スマートフォン(高機能携帯電話)やタブレット型端末などの普及で便利になった半面、こうした機器を長時間使うことで視力や首・肩・指などに異常を訴えるケースが増えている(関連記事:ご存じですか? スマホなどによる指の関節炎「RSI」)。また、寝不足を引き起こし、特に子供の発達に影響することも指摘されているが、これらとは違った思わぬ方向から携帯端末による"副作用"が報告された。米ラディ小児病院のSharon E. Jacob氏とShehla Admani氏は、全身のアレルギー性接触皮膚炎で同院を受診した11歳の男児の例を紹介。アレルギー症状に、この男児がたびたび使っていた米アップル社のタブレット型端末「iPad(アイパッド)」に含まれるニッケルが関連していたという。詳細は、7月14日発行の米医学誌「Pediatrics」(電子版)に掲載されている。
ニッケル含むのは液晶部分
今回の男児は、全身に重い皮膚炎を起こして同院を受診。以前にアトピー性皮膚炎にかかったことがあったため、ステロイドの塗り薬を処方されたが、アレルギー症状は改善しなかった。そこでJacob氏らはアレルギー性接触皮膚炎を疑い、パッチテスト(皮膚アレルギー試験)を行った。
その後の診察で、男児の家庭で2010年にiPad(初代)を購入し、この半年間に男児が頻繁に使っていたことが分かったため、iPadを調べるとニッケルが検出された。
男児にはニッケルを含む製品だけでなく、ニッケルを含む食事も避けるよう指導され、皮膚炎の症状は大きく改善しつつあるという。iPadが使えなくなったわけではなく、ニッケルが含まれている液晶画面を覆うカバーを付けて使うようアドバイスされている。
iPhoneやMacbookなどでも報告
Jacob氏らによると、これまでにも同じアップル社のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」やノートパソコン「MacBook(マックブック)」などが原因とされるアレルギー性接触皮膚炎の症例報告はあったが、iPadに関する報告は初めてという。
触れたものに反応してかゆみや湿疹などを引き起こすアレルギー性接触皮膚炎の子供は増えており、中でもニッケルが原因物質として最も多く報告されているという。ニッケルは酸に弱く、汗などでも成分が溶け出しやすいこと、携帯電話から腕時計、アクセサリー、硬貨などさまざまな製品に広く使われているためだと考えられている。
Jacob氏らは、ニッケルアレルギーが疑われたら、携帯端末などの電子機器が原因の可能性も考慮するよう注意を呼びかけた。