特養で「口腔体操」...飲み下す力 笑顔で改善(2014/8/25 読売新聞)

食べ物かすや唾液が肺に入ってしまう「誤嚥ごえん」は、高齢者に多い肺炎の原因となる。物を飲み下す(嚥下えんげ)機能の低下を防ぐため、口や首などの運動や唾液腺マッサージなどの「口腔こうくう体操」を入所者の日課に取り入れ、誤嚥性肺炎の発生件数を大幅に減らした特別養護老人ホーム「成法苑」(大阪府八尾市)をシニア2人が訪ねた。

口腔体操を体験する田辺さん(左)と杉山さん(大阪府八尾市の特別養護老人ホーム「成法苑」で)=原田拓未撮影

 同府吹田市の杉山昌美さん(69)と、同府東大阪市の田辺卓さん(68)。元ケアマネジャーの杉山さんは高齢者施設でのボランティア歴が長く、製紙メーカー代理店を定年退職した田辺さんは1年半前から義母の介護を家族と分担している。

 「成法苑」には、日常の介護が必要な50人が入所している。年に数件だった誤嚥性肺炎が2011年に12件と急増したことから、同年秋以降、口腔体操や発語練習、歯科医と連携した口腔ケアの徹底などに努め、12年は10件、13年には4件まで減らした。今年はまだ1件しか起きていない。

 2人を出迎えた生活相談員の小山隆博さん(40)は、一連の取り組みを主導し、女性職員をモデルに教材となるDVDの撮影を担当した。「口腔体操の内容を掲示している施設は多いですが、定着しないと効果はない。職員が力を合わせて毎日続けることが大切で、挿絵ではわかりにくい動きもDVDならうまく示せると考えました」と振り返る。

 昼食前、食堂に集まった約30人がお茶でのどを潤した後、口腔体操が始まった。DVDの画面と職員のサポートに従って約5分間、全員が口や上体を動かす。BGMも参加者の希望を聞き、美空ひばりさんの「川の流れのように」など3種類を用意した。

 体を動かした後は、舌の動きをよくするため、「パ・タ・カ・ラ」の発語練習を繰り返し、杉山さんは「確かに唾液が出てきた」と驚いた様子。職員の指示によって手の指を折っていく運動では、失敗する人も多く、笑いが広がった。「笑うともっと元気になれる」と男性職員が皆を励まし、最後は深呼吸で締めくくった。

 DVDは当初、「テンポが速過ぎる」と不評で、スローペースに作り直したという。入所者の嚥下機能の改善を示すデータを見、「定着するまでにはいろいろあったんでしょうね」と水を向けた田辺さんに、小山さんは「でも、工夫して利用者さんに喜んでもらうことが私たちの生きがい。流動食を刻み食に、刻み食を普通食に戻す試みもやっています」と答えた。(石塚直人)


楽しそうな姿印象的

 杉山さん「皆さんが楽しそうに取り組んでいるのが印象的。食事を(流動食から)普通食に近いものへ、食べやすいように車いすから普通のいすに戻すなど、介護の負担より入所者への配慮を重視する姿勢に感動しました」

 田辺さん「義母の入院と前後していくつも高齢者施設を見ましたが、ここは入所者も職員もとても明るい。リーダーの方を中心に、時間をかけて取り組んできた経過がよくわかり、参考になりました」

肺炎7割 誤嚥

 高齢化の進展に伴い、肺炎は日本人の死因の3位を占めるようになった。日本呼吸器学会によると、高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥に関係。誤嚥性肺炎は再発しがちで治療が難しく、口内の清潔を保つこと、口腔体操などで嚥下機能の低下を防ぐことが予防のカギとなる。

 成法苑の取り組みは、12、13年の大阪府老人施設研究大会で発表され、その後、問い合わせが相次ぐなど注目を集めた。特別養護老人ホームの約7割が加盟する全国老人福祉施設協議会(東京)は、ガイドブックを発行するなど、約10年前から口腔ケアの啓発に力を入れているが、「1日2回の歯磨きだけの施設もありレベルに差がある」と認める。


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このページは、Uクリニック竹内歯科が2014年8月26日 15:50に書いたニュースです。

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