2014年9月アーカイブ

医療相談 22歳娘 高校時代から歯ぎしり(2014/9/28 読売新聞)

22歳娘 高校時代から歯ぎしり

 22歳の娘は高校生の頃から歯ぎしりが始まりました。大学以降に激しくなり、高校時代に矯正した受け口も戻ってしまいました。同室で寝る姉が寝られないほどです。原因や治療法を教えてください。(53歳女性)

ストレス減らし良質の睡眠を

 山口 泰彦たいひこ 北海道大歯学研究科教授(札幌市)

 歯ぎしりは歯のこすり合わせやかみしめを起こす習癖で、音が出ないものや寝ている時だけでなく昼間に起きるものもあります。ご質問の娘さんは、音を伴っているようですので、こすり合わせる動きの歯ぎしりをしているのでしょう。

 音による支障の他、歯のすり減りや折れ、割れ、歯周病、あごの痛み、かぶせた冠や義歯の破損を引き起こすこともあります。過剰な力で長期間続くとかみ合わせが変わることはあり得ますが、受け口まで引き起こすかどうかは何とも言えません。歯並びが変わる原因は他にもあるので、かみ合わせ専門の先生にも相談されるといいでしょう。

 歯ぎしりは睡眠の深さや自律神経の変化と関係することがわかっており、原因として精神的ストレス、遺伝などが考えられていますが、詳細はまだ明らかではありません。薬や他の病気の影響もあり得ます。

 歯ぎしりを完全になくす治療法はまだ確立されていません。多く用いられるのが取り外し式のマウスピースで、音を防ぐとともに歯やあごの負担を減らします。使い続けている間は定期的なチェックが必要です。

 精神的ストレスを減らし、質の良い睡眠をとることや、昼間のかみしめでは意識的に上下の歯を当てないようにするセルフコントロールも大切です。薬による治療は研究されているところです。相談や治療は歯科で行っていますが、医療機関によっては歯ぎしり専門の外来もあります。

(2014年9月28日 読売新聞)


ドライマウス (2014/9/22 福島民友新聞)


 口の中の乾きが気になる

 口の中が乾いて、頻繁に口内炎になったり、口臭が以前より気になったり、食事がおいしくなくなったということはありませんか。このような症状が出たら口腔(こうくう)乾燥症(ドライマウス)という歯科疾患の一つかもしれません。
 原因としては加齢、ストレス、唾液の分泌障害、偏食、喫煙、全身疾患の症状などによる唾液の分泌低下や最も一般的な原因は薬物の副作用が考えられます。全身疾患としてはシェーグレン症候群などが挙げられます。
 シェーグレン症候群は、スウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレン博士によって初めて報告された病気です。症状は眼症状(ドライアイ)や口腔症状(ドライマウス)、その他に全身にさまざまな症状を来たします。
 原因は唾液腺や涙腺を中心とした外分泌腺を標的とする系統的自己免疫疾患として捉えられていますが、直接的な原因は不明です。発病頻度は40~60歳の女性に圧倒的に多く、男女比が1対14で、閉経期以降の女性に多く発病します。
 ドライマウスの治療としては、基本的には対症療法となります。含漱(がんそう)剤(うがい薬)、トローチ、口腔軟膏(こう)、人工唾液、内服薬などがあります。含漱剤にはアズレン、イソジンガグールが用いられます。口腔軟膏はステロイドホルモンと抗生剤を含んだものが使われます。
 口の中が乾いて気になる方は、かかりつけ歯科医に相談することをお勧めします。(県歯科医師会)

止まらぬげっぷやおなら...原因は「呑気症」かも

歯をかみしめる癖ある人は要注意

 おなかの張りを感じ、げっぷやおならがたくさん出る、といった症状に悩まされ、医療機関を受診しても治らない。このような人は、もしかすると「呑気症(どんきしょう)」という病気かもしれない。無意識に唾液とともに空気をのみ込んでしまうストレス性の病気で、歯を食い縛る、かみしめる癖がある人は要注意だ。ベイサイドさちクリニック(横浜市)の小野繁院長に聞いた。

ストレスが主因

 呑気症は「かみしめ呑気症候群」とも呼ばれる。小野院長は「患者のほとんどが、無意識に歯をぐっとかみしめる癖が付いています」と説明する。

 歯をかみしめてしまう習慣は主にストレスによるもので、「仕事が多忙だ」「最近、大きな環境の変化があった」と答える患者が多いという。「人間は歯をかみしめると、反射的に唾液を飲み込みます。その時、一緒に空気も飲み込んでしまうため、頻繁に歯をかみしめる人では胃腸に空気が過剰にたまり、おならやげっぷがたくさん出るのです」(小野院長)

