顔の左右どちらかに激痛、生活に支障来す「三叉神経痛」
飲食も困難に
顔の左右どちらかに痛みが生じる「三叉(さんさ)神経痛」。
年間10万人当たり4~5人の割合で見られ、季節の変わり目に症状が出る傾向がある。
痛みが強烈なため生活に支障が出て、高齢者では飲食が困難になることもあるという。
東京医科大学病院麻酔科の大瀬戸清茂教授に聞いた。
三叉神経は、痛みなどを感じ取って脳に伝える知覚神経の一つ。
脳幹部から左右に1本ずつ出ていて、それぞれ額、頬、顎の3方向に枝分かれしている。
大瀬戸教授は「三叉神経痛は加齢に伴って増える病気で、女性に多いことが特徴。
原因は、脳幹部から3方向に分かれる手前の部分が、周囲の血管に圧迫されて痛みが
起こると考えられています」と説明する。
多くは顔の左右どちらかに起こり、風に当たる程度の刺激でも痛む。
発作は個人差があるが、1回に5~20秒、長くても2分以内に治まる。
「痛みは激烈で『虫歯をたたかれたよう』と言う人もいます。
それがよく起これば当然、日常生活に支障を来します」(大瀬戸教授)
また、高齢者では飲食ができないで体重が減ったり、脱水になったりする人もいる。
「顔に激しい痛みが起こるようなら、この病気を疑って痛みの治療を行う
ペインクリニック、あるいは脳神経外科、神経内科のいずれかを受診してください」
(大瀬戸教授)
診断は、特徴的な症状でほぼつくが、脳腫瘍など他の病気でないことを確認する
ために磁気共鳴画像装置(MRI)による検査が行われる。
治療法は薬物療法、神経ブロック、手術、定位放射線治療(ガンマナイフ)の4通り
ある。一般的なのは薬物療法と神経ブロックだ。
「薬物療法は、発作痛を抑えるカルバマゼピンという薬が広く用いられています。
ただし、この薬は眠気や転倒などの副作用があるので、服用中は注意が必要です」
(大瀬戸教授)
神経ブロックは、かつては神経あるいは神経節に麻酔薬を注入して痛みを感じない
ようにしていたが、最近は高周波熱凝固法が普及している。
「これは痛みのある神経に金属針を刺して高周波を流し、その熱で神経を破壊して
痛みの伝達を遮る治療法です」と説明する大瀬戸教授。
いずれの治療法も一長一短があるので、医師とよく相談することを勧めている。
2012年6月取材(記事内容、医師の所属・肩書きは取材当時のもの)