よくかんで食べると認知症を予防するしくみは?(2014/3/27あなたの健康百科)

<専門家へきいてみよう 「質問する」より> 

〔症例〕 30代 女性
〔症状〕 「食事でよくかむと認知症の予防になることがある」という記事を読みました。どういう仕組みで認知症を予防するのでしょうか。

よくかむことで、記憶をつかさどる「海馬」が刺激されています。

 よくかんで食べることは、健康長寿に効果があることをご存じでしょうか? ご質問の記事にあるように、アルツハイマー病の方によくかめる入れ歯を作り、口の中の清潔を徹底して保ち、自分でよくかんで食べられるまでに口の機能が回復すると、認知症の症状が改善した例が報告されています。

 近年の研究で、よくかんで食べると脳の広い部分が活性化され、反対に、複数の歯を失ったなどの理由でよくかめない場合は、認知症になりやすいことが分ってきました。何故、よくかんで食べることが認知症の予防につながるのか、その仕組みを説明しましょう。

歯根膜から三叉神経を通じて脳へ刺激が伝わる

 私たちの歯には、歯根膜と呼ばれる神経の膜があります。これは歯と歯を支える骨(歯槽骨)との間でクッションの役割も果たしています。物をかむ感覚は、この歯根膜から脳の中でも最も太い「三叉神経」を通って脳の中のさまざまな部位に情報が伝達されています。下記のように、脳の中の多くの部分が刺激されているのです。

・記憶をつかさどる「海馬」
・思考をつかさどる「前頭前野」
・皮膚からの刺激を受ける「感覚野」
・運動機能、意思決定などの認知過程、意欲に関わる「線条体」
・大脳皮質で骨格筋に随意運動の命令を出す「運動野」

 アルツハイマー病は、記憶をつかさどる「海馬」と深く関わることで知られています。よくかんで食べることで認知症を予防する仕組みは、かんで伝わる脳への刺激によって、衰えた記憶や運動機能をよみがえさせる効果があるためと考えられています。

かむと歯の歯根膜から三叉神経に刺激が伝わる

海馬、前頭前野、感覚野、運動野、線条体が活性化する

記憶、情動、感覚、運動、意欲がよみがえる効果がある

 最先端の歯科研究では、ネズミ(ラット)の奥歯を切断して物がかめない状態にすると、海馬に情報を伝達する神経の数が減り、奥歯を治療して再びかめるようにすると神経が回復して、神経の面積が増え、やがて神経がつながったという報告もあります。

 さらに食物をよく噛んで消化吸収することで、アミノ酸(タンパク質)、ビタミン、ミネラルなども体内に取り込まれ、脳の働きにも大切な役割をすると考えられています。

 現在、アルツハイマー病の治療薬は、進行を抑えることはできても治すことまではできません。今後は、「よくかんで食べると、脳が活性化されて認知症を予防する」といった歯学的なアプローチも治療手段の一つになってくるでしょう。


このニュースについて

このページは、Uクリニック竹内歯科が2014年3月29日 17:20に書いたニュースです。

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