 このほか、吐き気や食欲不振、げっぷやおならで自分が臭うのではないかという強迫感に悩まされる精神的な症状、かみしめる動作による肩凝り、頭痛や眼精疲労、顎やこめかみの痛みなどが引き起こされる場合もある。

 小野院長は「逆流性食道炎や顎(がく)関節症、過敏性腸症候群、うつ病などと間違われる場合も少なくありません」と指摘する。

マウスピースで治療

 治療では、「スプリント」と呼ばれるマウスピースを前歯に装着し、歯のかみしめを防ぐ。マウスピースは、厚さ0.5~1ミリ程度と薄く、色も透明なため、日常生活でも違和感なく使用でき、健康保険が利用できる。

 うつ病、不安障害などを合併している場合は、その治療も同時に行う。「症状が気にならなくなった」と患者自身が実感できれば、基本的に治療は終了という。

 日常生活では、かみしめ動作の原因となるストレスをためないことが最も大切だ。加えて、小野院長は「パソコンなどでうつむき姿勢を長時間続ける、ガムをかむ、早食いなどの習慣は唾液を飲み込む動作を誘発するので注意してください」と呼びかけている。


痛みの感じ方は調節可能?(2014/9/23 産経ニュース)

 同じ刺激を与えても、痛みを強く感じる人とそうでない人がいる。こうした差は生まれつきで変化しにくいとみられていたが、調節可能かもしれないと英ロンドン大などのチームが発表した。

 チームは、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児25組に、熱した器具にどれだけ長く触っていられるかを試験。耐えられる時間に差があった双子では、痛みに関係する遺伝子「TRPA1」で、「メチル化」と呼ばれる現象のパターンに差があることが分かった。

 メチル化とは遺伝子の機能を調節する化学変化で、スイッチのオン・オフに相当する。この変化がどのように起きるかが分かれば、効果的な痛み止め開発につながると期待されるという。

細胞がストレスに反応するための重要な機序が明らかにされ、「Cell」9月11日号に掲載された。

米デューク大学の研究チームによると、細胞は2万5,000種類を超える特殊な3D形状の蛋白を産生しているが、ストレスを受けるとミスが生じ、正常に折り畳まれない変性蛋白が産生されることがある。しかし、細胞はこの変性蛋白の蓄積を認識し、蛋白産生の速度を落とすか、または完全に停止することによって対応する能力を持っていることが、今回の研究で明らかになったという。

この知見は、アルツハイマー病、ルー・ゲーリック病(ALS)、ハンチントン病、パーキンソン病、2型糖尿病などの変性蛋白の蓄積が関与する疾患について理解を深めるうえで、有用なものとなる可能性があるという。

研究著者である米デューク大学医学部教授のChristopher V. Nicchitta氏は、ニュースリリースのなかで、「細胞がストレスに反応する全く新しい機序を特定した」と述べている。

同氏によると、細胞は基本的に、作業を区分けするために蛋白製造機の構造を作り変えている。細胞は工場のように、生産ライン上で蛋白を製造している。それぞれの細胞がDNAの設計図をもち、それがまずメッセンジャーRNA (mRNA)に転写され、そのmRNAが細胞の外側部分へ送られて蛋白に変換される。

しかし、細胞が過熱や飢餓によりストレスを受けると、蛋白が適正に折り畳まれなくなる。このような変性蛋白は警報を発し、その結果、細胞は生産ラインを減速して変性蛋白を除去する。この反応は小胞体ストレス応答と呼ばれる。

「蛋白の産生速度を落とすことができても、時として減速が十分でないことがある。変性蛋白の処理を促す遺伝子を活性化させることができても、変性蛋白が急速に蓄積してしまうこともある。しかし今回、われわれはもっと優れた機序を発見した。この機序ではすべてを効率的に保留状態にすることができる。細胞環境が正常に戻れば、mRNAは待機状態から解放される」とNicchitta氏は説明している。

同氏は現在、ストレス反応時に細胞が利用する機序を決定する因子を探しているという。(HealthDay News 9月11日)

血液型と認知症リスクにわずかな関連がある可能性が、新たな研究で判明した。米国人口の約4%を占めるAB型の人は、加齢とともに記憶障害が生じるリスクが高いようだという。

