肩こりや腰痛の原因 猫背を直す3つのポイント「首を長く」常に意識(2013/8/3 日経プラスワン)

 家人から「最近、猫背がひどくなったんじゃない」と言われた。実は自分でも気になっていた。地下鉄の窓に映るスマートフォン(スマホ)を見る自分は、以前よりひどい猫背に見える。スマホを見る時間が増え、姿勢も悪くなったように思う。猫背を直す方法はないものか。

 そもそも、人はなぜ猫背になるのだろうか。竹谷内医院(東京都中央区)院長で、カイロプラクティック療法をする整形外科医の竹谷内康修さんによると「楽だから」。背筋を伸ばした姿勢を保つには筋肉に力を入れる必要がある。それよりも力を抜いた猫背のほうが楽なのだそうだ。

■肩こり腰痛の原因 相手に悪印象も

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 それなら力が抜けた猫背のほうが体にいいのではないか、というと、そうではないらしい。4~5キログラムあるといわれる人間の頭を支えるには、頸椎(けいつい)の上に頭がある正しい姿勢のほうが体への負担は少ない。「痛みこそないが、猫背は体に負担をかけている」(竹谷内さん)。長い間猫背を続けることで、負担が積み重なり、肩こりや腰痛の原因になる。

 「猫背はビジネスにとってもマイナスになる」というのは、元客室乗務員の人材育成トレーナー、美月あきこさん。「猫背はだらしない服装と一緒。相手に悪印象を与える」。街を歩く男性を見ると「姿勢を気にしていない、無防備な人が多い」と感じるという。

 では、猫背はどうすれば直るのか。竹谷内さんによれば「その人が一番長く取っている姿勢から直すべきです」。スマホを見る時間でしょうかと尋ねると「たぶんパソコンだと思います」という答えが返ってきた。「実際に時間を計ってみたら?」

 さっそく1日でパソコンとスマホをどのくらい見ているかを確認してみる。結果は予想以上にパソコンを見る時間が長かった。8時間28分にも上る。確かに最近は家に帰ってからも動画やSNS(交流サイト)など、パソコンの前に座ることが多い。「立ったときの姿勢よりも、座ったときの姿勢を直すべきです」

 竹谷内さんによると「ノートパソコンは画面が低い上に小さいのでのぞき込むような姿勢になる」ため、猫背になりやすいという。会社ではノートパソコンを使っているため、外付けのキーボードとディスプレーを接続して、姿勢を正す。さらに椅子と机の距離が遠いと背筋を伸ばした姿勢が取りにくいので、机の下の資料を整理し、深く腰掛けられる環境をつくった。

 最初は窮屈な気もしたが、慣れるにつれ伸ばした背筋を心地よく感じるようになった。しばらく作業したら両手を後ろに回し、背中を伸ばすストレッチをするようにも心がけた。

■携帯端末は顔の前 極力見ないと◎

 次に直したいのは、1日3時間以上にもなったスマホの使い方だ。極力見ないように心がけ、急ぎのメールをチェックするときは見方を変えることにした。

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 おなかの前で見るとどうしても猫背になるので、顔の前で見る。この姿勢は右腕が疲れるため、左手で右肘を支える形にした。ずいぶん腕が楽になる。ただし「できるだけ見ないに越したことはない」(竹谷内さん)。

 高い位置でスマホを見るようになると、やはり普段立っているときの姿勢も気になってくる。美月さんにきれいに見える立ち方を教えてもらった。

 おへその下あたりにある「丹田(たんでん)」に力を入れて、次につむじを上から引っ張り上げられているようなイメージで背筋を伸ばす。「さらに肩甲骨を少し近づけるようにして、胸を張ってください」。確かにこうすると背筋が真っすぐになる気がした。

 この状態を横から見ると、耳、肩、腰の中心、くるぶしが一直線になる。これが正しい姿勢だという。「家を出る前や、トイレで服装をチェックするときに姿勢も確認しましょう」

 アドバイスに従い、正しい姿勢に挑戦してみる。しばらくすると、うれしいことに同僚から「姿勢、よくなりましたね」と声をかけられた。だが油断するとすぐ猫背に戻ってしまう。意識せずに正しい姿勢を保てるようになるのだろうか。

 きれいな姿勢といえばバレリーナ。彼女たちは意識せずにきれいな姿勢を保っているのだろうか。世界五大バレエ団の一つ、アメリカン・バレエ・シアターで活躍する加治屋百合子さんは「自然に身についている部分もあるが」と前置きをした上で「常に『私はバレリーナだ』と意識して美しい動き、立ち居振る舞いをするように心がけている」と教えてくれた。

 長年、バレエを続けている加治屋さんでも「油断すると猫背になってしまうので気をつけています」。簡単に身につくわけではなさそうだ。

 加治屋さんは「よい姿勢を取る、というより『首を長くする』という意識を持つように心がけている」という。「『首を長く』と意識すると背筋がスッと伸び、肩の力も抜けて、ナチュラルな本当によい姿勢になれると思います」

記者のつぶやき
 美月さんが教える女子大生たちも「きれいな立ち方が身につくまでには3カ月、自然に立てるようになるまで半年はかかる」という。あきらめずに、背筋を伸ばして仕事に取り組むのが大切、ということか。
 医師の竹谷内さんによると「たとえ正しい姿勢であっても同じ姿勢を続けるのは体によくない」そうだ。スマホやパソコンは画面を見続けるうちに、あっという間に時間が過ぎていることがある。改めて気をつけたいと実感した。守るのは難しいけれど......。


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このページは、Uクリニック竹内歯科が2013年8月19日 17:42に書いたニュースです。

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