片足で20秒以上バランスを取ることができない場合、脳卒中のリスクがあることが日本の研究グループにより示され、「Stroke」オンライン版に1218日掲載された。

片足で立つのが難しいということは、既に脳内で軽度の脳卒中や出血が生じている可能性があり、さらに深刻な脳卒中を起こすリスクが高いという。「片足で立つときに不安定さがみられたり、歩行に問題があったりする場合は、脳の異常や精神機能低下のサインである可能性があるため注意が必要だ」と、研究の筆頭著者である京都大学大学院医学研究科、ゲノム医学センターの田原康玄准教授は述べている。

脳卒中は凝血や出血により脳の一部への血流が妨げられる病態で、身体障害や死亡の主な原因となっている。今回の研究では、1,400人弱の男女(平均67歳)に1分間片足でバランスを取ってもらい、さらに「無症候性脳卒中(silent stroke)」や微小出血を評価するMRIスキャンを実施した。その結果、片足で20秒以上立てない場合、脳内の微小な脳卒中や出血との関連がみられたほか、思考力や記憶力の低下との関連も認められた。

米ノースショア・LIJヘルスシステム(ニューヨーク州)のRichard Libman氏は、「脳の深部にある微小血管の狭窄や閉塞から、小さな脳卒中や微量の出血が起こることがある。このような脳卒中は精神機能低下や認知症の主な原因となり、歩行やバランスの困難、転倒との関連も認められている」と説明し、「今回の研究の著者らは、脳の'小血管疾患'を反映する簡単なバランス検査を考案した。この検査は高い費用も技術も必要とせず、重度の脳卒中や脳損傷のリスクが特に高い人をスクリーニングできる」と付け加えている。

田原氏によると、2カ所以上の軽度脳卒中のある人では約3人に1人、1カ所の脳卒中のある人では16%にバランス障害がみられたという。また、2カ所以上の微小出血のある人では30%、1カ所の出血のある人では15%にバランス障害がみられた。脳血管に障害の認められた人の傾向として、高齢で、血圧が高く、頸動脈が肥厚していた。また、長時間片足で立つことができない人には、記憶力・思考力検査のスコアが著しく低い傾向も認められた。(HealthDay News 128日)

歯周病も虫歯と同様に、口腔(こうくう)内に約400種類いる細菌の一部が原因となり起きる病気です。歯茎の肉が腫れたり、歯が揺らいだりします。歯の回りの歯周ポケットが4ミリメートル以上の深さになると歯周病と診断されます。国内では、40代以降の半分以上が歯周病の患者といわれています。

 歯周病の原因菌は、酸素を嫌う「グラム陰性桿菌(かんきん)」が代表格です。こうした細菌が出す毒素の作用で歯茎の肉が炎症を起こし、歯肉炎になります。食べ物のかすが原因となって、細菌の塊である歯垢(しこう)がたまると、歯肉炎になるリスクが高まります。

 歯肉炎が悪化すると、歯周炎と呼ぶ段階に進みます。歯の根元部分を覆うセメント質や歯を支える歯槽骨が壊れ、歯がぐらぐらと揺らいでしまいます。症状が進むと歯の回りの歯周ポケットが深くなり、そこで原因菌が繁殖して炎症が激しくなり、歯周炎も悪化します。

 歯周病を取り扱う日本歯周病学会や日本臨床歯周病学会、日本歯科保存学会は専門医や認定医の制度を設けています。歯周病が気になる人は歯科医院を探す際に、参考にするとよいでしょう。日本歯周病学会では歯周病専門の歯科衛生士の認定も進めており、歯周病の専門家の育成に力を入れています。


 虫歯を防ぐためには、間食を含む毎食後に歯を磨くのが理想です。水で口をゆすいだり、ようじで食べかすを取り除いたりするだけでは歯についた歯垢(しこう)は取れず、虫歯を予防できません。

 特に睡眠時には唾液の分泌量が減ってしまいます。歯に付いた汚れを流したり、歯から溶け出したカルシウムを元に戻したりする機能が低下します。就寝前には必ず歯を磨くべきです。

 歯ブラシは毛の硬さが普通か柔らかいタイプを選び、力を入れすぎずに歯を磨くのがポイントです。歯と歯肉の間の歯周ポケットと呼ぶ隙間に毛先が入るよう、斜めにブラシを当てて磨くと効果的です。歯と歯の間の歯垢は普通の歯ブラシでは取り除ききれないので、デンタルフロスや糸ようじ、歯間ブラシなどを使うとよいでしょう。