今回の研究では、45歳以上の被験者3万人超を対象として記憶力・思考力の検査を実施し、約3年後に再検査を行った。被験者のうち認知(精神)のスコアが特に低く、何らかの記憶障害または思考障害があると思われた495人と、スコアが正常であった587人を比較し、血液型の違いについて調べた。なお、年齢・性別・地理的地域については補正を行った。

その結果、血液型がAB型の人は、思考能力の低下が起きる比率がO型の人よりも82%高かったという。

しかし本研究を実施した米バーモント大学医学部教授のMary Cushman氏は、「Neurology」オンライン版に9月10日掲載されたこの知見について、最近の研究を考慮すれば必ずしも驚くものではないと述べている。

AB型の血液は凝血や血管関連症状に影響する可能性があると既に示唆されており、AB型と脳卒中リスクの関連も示されている。脳卒中との関連は、血液凝固第Ⅷ因子の値が高いことが原因のおよそ半分を占めるという。

第Ⅷ因子は血栓や止血に関わる蛋白で、血友病患者ではこの因子が欠損している。この因子が少なすぎると血液が適正に凝固しないが、多すぎると血栓ができやすくなる。

しかし今回の研究では、AB型と記憶障害に関連がみられた理由について、第Ⅷ因子では約20%しか説明できなかった。そのため、ほかにも理由があると示唆される。それが何かは不明だが、Cushman氏は「脳卒中と認知症に共通する危険因子がいくつかあることを考えると、AB型と血管障害との関連が寄与することは考えられる」と述べている。

なお、今回の研究で記憶障害や思考障害がみられた被験者は、喫煙率や、高血圧・糖尿病・心疾患・高コレステロールを有する比率も高かった。

「今回認められた関連は比較的小さなものであり、AB型の人はこの知見について過度に心配する必要はない。血液型にかかわらず、健康的なライフスタイルを目指すほうが重要だ。読書やゲームで脳を鍛えることも大切となるだろう」とCushman氏は指摘している。

研究に参加していない英グラスゴー大学(スコットランド)のTerence Quinn氏も、これに同意している。「本研究は、血液が認知症の予測因子であり、やがて記憶障害を引き起こしうる血液の変化に関連する可能性を暗示している。しかし、喫煙、運動不足、肥満などの他の因子のほうが、認知症リスクをはるかに高くする」

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■歯の健康について関心がある人は8割、女性や高年代層で多い。口腔内で気になるのは「虫歯」の他、「口臭」「歯石、歯垢」「歯に食べ物がはさまりやすい」「歯の着色」「知覚過敏、しみる」「歯並び」など
■口腔内のケアのために使っている製品は「歯ブラシ」が8割弱、「デンタルフロス、糸ようじ」「歯間ブラシ」「歯磨き粉:フッ素入り」「マウスウォッシュ、デンタルリンス」「電動歯ブラシ、音波歯ブラシ、超音波歯ブラシ」などが各2~3割。口腔内ケア製品を持ち歩く人は2割強
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◆歯の健康への関心、口腔内で気になること
歯の健康について関心がある人は79.5%、女性や高年代層で多くみられます。口腔内のことで気になることは「虫歯」(41.9%)の他、「口臭」「歯石、歯垢」「歯に食べ物がはさまりやすい」「歯の着色」「知覚過敏、しみる」「歯並び」が各20~30%台で上位にあがっています。女性の比率が高いものが多く、「歯石、歯垢」「歯に食べ物がはさまりやすい」「歯の着色」「歯並び」は男性を10ポイント以上上回ります。「歯の着色」は女性20~40代、「口臭」「歯並び」は女性10~30代で多くみられます。


◆口腔内の健康・美容のためにしていること
口腔内の健康・美容のためにしていることは、「歯磨きを丁寧にする」「歯科に通う」が各4割で上位2位、「歯周病・歯槽膿漏等の予防効果がある製品を使う」「歯垢除去効果がある製品を使う」「キシリトール入りのガム・タブレット等を利用」が各10%台で続きます。男性20~40代と女性10代では「何もしていない」が各30%台で、他の年代より多くなっています。


