定期的に家庭訪問し診察
Q 友達のおばあちゃんの家には、月2回、診療所からお医者さんが来て診察してくれるんだって。高齢者には助かるよね。
A 医療機関に通うことができない患者の家に、医師が出向くことを「訪問診療」というんだ。対象の多くは高齢者だよ。昔からある「往診」と似ているけど、「訪問診療」は曜日や時間を決めて定期的に来てもらうのに対し、病状が悪化して急に来てもらう時などを「往診」というんだ。歯科医師による訪問診療や、看護師が来てくれる訪問看護なども合わせて、「在宅医療」と呼ばれているよ。
Q 家で訪問診療を受けている人って、多いの?
A 昨年度、訪問診療を受けた人は54万人ぐらい。ここには、自宅だけじゃなく、有料老人ホームやグループホームなどに来てもらうケースも含まれている。国は在宅医療を推進しようとしているから、今後はもっと増えていくと思うよ。
Q へえ、国はなぜ推進しようとしてるの?
A 戦後間もなく生まれた団塊の世代が、2025年には75歳を超える。75歳以上になると、病気や障害を持つ割合が高くなるけど、病院をあまり増やせないからだよ。日本の病院のベッド数は今も多すぎると言われているからね。国は、病院を増やす代わりに、在宅医療を充実させようとしているんだ。終末期を過ごす場として「できるだけ自宅がいい」と希望する人が6割近くいるという国の調査もあるよ。
Q 在宅医療を広げるには、訪問をするお医者さんがたくさん必要だよね。
A そうだね。そういう医師はまだ十分とは言えないね。国は2006年に、担当する患者から24時間、いつでも連絡が取れるようにするなど、一定の態勢を取る診療所には、高い報酬を認めるようにした。こうした診療所は今、全国に約1万3000か所ある。その後も在宅医療の報酬を上げてきたんだ。
Q お医者さんにとっては、患者さんに来てもらったほうが楽だろうね。
A 昔は、開業医が往診するのは普通だったし、自宅で亡くなるのも当たり前だった。1950年ごろは、8割の人が自宅で亡くなっていたんだ。ところが今は、逆に8割近い人が病院で亡くなっている。病院が増えて、医療が病院中心に変わり、診療所は、日中の外来診療だけを行うところが多くなったからね。国は再び、患者を訪問する医師を増やそうとしているわけだね。
Q 訪問診療をするお医者さんを増やすのは難しいの?
A 医師のなかには、患者の要請があれば24時間対応しなければならなくなることや、看護師など他の職種と連携して在宅医療を行うことを「大変だ」「面倒だ」と考える人もいる。医師の意識改革も必要だと言われている。
Q 医療も変化が求められているんだね。
A 国は、限られた財源の中で、高齢者の医療ニーズに対応するため、病院の再編を進めようとしている。在宅医療はその重要な受け皿になると見られているんだ。患者の側も、在宅医療についてもっと知って、うまく利用してもらいたいね。