睡眠時無呼吸の治療が糖尿病リスクを減らす(2015.5.13 ヘルスデージャパン)

糖尿病前症の患者では、睡眠時無呼吸の治療が糖尿病発症リスクの低下に役立つ可能性が、米シカゴ大学医学部助教授Esra Tasali氏らによる介入研究で明らかになった。

同氏は同大ニュースリリースで、「糖尿病および心血管疾患のリスクが高い患者では睡眠時無呼吸の検査を考慮すべきだといえる」と述べている。

糖尿病前症は、血糖値が正常値より高いが糖尿病の発症には至っていない状態で、米国ではおよそ5,700万人が該当すると推計されている。

睡眠時無呼吸は、睡眠中に上気道が繰り返し閉塞することで生じる睡眠障害で、睡眠が妨害され、酸素レベルが一時的に低下する。過体重者や肥満者に多くみられる疾患で、心疾患や糖尿病のリスクにも関連している。糖尿病前症患者には未治療の睡眠時無呼吸がある場合が多い。

一方の糖尿病前症は、放置すると2型糖尿病へと進行する。2型糖尿病は動脈硬化や眼、腎、末梢神経障害といった合併症を発症するリスクの高い疾患だ。

しかし今回の検討では、夜間に8時間、持続的気道陽圧法(CPAP)を用いた睡眠時無呼吸の治療を行うことで血糖値が改善し、糖尿病リスクが低下することが明らかになった。CPAPは、睡眠中にチューブとフェイスマスクを通じて患者の気道に安定した気流を送り込む装置だ。

研究では、糖尿病前症と睡眠時無呼吸があって過体重または肥満の中年成人39例を、2週間のCPAP治療を行う群(26例)と、睡眠時にプラセボ(偽薬)を投与する群(13例)に無作為に割り付け、一晩中睡眠記録で監視した。被験者には日中は研究室外で、夜間を睡眠実験室で過ごしてもらった。治療前と治療後には毎回、ブドウ糖負荷試験を行って血糖値を調べた。

その結果、CPAP治療群ではプラセボ群に比べ、血糖およびインスリン感受性に改善が認められた。CPAP群ではストレスホルモンの値や血圧値もプラセボ群より低かった。

同研究を率いた同大元フェローSushmita Pamidi氏(現在はカナダ、マギル大学)は、「実生活で一晩に8時間 CPAPを装着するのは難しいものだが、糖尿病前症を合併する睡眠時無呼吸患者については、今回の結果は心代謝リスク低下のためにCPAP治療を遵守することへの強い動機付けになるだろう」と述べている。

 

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