◆口腔内ケアのために使っている製品、持ち歩いている製品
口腔内のケアのために使っている製品は「歯ブラシ」(79.2%)の他、「デンタルフロス、糸ようじ」「歯間ブラシ」「歯磨き粉:フッ素入り」「マウスウォッシュ、デンタルリンス」「電動歯ブラシ、音波歯ブラシ、超音波歯ブラシ」が、各2~3割で上位にあがっています。「歯ブラシ」「デンタルフロス、糸ようじ」は、女性が男性を約12~15ポイント上回ります。また、「歯間ブラシ」「歯磨き粉:歯槽膿漏、歯肉炎等の予防」は高年代層、「歯磨き粉:ホワイトニング効果」は女性30代以下、「デンタルフロス、糸ようじ」は女性30代以上で多くみられます。

口腔内のケアのために持ち歩いている製品がある人は2割強です。「歯ブラシ」(14.3%)の他、「歯間ブラシ」「デンタルフロス、糸ようじ」「マウスウォッシュ、デンタルリンス」「電動歯ブラシ、音波歯ブラシ、超音波歯ブラシ」「歯磨き粉:フッ素入り」が上位にあがっています。


◆歯科・美容歯科等で、口腔内のケアで利用したもの、利用したいもの
歯科・美容歯科等で口腔内のケアで利用したことがあるものは、「歯のクリーニング」が36.5%で最も多くなっています。「歯列矯正」「セラミッククラウン」「ホワイトニング」が各4~6%です。「歯のクリーニング」は高年代層で多い傾向です。「歯列矯正」は男性10代や女性30代以下で各1~2割と、他の年代より多くなっています。

歯科・美容歯科等で口腔内のケアで利用したいものは「歯のクリーニング」(37.9%)が最も多く、「ホワイトニング」(18.6%)が続きます。「歯列矯正」「インプラント」「セラミックインレー」「セラミッククラウン」が各5~7%となっています。「歯のクリーニング」「ホワイトニング」は、女性が男性を各11~12ポイント上回ります。


──<< 回答者のコメント >>────────────────────────────
◆口腔内のケアで困っていること (全2,996件)
・インプラント治療が保険が使えない事で非常に困っている。(男性68歳)
・まだ小さい子供がいるので、連れて行くと迷惑になるので、行きたいと思ってもなかなか足が向かない。(女性42歳)
・一度歯科にかかると細かな事で何度も、継続的に通わなければいけなくなるような治療はやめてほしい。(女性28歳)
・歯の裏が磨きづらい。フロスの使い方に自信がない。歯茎を傷つけているような気がします。(女性41歳)
・歯ブラシ、歯間ブラシ、フロス~などケア用品が多く、洗面棚などにきれいに片付けられない。(女性59歳)
・歯医者さんの料金設定。はじめていくところだと値段の目安がわからない。(女性30歳)
・歯医者で行うレベルの歯垢・歯石除去を自分で手軽に行いたい。自分自身の口臭について客観的に判断する手段がない。(男性38歳)
・歯磨きをしっかりしても、時間が経つとすぐにネバネバになり、不快に思っている。いろいろなデンタルリンスを試して使っているが、中々良い商品が見つからない。(男性45歳)

自己負担の減免という制度がある(2014/9/19 読売新聞)

 生活に困ったときに医療を受ける方法。あまり知られていない制度が、まだあります。

 医療機関や薬局の窓口で通常1~3割を支払わないといけない一部負担金(自己負担)の免除・減額・猶予です。

 東日本大震災が2011年3月に発生したあと、被災者・原発避難者の医療は、自己負担なしで行われました。大震災だから超法規的な措置をとったわけではなく、以前から関係の法律に定められている災害時の減免・猶予規定を発動するよう、国が促したのです。

 当初は、国民健康保険や後期高齢者医療で実施した減免の全額を国が負担しました。12年10月から国の負担が8割になったため、宮城県内の自治体は13年度、いったん免除をやめたのですが、財政難になった保険者(保険の運営者)への支援を国が強化したのを受け、14年度から対象範囲を絞りつつ、再開・継続されています。


災害だけでなく、失業、事業の休廃止、不作・不漁でも

 勤め人が加入する健康保険や共済組合の場合、一部負担金の減免・猶予の対象になりうる特別の事情は「震災、風水害、火災その他これらに類する災害により、住宅、家財又はその他の財産について著しい損害を受けたこと」に限定されています(健康保険法75条の2、同法施行規則56条の2)。

