満腹を感じない...脳をだます奇跡の菓子にご用心 -1(2014/8/31 日本経済新聞)

 お菓子を食べはじめたら、途中でやめられなくなり、気づいたら一袋を一気に食べてしまった──。そうした経験は誰にでもあるだろう。実は、加工食品のグローバル企業は、消費者が自社の食品を買い続けるよう、さまざまな罠(トラップ)を製品に仕掛けているという。『ニューヨーク・タイムズ』紙記者のマイケル・モス氏は、近著『フードトラップ』で、長期的には健康をむしばむ可能性があることを承知で、消費者をひっかける製品を次々と世に送り出す加工食品業界の実態を暴いた。著書の舞台は米国だが、登場するのは世界を市場にしている企業ばかり。当然、日本も無関係ではいられない。2010年に食肉汚染報道でピュリッツアー賞した敏腕記者モス氏が、無防備に加工食品を利用する消費者に警鐘を鳴らす。

 『フードトラップ』は大手食品企業の陰謀を臭わせる場面から始まる。しかし、調査を進めるにつれて、私は大手加工食品メーカーによる陰謀を感じることが少なくなった。個々の企業は、可能な限り魅力的な商品を作って売ることを目指しており、そのために各社各様の強力なモチベーションを持っている。

清涼飲料水の含まれる糖分は体に認識されにくいため大量に摂取しても体からストップがかかりにくい(写真:Getty Images)

清涼飲料水の含まれる糖分は体に認識されにくいため大量に摂取しても体からストップがかかりにくい(写真:Getty Images)

 新製品開発で業界の伝説的存在となっている科学者、ハワード・モスコウィッツ。彼は、炭酸飲料「ドクターペッパー」の新フレーバー開発の過程を詳しく話してくれた。原料配合がわずかずつ異なる何十ものサンプルを用意し、消費者を集めて試飲会を繰り返し、高等数学を駆使して、完璧な糖分量を見つけ出す。そのポイントにぴたりと合わせて製造すれば、飛ぶように売れる――彼はそれを「至福ポイント」と名付けた。

 私は、本書執筆のための調査中に、機密扱いのさまざまな業界記録を入手した。そこには、食品メーカーが綿密な計算のうえで原材料に塩分、糖分、脂肪分を使いこなしている様子がありありと示されていた。

■脳がカロリーを感じにくい奇跡のスナック菓子

 ポテトチップなど塩味の利いたスナック類では、使われる用語までもが華々しく、また意味深長だ。ある科学者は、パフ状のコーンスナック「チートス」を「奇跡的な創造物」と評した。欲しくてたまらなくなるような特徴を何十も備えていて、そのひとつが「カロリー密度消失」という現象だという。チートスは口の中で溶ける。すると脳はカロリーが消え失せたと勘違いしてしまい、「おいマイケル、そろそろ食べすぎだよ」という信号を発しない。

 こうした科学者たちは、加工食品に対する消費者の依存が高まってしまったことに対して、何らかの遺憾の念を表明した。この点では、業界側の言い分にも一理ある。1980年代以降、いつ、どこで、何を食べてもよいという風潮が、「一夜にして」と言えるほどのスピードで広まった。人々の気軽なスナック習慣は、大手食品企業にとって願ったりかなったりだった。


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このページは、Uクリニック竹内歯科が2014年9月 1日 17:53に書いたニュースです。

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