口臭は誰にでもあるが、必要以上に気にする人が少なくない。仮性口臭症や口臭恐怖症と呼ばれるものだ。口臭は一般的に、1日のうちで強くなる時と弱くなる時がある。こうした口臭の日内変動を自覚することが、不安の解消につながるようだ。東京医科歯科大学歯学部付属病院息さわやか外来の川口陽子診療科長に聞いた。
起床時や空腹時強い
川口診療科長によると、口臭を気にして同外来を受診した人のうち仮性口臭症は13.3%、口臭恐怖症が0.3%いたという。
「いずれも口臭が生理的な範囲内にあるにもかかわらず、自分では強いと悩んでいます。特に口臭恐怖症では、対人恐怖や社会的不適合を招いて、日常生活に支障を来す場合もあります」
こうした状況を改善するには、世の中に無臭の人はおらず、誰にでもある程度の口臭はあることを理解するのが必要だ。
「生理的な口臭は起床時に一番強く、朝・昼・晩の食前(空腹時)に強くなります。このように日内変動があることを理解して、口臭がいつ強くなるかみてみましょう」(川口診療科長)
家族に聞いてみる
同じ臭いをずっと嗅いでいると慣れてしまうので、自分の臭いを自分で判定するのはかなり難しい面もある。気になるなら、家族に自分の息が嫌な臭いがしていないかを率直に聞いてみるのも一手だ。
「仮性口臭症や口臭恐怖症は他人の態度やしぐさを見て、自分には口臭があるのではと不安に思う人が多いのです。口臭で長い間悩んでいた若い女性の患者さんが、親しい男友達ができたら、自信を持てるようになって悩みから解放されたケースもあります」(川口診療科長)
しかし、口臭で悩んでいる人の中には、うつ病や統合失調症などの病気が隠れていることもある。
「こうしたケースでは心療内科や心療歯科での治療が必要です。悩んでいる人はまず、歯科大学の口臭外来を受診するとよいでしょう。口臭測定器と医師の嗅覚で臭いの強弱を調べる検査で診断できます。その結果、生理的な範囲内と診断されたときには、口臭には日内変動があるのだということを理解して、神経質にならないように」と川口診療科長はアドバイスしている。