条例で心筋梗塞半減
「2004年に報告された医学データが世界の受動喫煙の意識を変えました」と高橋教授。02年に米国のモンタナ州ヘレナで受動喫煙防止条例が実施されてから半年間で心筋梗塞の発生が半減。町ぐるみの禁煙は受動喫煙の影響の大きさを示し、それ以降、世界各地で同様の条例や禁煙法制定を促したという。
「大気中のPM2.5(微小粒子状物質)の1日平均値が1立方メートル当たり70マイクログラム(単位以下同)を超えたら、外出を控えるようにといわれます。髪の毛の太さの30分の1ほどの粒子は肺の奥まで入りやすく、呼吸器系と循環器系への影響が心配されるからです。しかし、喫煙室のPM2.5は700、喫煙室前の廊下では70を超えています。危険は身の周りにあるのです」(高橋教授)
子供は中耳炎にも
世界各地で受動喫煙による健康調査の報告が相次いでいる。英スコットランドでは喫煙規制法案施行後、毎年5.2%増加していた小児喘息(ぜんそく)の入院数が18.2%減少した。親が喫煙する家庭の乳幼児は、そうでない家庭の乳幼児に比べて夜間の救急受診が2倍になるなど、特に子供への深刻な影響を訴えている。
米国では職場の受動喫煙で糖尿病発症率が1.81倍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)発症の可能性が2.5倍に、子供では中耳炎を発症しやすいと警告している。
たばこの煙は屋外では17メートル離れた場所まで届くという調査もあり、換気扇の下やマンションのベランダでの喫煙も同居者への影響を防げないことが分かってきた。
「分煙は受動喫煙の防止にはなりません。公共施設や路上での禁煙を徹底してもらうとともに、禁煙に挑戦する人の相談窓口を設けて情報を提供する。特に若年層に対しては周囲が支援する姿勢が大切です」と高橋教授は話す。