 しかし、他の公的医療保険の場合、自己負担の減免は、災害に限りません。

 国民健康保険法44条は「特別の理由がある被保険者」について減額・免除・猶予を認め、どういうケースに適用するかの判断を保険者にゆだねています。

 適用基準が市町村ごとにまちまちで、そもそも要綱や規則を作っていない市町村もあったことから、厚生労働省は10年9月の保険局長通知で、減免した市町村に国が特別調整交付金を出して財政支援する際の基準を示しました。

 そこで示された減免・猶予の対象は、世帯主に次の事情が生じた場合です。

(1)

震災、風水害、火災、その他これらに類する災害により死亡し、 障害者となり、または資産に重大な損害を受けたとき

(2)

干ばつ、冷害、凍霜害等による農作物の不作、不漁、その他これらに類する理由により収入が減少したとき

(3)

事業または業務の休廃止、失業等により収入が著しく減少したとき

(4)

上記に類する事由があったとき


 以上のいずれかの理由により、収入が生活保護基準以下、預貯金が生活保護基準の3か月以下になった世帯について、3か月までの入院に減免を適用するとしています。ただしこれらは目安で、状況により長期の入院や高額の通院治療でも適用はありえます。収入や資産の厳格な調査は必要ありません。保険料を滞納しているときでも適用できます。

 この基準は最低ラインとして、どの市町村でも適用してほしい、これより広い範囲で減免をするのは市町村の自由だ――というのが厚労省の考え方です。

 通常は、国の基準に沿った減免額の5割を特別調整交付金として国が負担します(減免総額が全体の3%以上になった市町村は8割、東日本大震災の当初は10割)。

 後期高齢者医療制度でも、国保とほぼ同様に、都道府県ごとにある広域連合の判断で一部負担金の減免や猶予ができ、国から特別調整交付金が出ます(高齢者医療確保法69条)。

 介護保険制度、障害者介護サービスでも、同じように利用者負担の減免制度があります(介護保険法50条・60条、障害者総合支援法31条)。


自治体によって大きな格差

 厚労省の集計によると、2012年度に行われた国保の一部負担金減免は107万件余り、308億円。そのうち72万件、216億円が東日本大震災関係です。

 問題は、大震災以外の減免の実施状況に、著しい地域差があることです。

 都道府県別に見ると、まず多いのは宮城29万8443件、岩手2万8205件。これは国の定義より広い範囲の被災者や震災関連の生活困窮者に減免したからでしょう。その次は大阪1万4659件、広島2164件、熊本1059件、埼玉612件、神奈川401件の順で、13県は1ケタ、8県はゼロです。

 しかも、大阪の減免のほとんどは東大阪市と八尾市の分、広島は広島市の分です。これらの市は独自の基準を定め、わりあい広い範囲の生活困窮者に減免制度を適用しているからです。

 その一方で、まるで制度を使っていないか、住民に周知していない自治体がたくさんあるわけです。国保の財政を優先して、わざと不親切にしているのでしょうか。

 減免制度は、待っていても適用されず、自分から申請しないといけません。生活に困ったときは、医療機関のソーシャルワーカーなどにも相談して、減免の申請をやってみましょう。認められなかったら、行政不服審査請求や裁判をすることもできます。

 失業による収入の著しい減少も、先に述べたように減免の理由です。解雇や雇い止めだけでなく、病気のせいで職を失ったときも対象になりうるわけですから、利用できる人は意外に多いかもしれません。

 また、今のところ、多くの自治体では、災害と収入が急に減った場合しか、減免の対象にしていませんが、よく考えると、ずっと低所得の人にとって、医療費の定率負担は重いものです。特別な場合に申請して減免を受ける制度だけでなく、収入に応じて自己負担割合を定めるような制度も、検討してよいのではないでしょうか。


誤嚥性肺炎と口腔ケア (2014/9/18 中日新聞)

寝る前のケア重要
厚生労働省の2013年度調査で、日本人の死亡原因の第3位は肺炎です。そのうち高齢者のほとんどが誤嚥(ごえん)性肺炎と言われており、高齢化が進めばさらに罹患(りかん)率が増えると見込まれています。

食物や唾液などが気管に入り込んで起こり、一度引き起こすと何度も繰り返すため治療が難しい。時には口の中の細菌が原因にもなります。健常者でも口の中の歯垢(しこう)1ミリグラム中には、1億以上の細菌が生息すると言われています。歯みがきせずに口の中を不潔にすると細菌が爆発的に増え、唾液と混ざって口臭の原因にもなります。高齢者は薬の副作用や全身疾患の影響で口の中が乾燥しやすいため、さらに汚れをひどくしてしまいます。

