お菓子をつい食べ過ぎてしまう本当の理由 食品に仕掛けられた至福の罠① (2014/8/17 日本経済新聞)

お菓子を食べはじめたら、途中でやめられなくなり、気づいたら一袋を一気に食べてしまった──。そうした経験は誰にでもあるだろう。実は、加工食品のグローバル企業は、消費者が自社の食品を買い続けるよう、さまざまな罠(トラップ)を製品に仕掛けているという。『ニューヨーク・タイムズ』紙記者のマイケル・モス氏は、近著『フードトラップ』で、長期的には健康をむしばむ可能性があることを承知で、消費者をひっかける製品を次々と世に送り出す加工食品業界の実態を暴いた。著書の舞台は米国だが、登場するのは世界を市場にしている企業ばかり。当然、日本も無関係ではいられない。2010年に食肉汚染報道でピュリッツアー賞した敏腕記者モス氏が、無防備に加工食品を利用する消費者に警鐘を鳴らす。

 2008年、イラク戦争やイスラム過激派の取材で中東にいた私に、『ニューヨーク・タイムズ』紙の編集部から連絡があった。加工食品産業について調査してほしい、という依頼だった。

 米国南部、ジョージア州のピーナッツ加工工場で、ずさんな製造管理によって病原菌のサルモネラが混入した。消費者8人が死亡し、体調不良をきたした人は43州で推定1万9000人。同社のピーナッツ原料を使った加工食品は数千にも及び、メーカー各社は商品回収などの対応に追われた。

 事件を取材する中で、一つの実態が浮き彫りになった。非常に複雑な取引関係や利益を確保しなければならない圧力に、がんじがらめになっていた加工食品業界は、もはや原材料をコントロールしきれなくなっていたのだ。

 ピーナッツの次に私が調査したのはハンバーグ肉だった。大腸菌汚染による食中毒事件が相次いだからだ。調べてみると、事態はピーナッツにも増して深刻だった。食肉加工業者は、安い端肉を世界中の食肉処理場から調達し、それらを混ぜ合わせてハンバーグ肉を製造・出荷している。製造工程の中で、汚染を防止する方法はいくつもあったはずだが、そこにはまったく目が向けられていなかった。

 私は加工食品業界の実態について、ますます興味を引かれるようになった。その後、ワシントン州シアトルで知人と夕食をともにした。その知人は、加工食品分野の情報源として私が特に信頼する一人である。彼はこう言った。

(写真:PIXTA)

(写真:PIXTA)

 「マイケル、確かに食中毒は痛ましい事件だ。だがそれと同じくらい、人々の健康を脅かしている脅威がある。それは、食品メーカーが意図的に商品に加えているものだ。こちらは、彼らが絶対的な支配権を握っている」

 これが5年前の話だ。米国の2012年の調査によると、成人の3人に1人、子どもでも5人に1人が、医学的肥満に該当する。糖尿病の患者数は全人口の9.3%に当たる2900万人、さらに、20歳以上の3人に1人にあたる7900万人が、糖尿病にはなっていないが血糖値が正常よりも高い予備軍とされる。痛風患者も800万人いる。糖尿病患者数は2010年よりも300万人増えており、専門家からは清涼飲料の取り過ぎなど、不健康な食生活との関連性が指摘されている。まさに彼の言葉通りだった。

 肥満の急増は医療費増大と生産性低下をもたらし、その社会的コストは年間約3000億ドルにも達すると推定されている。日本など、ここまで劇的な数字でない国もあるが、糖尿病の増加傾向は世界的にみられる。

■塩分・糖分・脂肪分は、加工食品業界の聖杯

 この危機的状況の大きな責任を負っているのが、塩分・糖分・脂肪分を大量に使い続けている加工食品産業だといえる。

 私たち消費者も、塩分・糖分・脂肪分を大量に使った加工食品――私としては「好きになりたくないが好きになってしまう食品」と呼びたい――が、健康を蝕んでいるのではないか、と疑い続けてきた。しかし、食品業界の取材活動を通じて明らかになったのは、製品を送り出している企業たちが、それを承知のうえで、塩分・糖分・脂肪分の使用量を増やし続けていたということだ。


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このページは、Uクリニック竹内歯科が2014年8月20日 15:52に書いたニュースです。

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