妊婦のもつ携帯電話の音が、胎児の睡眠・覚醒周期を乱す可能性があるとの報告が、米サンフランシスコで開催された米国産科婦人科学会(ACOG)年次集会で発表された。米ウィッコフ・ハイツ医療センター(ニューヨーク市)のBoris Petrikovsky氏らの研究。
研究の対象者は産婦人科研修医28人で、全員が妊娠後期だった。研修医の妊婦では、妊娠合併症発生率が平均より高い可能性が示唆されている。また職務上、ポケットベルまたは携帯電話をもち歩いていることが多い。
Petrikovsky氏らは今回の研究で、胎児の頭部付近に位置している携帯に対して5回にわたり5分間隔で着信音を鳴らし、この時に超音波検査を実施して胎児への影響を評価した。その結果、どの胎児(妊娠27~41週)も一度音が鳴ると、頭の向きを変えるなどの驚愕反応を示した。10分ごとに鳴らすと90%の胎児が最初に驚愕反応を示し、80%の胎児ではその後の着信でも反応した。
しかし多くの胎児が慣れるらしく、5分ごとに鳴らすと、妊娠36週未満の胎児の60%超、満期胎児の90%で驚愕反応が減少した。繰り返し驚かすことが胎児の健康や妊娠の転帰に影響を及ぼすかは不明だった。
Petrikovsky氏は、「音とおそらく振動が多くの『驚愕反射』を引き起こし、正常な睡眠周期を乱す。これで明らかに妊娠リスクが高まるとはいえないが、周期が乱れるのは明らかだ」という。なお、学会発表された知見は一般に、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは予備的なものとみなされる。