毎日の食事で何げなくしているのが「かむ」行為。かみ合わせやかむ力は肩こりや腰痛、認知症など、全身の健康と関係しているという。健康に長生きするためにも、かむ能力が大切だ。(油原聡子)
不正咬合
歯並びが悪かったり、かみ合わせが悪かったりすることを「不正咬合(こうごう)」という。しっかり食べ物をかむことができず、健康に影響が出る可能性がある。日本顎(がく)咬合学会の渡辺隆史理事長は「不正咬合だから必ず病気になるというわけではない。しかし、かみ合わせは認知症や睡眠障害、姿勢の悪化、鬱などさまざまな症状と関わっていると考えられる。健康な生活を送るためには、かむ能力を保つことが大切です」と話す。
不正咬合の原因の一つに歯並びがある。ただ、歯並びは遺伝的な要素が大きいが、治さないと病気に必ずなるというわけではない。治療での抜歯後、何もしないでいると残った歯が動いてしまい、後で不正咬合になるケースもある。「食事は健康に直結する大切な行為。食事を楽しく、きちんと取るためにもかみ合わせやかむ力は大切」(渡辺理事長)
最近はファストフードや軟らかい食材の多用、食事の短時間化などで、正しい咀嚼(そしゃく)ができにくい環境になりつつある。かむ能力の基本は2、3歳までに形成されるが、咀嚼のための基本的能力の低い子供も増えているという。かむための筋肉やあごが発達しないと下あごが発達せず、かみ合わせがずれたり、歯並びが悪くなったりする。