医学部のTom Greene氏らによる今回の検討では、たとえ短時間の軽い運動でも健康への便益となるかことが示された。「運動はすばらしいことだが、現実的に激しい運動を相当量行うには限界がある。われわれの検討からは、たとえわずかな変化であっても大きな影響を与えうることが示唆された」と同氏。
研究では、全米健康栄養調査(NHANES)に参加した3,200人超のデータを活用。運動強度を計測する機器を装着してもらったデータを収集し、歩行などの軽い運動と、立っているなどの低強度の運動のいずれかをより長く行った場合の便益を比較した。3年間の追跡期間中に137人の死亡が確認された。
分析の結果、ただ立っているだけの運動では、長時間座り過ぎていることで生じる健康リスクを打ち消すことはできなかったが、歩行や掃除、ガーデニングなどの軽い運動を短時間行うと、1日の半分以上を座って過ごしている人の寿命が延長されることが分かった。1時間あたり2分間、座っている時間を軽い運動に置き換えると、若年死亡リスクが33%低下したという。
同論文筆頭執筆者で同大医学部のSrinivasan Beddhu氏は、同大ニュースリリースで、「中等度から強度の運動に国家的な焦点が当てられている現状を考えると、軽度の運動が死亡率低下に関連するという今回の結果は興味深い」と述べている。
同氏によると、歩行による便益は日数の経過とともに積み増しになり、1週間に推奨される運動量に近づくという。
「この結果からは、週2.5時間の運動といった通常の身体活動に加えて、1時間あたり2分間の歩行を行うことが勧められる」と同氏。中等度の運動は心臓、筋肉、骨を強くし、低強度や軽度の運動では得られない健康上の便益がもたらされるとしている。