 歯科医院で磨き方のコツを教わると、歯磨きが上手になります。また、子どもの頃は特に虫歯になりやすいので、歯磨きだけでなく歯科医院で歯にフッ素を塗るのも効果的です。

 国と日本歯科医師会などは1989年から、80歳になっても自分の歯を20本以上保つことを目指す「8020運動」を始めました。こうした取り組みの結果、自分の歯が残っている高齢者が増え、子どもの虫歯も減少傾向にあります。健康な歯を残せば食べる喜びを感じ続けられ、医療費も抑制できて一石二鳥です。


 虫歯の治療は多くの人が経験しているでしょうが、虫歯の進行度合いに応じて治療法は変わります。歯に穴が開いていない初期段階では、歯から溶け出したカルシウムが元に戻り、健康な状態を回復する可能性があります。歯科医院で適切な処置と指導を受けるとともに、家庭ではフッ素入りの歯磨き剤などを使うとよいでしょう。

 歯に穴が開くと元には戻りません。放置すると虫歯が進むため患部をドリルなどで削ります。最近はレーザーをあてる方法も登場しています。削った跡は詰め物をします。以前は金属などが主流でしたが、穴の周囲を大きく削りしっかりはめる必要がありました。

 最近は「コンポジットレジン」と呼ぶ詰め物が増えました。ガラス粉末などを含んだ樹脂材料で、見た目がよいうえ歯とよく接着し、削る範囲も小さくできます。ただ奥歯は食べ物をかむときに強い力がかかるため、虫歯が大きい場合は今でも丈夫で壊れにくい金属の詰め物を使うことが多いです。

 虫歯が悪化し歯の上半分がなくなると歯を抜きます。入れ歯やブリッジと呼ぶ義歯、インプラントと呼ぶ人工の歯を入れます。ブリッジやインプラントは固定式で外す必要がありません。治療法は進化していますが、いずれの方法も自分の歯と同様のかむ感覚を完全に回復できるわけではありません。


 虫歯や歯周病は最もありふれた病気の一つです。ただ最近は、糖尿病や肺炎などの病気とも関連があることが分かってきました。がん手術後の合併症を引き起こす一因ともいわれ、予防や治療の重要性が再確認されています。

 口の中には約400種類の細菌がいるといわれます。虫歯や歯周病の原因菌はこの一部で、ミュータンス菌が代表格です。食後に歯を磨かないと歯の表面に白くて粘り気のある歯垢(しこう)が付きます。これは細菌の塊です。

 口の中は弱アルカリ性から中性で、食事をするたびに酸性になるという変化を繰り返しています。虫歯の原因菌は飲食物の糖分を分解し酸を出します。酸性の環境では、歯の主成分であるカルシウムが溶け出します。通常は唾液の作用でカルシウムが元に戻りますが、間食などが多いと酸性の状態が続き、虫歯ができやすくなります。

 虫歯の初期段階では、歯の表面が不透明になったり白い斑点ができたりします。病状が進むと表層のエナメル質に穴が開き、やがて内部の象牙質に達すると痛みます。さらに内側に進んで神経が炎症を起こすと、眠れないほどの激しい痛みが出ます。

 大半の患者はここまで進行すると歯科医院を受診しますが、神経が炎症を起こすと神経を取る必要があります。歯の上半分が無くなってしまうと、歯を抜くことになります。


虫歯の治療が終われば足が遠のいてしまう歯医者さん。検診のお知らせが来たらちゃんと行っておいた方がいいかもしれません。最近の研究でお口の健康は他の病気とも関連があるということが分かってきています。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校のスティーブ・オッフェンバッハー氏によると、口は体の鏡であり、簡単な歯科検診で体全体の状態もチェックすることが可能です。

彼はある患者の女性に、歯ぐきが赤いので妊娠しているのではと言ったことがありました。翌週、彼女が戻ってきて、病院にいったら妊娠していましたと彼に話したそうです。
このケースでは、彼はいいニュースを予言したことになりますが、お口からわかるのはいいことばかりとは限りません。歯から判断することの可能な、健康をおびやかす5つの病気をみていきましょう。

1.糖尿病
2014年に行われた研究では、歯科医の3分の2が歯周炎をもつ患者に対し、糖尿病を疑うよう話したことがあるそう。高血糖で口の中が乾燥すると、歯垢がたまりやすくなり、虫歯につながります。歯ぐきがはれてすっぱい果物のような口臭がある場合は要注意です。

2.心臓病
2007年の研究で、歯周炎のある人はそうでない人よりも心臓病になりやすいことがわかっています。歯周炎を治療して、心臓病の症状がよくなるケースもあるそう。慢性的に口内で炎症をおこしていて、歯がぐらぐらしたり抜けたり歯周ポケットが深くなってきているのは赤信号!

