■痛み数年続く人も
高齢者の病気と思われがちだが、実は10代~20代前半の発症も多い。これは子供の頃に水ぼうそうにかかって獲得した免疫が徐々に弱まるためとみられる。20代後半から30代になり家族を持つと、子供が水ぼうそうにかかった際にウイルスにさらされて免疫が高まり、帯状疱疹の発症率が下がるとされる。
とはいえ「職場の過労やストレスで発症するケースは以前より増えた」と専門家は指摘する。ぴりぴりとした違和感などを感じたら早めに皮膚科を訪れることが得策だ。
初期症状だけでは他の病気と自分で早合点してしまう場合もある。「体の半分の一部に痛みまたは発疹が出たら帯状疱疹を疑ってほしい」と宇野皮膚科医院(東京・世田谷)の漆畑修院長(東邦大学客員教授)は訴える。
治療は抗ウイルス薬の投与が中心で、鎮痛剤やステロイドを使うこともある。漆畑院長は「発疹が出て3日以内に治療を始めれば3~5日で大半は治る」と話しており、早めに対処すれば症状が長引く可能性を減らせる。
通常は皮膚の発疹が治れば痛みも消えるが、ぴりぴりとするなどの痛みが続く場合もある。後遺症の1つの「帯状疱疹後神経痛」だ。数カ月から数年続く人もいる。このほか顔面神経まひや耳鳴り、目まいなどの後遺症が出る例もある。医師の指示に従い、きちんと治療することが大切だ。
帯状疱疹は自らの免疫低下で発症するので基本的に周囲に感染しない。ただ、水ぼうそうにかかったことがない人にうつると、水ぼうそうを発症する恐れも。妊娠時に感染すると生まれた子が「先天性水痘症候群」になるケースがある。これは低体重や白内障、脳炎などが現れる病気だ。帯状疱疹の患者は周囲への気配りを忘れないようにしたい。
欧米では帯状疱疹を防ぐため、水ぼうそうのワクチンを接種している。日本でも今年10月から子供を対象に定期予防接種が始まるが、水ぼうそう向けだ。大人が帯状疱疹の対策としてワクチンを接種することも可能なので、医師に相談してみるのもよい。健康保険は利用できない。費用は1万円前後が目安だ。
(山本優)