食事でよくかむと認知症の予防になる?(2014/1/16あなたの健康百科)

食事でよくかむと認知症の予防になる?

<専門家へきいてみよう 「質問する」より> 

〔症例〕 50代 女性
〔症状〕 高齢の母を介護しています。母は歯がなく総入れ歯ですが、合わないようで使いたがりません。かまずに食べられるものを好み、また、食事量も減ってきました。最近ではすっかり体力も気力も衰えてしまい、少し認知症気味にも感じられるため今後が心配です。「自分でかんで食べること」が高齢者の認知症などの予防につながると聞きましたが、本当でしょうか。

改善例があります。 

 将来、寝たきりの老人になりたい方はいますか? ―誰もいないでしょう。元気により良く長生きしたい方は、毎日徹底的に口の中をきれいにしてください。そして、何よりもよくかむことが大切です。歯を失った方は、よくかめる入れ歯を歯医者に作ってもらいましょう。 

40代以上で歯を失う原因第一位は歯周病

 歯、入れ歯、歯茎、口の粘膜などにプラーク(歯垢=しこう)が付いて口の中が汚れていると歯周病になります。歯周病は、歯茎の炎症や歯を支える骨(歯槽骨)を失うことにとどまらず、全身の病気に深く関わることが分かっています。 

 歯周病菌は、血流を介して全身に広がります。脳へ行くと脳卒中などの脳血管疾患、心臓へ行くと心臓病、その他の全身の病気では、糖尿病、肝臓病、関節リウマチ、骨粗鬆(しょう)症、がん、低出生体重児(早産)、認知症などに関わり、近年では「ペリオシンドローム(歯周病症候群)」という言葉が生まれました。 

 口の中をきれいにして歯周病を予防することで、全身の病気の予防につながっているともいえるでしょう。要介護の高齢者に関しては、口の中をきれいにすると肺炎の発症率が減ることも報告されています。 

 ただし、ご自身の歯磨きだけではどうしても落とし切れない汚れが残ります。3カ月に1回は歯科医院で徹底的に口の中の清掃、入れ歯の管理を行ってもらいましょう。 

口の機能の回復によって身体機能が改善することも 

 当院での改善例を紹介します。 

・40歳代男性 脳血管疾患 9年前に車椅子で来院
日常生活機能評価(会話、寝返り、起き上がり、食事摂取など)では、全て一人で行えず、要介護5(全面的な介助が必要で、意思の疎通も困難)と判定された。当院では、しっかりと自分でかめる入れ歯を作り、口の中の清掃を徹底した。治療や訓練を継続し、5年後には日常生活機能評価の全てができるようになり、要支援1(基本的な機能はあるが、買い物や入浴など一部介助が必要)へと改善した。 

・80歳代男性 軽度の認知症 自立歩行不能 介護士に支えられて来院
来院当時、全く食べ物がかめない状態。当院では、上の顎に総入れ歯、下の顎に部分入れ歯を作り、口の中の清掃の徹底と、治療用のガムをしっかりかんでもらった。1カ月後、問題なく物が食べられるようになり、10カ月後には一人で歩けるまでに改善した。 

 これらの改善例は、歯科医療者だけではなく、医師、看護師、理学療法士、介護士などと家族の支えがあってこそ、つまり多職種協働の結果ですが、よくかむことで脳の神経が活性化されて、身体機能の改善を補助した例といえるでしょう。


このニュースについて

このページは、Uクリニック竹内歯科が2014年1月17日 13:54に書いたニュースです。

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