3.認知症
最近イギリスで行われた研究で、歯がないことと精神的な衰えは関連があるとされています。2012年の別の研究で、歯が健康でない人は認知症になる確率が76%も高いという結果も。また2013年には、歯周病の原因菌が、認知症患者の脳内に発見されています。

4.骨粗しょう症
歯に直接影響があるわけではなく、レントゲンであごの骨などを見たときにわかるんだそう。通常は骨全体がしっかり写っているはずですが、そうでない場合、骨粗しょう症が疑われます。2013年には、あごの骨と背骨の骨密度の関連についての研究結果も。

5.胃食道逆流症
胃酸が逆流することによる症状は、胸やけだけでなく口の中にも見られます。歯の表面にあるエナメル質が薄くなってしまうのですが、特に下の前歯に顕著にみられるそう。2008年の研究では、歯牙侵食の見られる大人の3分の1が、胃食道逆流症も患っています。

この5つの病気のなかには、自覚していない潜在的な患者が多いものもあります。このような病気が、年に一度の健康診断だけでなく、簡単な歯医者さんの検診でも見つかるようになるといいですね。


対談...病気予防に口腔ケア(2014/12/29 読売新聞)

吉田 口の働き、機能、役割と口腔ケアの大切さのポイントを教えてください。

 栗原 口腔ケアは幅広く、入れ歯の調整なども含まれますが、一般的には、口の中の清掃のことです。高齢者にとって、ケアの一番の目的は、誤嚥性肺炎の予防です。東日本大震災では、震災関連死の原因として誤嚥性肺炎が多いとされているのですが、口腔ケアでかなり防げるのではないかと思います。


 吉田 口の管理ができていないとどうなるのでしょうか。

植田 口の管理は、一般的には歯磨きですが、時間や頻度は人それぞれだと思います。ただ、病気や事故に遭い、口や喉にまひが残った時は食べたり、話したりすることに支障が出るので、リハビリが必要になってきます。健康だと食べるのは簡単ですが、体に不具合が生じると、食事とともに生活の質も落ちてしまいがちです。


コーディネーターを務めた吉田医療部長

 吉田 口のケアと認知症の予防と改善の関係を教えて下さい。

 植田 (口の体操などを通じて)表情が出てきたり、口から食べられるようになったりする事例はあります。一方で、「今日は、好きなリンゴのゼリーを一口食べてみましょうか」と語りかけるなど、診療する側から患者へのかかわりの部分も認知症の予防と改善には大切だと思っています。


 吉田 唾液が口の健康に果たす役割を教えて下さい。

 植田 口のがんの治療のため、唾液腺がない方は唾液が出ず、(歯を酸性の環境から守る)緩衝作用もないことから、しょっぱさや辛さが痛みになってしまいます。また、胃ろうの方が下痢や便秘を起こしやすいのは、唾液による消化作用が働かないからです。唾液には、こうした口内の緩衝作用や消化作用のほか、雑菌から口を守るといった働きがあります。


 吉田 ドライマウスという症状があります。そういう方は多いのでしょうか。

 栗原 臨床の現場では「口が渇いている」という方はかなり多いです。服用している薬の影響が考えられますが、対策としては、唾液腺や顔のマッサージが効果的です。


 吉田 歯に関して、かかりつけ医のよい選び方はありますか。

 栗原 歯科医院に通う人の口コミ、評判で探すのが一番です。歯科医も人間ですので、自分と意見が違う人もいるかもしれませんが、その歯科医にこだわる必要はありません。患者が在宅や施設にいる場合は、医師やケアマネジャー、看護師など他職種との連携も重視されています。現在は、千葉県など行政とも協力したチーム作りも進められています。


