<セカンドライフ>高齢者が食べやすい野菜の切り方
ニンジンや大根は箸でつかみやすいよう、適度な大きさを心がける |
高齢者の食事で気を付けたいのが、誤嚥(ごえん)。老化によって食べ物をかむ力やのみ込む機能が弱くなり、うまく働かなくなるからだ。誤って唾液や食べ物が気管に入ると、肺炎を引き起こしかねない。調理の基本となる野菜の切り方を工夫することで、予防したい。 (発知恵理子)
◆繊維を断つ
教わったのは、管理栄養士で調理師の駒井雄一朗さん(42)。有料老人ホームを手掛ける「生活科学運営」(東京都新宿区)で、入居者の食事作りをスタッフに指導、統括している。
「食べづらいと、どんなに味が良くてもおいしいと感じられない。調理の工夫で解消し、普通の食事のように召し上がってもらう取り組みをしている」と駒井さん。食事時間が極端に長くなったり、いつまでも口をもごもごさせていたり。今まで好き嫌いがなかったのに食事を残すようになるのも、食べづらさに気付くポイントだ。
野菜を切るだけなら、家庭でもそれほど手間や時間がかからず、簡単にできる。大切なのは繊維を断つこと。「同じ野菜でも、切り方を変えると食感が違う」と言う。
ホウレンソウや小松菜、チンゲンサイなどは、葉の部分は縦にも切り込みを入れ、長さ二、三センチにする。ゴボウなどの根菜は、斜めの輪切りにして、細く切る。「味のしみこみも良くなって調味料が少なくて済むため、減塩効果もある」
インゲンなども斜め切り。キャベツの芯は斜め薄切りにすると、葉の部分と均等に火が通る。ニンジンや大根などを煮物用に乱切りする際は、箸やスプーンで持ちやすい五ミリから一センチの大きさに。むやみに細かくはしない。
◆軟らかく下ゆで
いずれの野菜も十分程度、下ゆでし、さらに軟らかくする。「時間は食べる方の状態に合わせて。三十分くらいゆでることも」
実際に試食すると、ホウレンソウはふわっと口の中で広がり、ゴボウやインゲンは繊維の感触が長く残らない。「本当に微妙な差ですが、高齢者にとってはそれが食べやすさにつながる」
他にも、しょうが焼きなど肉を使ったメニューでは、一口大に切った薄切りの肉を一度、酒を入れた熱湯にさっとくぐらせ、霜降りにしてから調味料をからめる。「硬くならないように、加熱時間を短く仕上げると良い」。魚は骨をきちんと取る。あんかけなどとろみを付けると食べやすくなる。
ホームでは、食べる気力がなくなってしまった入居者に、できる範囲で好物を用意することもある。駒井さんは「食事に興味を持ってもらい、食べる楽しみを取り戻すことも大切」と話した。