お菓子を食べたときに、はがしそこねた銀紙をかんで「キーン」という痛みがはしった経験はありませんか? 私は虫歯の治療をしている歯が多く、スプーンなどが当たったときにも痛みがはしることがあります。
この「キーン」という痛み、どうやら虫歯に反応しているよう。口のなかではいったい何が起こっているのでしょうか。おおはし歯科クリニックの院長大橋康之先生に、くわしいお話をうかがいました。
■アルミホイルをかんだときに感じる痛み原因とは?
――奥歯でアルミホイルをかんだりすると、歯が「キーン」と痛みます。これは虫歯によるものなのでしょうか?
「虫歯の治療をしたときに、歯に金属の詰め物やかぶせ物をしていませんか? 実はその痛みは、金属間に電流が流れることでおこっており、この電流のことを『ガルバニー電流』や、『ガルバニック電流』といいます。
小学校の理科の実験で、塩酸の水溶液に、銅板と亜鉛版を入れて、中程に豆電球をつけた電線でつなぐと、豆電球が発光するというものがあります。電気を通す液体のなかに、異なる種類の金属を同時に浸すと電気が発生するという実験ですが、同様のことが口のなかでも起こっているということですね」(大橋先生)
私の口のなかは金属の詰め物だらけ。虫歯の治療をしたことがないという友人が、アルミホイルをかんでも痛むことがないといっていたのは、こういう理由があったんですね。
また、歯の詰め物やかぶせ物に、さまざまな種類の金属が使用されていれば、そこでもガルバニー電流は発生するのだとか。つまり、常に電流が流れているということ。......なんだかとても怖くなってきました。
■電流が発生することで、体に影響はないの?
――口の中で電気が発生しているなんて、想像するだけで怖いのですが、実際体に影響はないのでしょうか?
「電流が流れるということは、『イオン化』している、すなわち金属が溶け出しているということ。溶け出した金属は、口の粘膜から体内に吸収されてしまいますから、重金属の体内への蓄積という問題がでてきます。また、溶け出した金属や電流によって刺激され、味覚が変わってしまうという場合もありますね」
――虫歯の治療後、「変な味がするようになった」という話を聞いたことがあります。てっきり、詰め物の味かと思っていましたが、電流の影響もあるんですね。
「そのほか、電流が発生したことの影響による脳や神経系統への影響も問題視されていますが、これは真偽のほどがはっきりとはわかっていません。あるとしても、そこには大きな個人差があるでしょう。
ただ、実際に頭痛や肩こり、歯の痛み、めまい、不眠などの症状を訴えていた患者さんの金属を除去したところ、症状が改善するかなくなったという人もいました。もちろん、これらの症状すべてがガルバニー電流からくるのではありませんが、ガルバニー電流が原因になって、発生している症状もあることが考えられますね」
身近にあるちょっとした「イヤなこと」だと思って調べてみたら、意外と大きな問題につながることがわかりました。もし、金属をつかった歯の治療後、体に不調がでているという人は、ガルバニー電流の影響を疑ってみてはいかがでしょうか。
■ガルバニー電流をおこりにくくする対策は?
――口の中でガルバニー電流をおこさないため、大切なことはありますか?
「体に不調が出ているのであれば、金属はすべて取り除いたほうがいいでしょう。ガルバニー電流にとどまらず、体にあわない金属が口のなかにあると、体調不良の原因になることが多いですね。そのことが原因でおこっている問題であるならば、取り去ってしまえば不調が改善されることも多いんです。
また、治療に使用する金属は同じメーカーのものにし、貴金属(金やプラチナを主材料にしたもの)を使用すること。貴金属が良いのは、ほかのものに比べて圧倒的に溶けにくく、電気が発生しにくいからです」
大橋先生のお話によれば、ガルバニー電流測定器で測ると、同一の金属でも意外と強い電流が流れる場合があるので、「同じ金属だから問題ない」というわけではないのだとか。
また、ノンメタルや貴金属にも、個人個人で合う、合わないという問題があるため、個別の検査が必要だそうです。
ちなみに、銀歯が入っているという人に、どんなときに痛みやピリピリ感などを感じるかを聞いてみたところ、一番は予想通りアルミホイルでした。そのほか、フォークやスプーンなどの金属食器、中には、缶ジュースを口につけただけでも感じるという人も。
なんにせよ、今回のお話で「口に金属が入っていなければ、あの痛みはない!」ということがわかりました。やっぱり重要なのは虫歯予防。私もこれ以上銀歯を増やさないよう、歯を大切にしたいと思います。