Q.40代女性。「シェーグレン症候群」と診断されました。3年前からドライアイがひどく、今年になって口の渇き、疲れ、めまいが顕著でした。医師から「治療法がなく症状に応じた対症療法しかない」と言われました。50代で悪化する例が多く、何もなければそのころにまた来院し検査すればよいとのこと。50歳までこの先何年も様子をみるだけでいいのでしょうか。

<回答> 佐川昭(さがわ・あきら)さん 佐川昭リウマチクリニック(札幌市中央区) 

 シェーグレン症候群は、本来は自分の体を守るべき免疫反応が自己の正常な細胞を攻撃してしまう、自己免疫疾患の一つです。特に唾液腺や涙腺などの分泌腺に障害を及ぼします。女性に多く、根本的な治療法がまだありません。 

 質問者の症状で、目が乾燥するドライアイは眼科で傷の有無などを診てもらい、点眼薬の処方を受けてはいかがでしょうか。今は新しい目薬が出ています。 

 口の中の乾燥の対処にはさまざまな方法があります。唾液分泌刺激薬や人工唾液、保湿のため口の中に塗るゲル(ジェル)、口に優しい練り歯磨きや洗口剤(マウスウオッシュ)などです。とりあえずは自分にあった方法を見つけて試すのがよいかと思います。 

 こうした対症療法に加えて普段からの口腔(こうくう)ケアも大事です。精神的な安定を保ち、落ち着いた暮らしをすることも大事でしょう。 

 病気とつき合う方法については、いろいろな冊子が出ているので患者さんご自身で勉強したり、シェーグレン症候群などの患者や家族でつくる全国膠原病(こうげんびょう)友の会《道支部(電)011・512・3233、道難病センター内》に問い合わせたりするのもよいと思います。 

 「治療法がなく症状に応じた対症療法しかない」という主治医の言い方は、実は多くの病気に当てはまります。例えば、風邪でも、高血圧症で原因がはっきりしない本態性(ほんたいせい)高血圧症でも、極端なことを言えば糖尿病でも、まだ根本的な治療法が見つかっていません。 

 でも、一つ一つの症状を手当てしていくことが今、私たち医師や患者さんにできることです。そうすることが病気の悪化やその後の合併症を軽くしたり、減らしたりすることにつながるのです。 

 何よりも、日々のつらい症状を現在ある方法で和らげていくことは、どんな場合でも大切です。ですから今ある方法で少しでも自分の体をいたわりましょう。そうしながら、もっと効き目のあるよい治療法が出てくるのを待ちましょう。
<お悩みの内容> 
むし歯がありますが痛がりません。乳歯は生え変わるのでこのまま放っておいてはいけませんか? 


むし歯は自然に治らないので、放っておくと進行して、しだいに痛くなり、噛むことが難しくなります。その結果、軟らかいものばかり子の無用になって食が偏り、全身の成長に悪影響を及ぼしたり、顎の発育の妨げとなったりします。また、最悪の場合歯を抜かないといけなくなり、早期に歯がなくなるため、永久歯が正しい位置に生えなくなり、歯並びにも影響します。従って、むし歯を放っておかず早期に治療を済ませ、口の中を清潔に保ちましょう。そのことが永久歯を健康に保つことにつながります。 

利用者の心が動いた訪問歯科-2(2014/12/26 けあZine)

昔のようにお出かけしてお買いものもしたい!

 「町へ行きたい......。もう何年も行っていない町へ行って、昔のように買い物をしたりデパートを見て歩いたりしたい。娘に何か買ってやりたい、孫におみやげを買ってやりたい、好きなものを自分で選んで、食べてみたい......。みなさんと同じように......」

 いつも静かなAさんですが、歯の治療が始まってからなんだか顔を上げているときが多くなりました。昔やっていた手仕事もデイのメンバーのために積極的に来年の干支の羊を作ってくれています。

 「歯を治す」事で、前向きな時間が過ごせるようになり、Aさんに希望が生まれました。Aさんのなかで封印されていた「歯がきれいだったときの生き生きとしていたあのころ」がよみがえってきたのですね。

 歯が治って歯並びの良くなったAさんの願いを一緒に実現していきます。

 Make a wish!

 歯が治ることは、身体のみならず心も健康になっていく......。

 Aさんのみずみずしい感情を引き出してくださった町田わかば歯科のみなさん、ありがとうございます。