 夜間には唾液が知らず知らずのうちに気管に誤って入りこむことがあり、むせない誤嚥とも言われています。この現象は高齢になるほど多く見られ、誤嚥性肺炎の原因のひとつです。そのため寝る前の歯みがきがとても大切です。健常者は抵抗力が強いため、多少の唾液を誤嚥しても問題にはなりませんが、寝たきりや麻痺(まひ)がある人は口腔(こうくう)ケアが上手にできないだけでなく、飲み込みの障害(嚥下障害)がみられ、より誤嚥性肺炎が重篤化しやすいです。

 口腔ケアをすることは手や脳のリハビリにもなります。口の中の汚れを取り除くと刺激によって唾液の分泌を促進し、口の中を清潔に保つことが誤嚥性肺炎の予防に有効です。

人工甘味料 "血糖値下がりにくい"(2014/9/18 NHK NEWS WEB)

清涼飲料水やお菓子などに使われる人工甘味料を摂取すると、糖尿病や肥満のリスクを高める血糖値が下がりにくい状態になることを、イスラエルの研究チームが発表し、人工甘味料の健康への影響を巡って議論となりそうです。

これは、イスラエルの研究チームが18日付けのイギリスの科学誌「ネイチャー」に発表したものです。
研究チームは、マウスにサッカリンやスクラロースなどの人工甘味料を混ぜた水を与え、変化を調べたところ、マウスの腸内の細菌のバランスが崩れ、糖尿病や肥満のリスクを高める血糖値が下がりにくい状態になることが分かったということです。
また、研究チームがヒトへの影響を探るためおよそ380人を調べたところ、人工甘味料を多く摂取する人は少ない人に比べて体重が重かったり血糖値が高かったりする傾向が見られたということです。
研究者の1人は「広く大量に使われている人工甘味料の影響について再評価する必要がある」と指摘しています。
人工甘味料は、カロリーを摂取せずに甘さを加えられるとして清涼飲料水やお菓子に幅広く使われていますが、健康への影響はないとする別の研究もあり、今回の発表を受けて議論となりそうです。

討論 歯磨き、長寿の切符(2014/9/6 読売新聞)

パネリスト(敬称略)
西尾善彦 鹿児島大医歯学総合研究科糖尿病・内分泌内科学教授
中川種昭 慶応大医学部歯科・口腔外科学教授
大竹七未 サッカー解説者、東京国際大学女子サッカー部総監督



命に関わる歯周病

 ――健康寿命と糖尿病などのメタボリックシンドローム、さらに歯周病との関係の重要性が分かってきました。

 中川 糖尿病は血管を傷つけますが、歯茎には細かい血管が多く走っています。血管がもろくなると、病変も治りにくくなるのです。さらに、命に関わる病気になるまでには様々な要因が関わり、かつ多く段階をたどります。

 西尾 この考え方で大事な点は、命に関わる病気になった最も下流で予防しようと思ってもとてもできない点です。上流ですと、歯周病のケアや毎日の歯磨きなどのちょっとした努力で、将来の重大な事態を防げます。皆さんの少しの努力で、命に関わる病気のリスクを上流でせきとめる意味があると考えていただけたらと思います。


 ――会場からの質問にお答えいただきます。「歯周病菌がインスリンの効きを悪くするメカニズムを知りたい。ヘモグロビンA1cより食後高血糖が大事だと耳にしました」

 西尾 歯周病菌、歯周病がインスリンの効きを悪くするメカニズムは炎症反応を介してです。歯周病菌だけではなく、風邪や肺炎、おなかの炎症など菌やウイルスが体の中で増殖すると、人間の体は、それらに反応して炎症物質を出します。この炎症物質がインスリンの効果を減弱させると考えられています。

 ヘモグロビンA1cと食後高血糖を比較すると、合併症に関してより影響があるのはヘモグロビンA1cです。ただ、ヘモグロビンA1cがよくても食後急激に血糖が上がる方がいます。そういう方は心筋梗塞や脳梗塞など大きな血管の病気になりやすいということがわかっています。まず大事なのがA1c、次に食後の高血糖という順番で考えるとよいと思います。

実践講座では東京都歯科医師会付属歯科衛生士専門学校の生徒らがブラッシングを指導した

 

「きちんとかめる」大事

 ――「歯周病は遺伝しますか。総入れ歯ですが口臭は影響がありますか」

 中川 歯周病になりやすい傾向はあると思います。同じ刺激でも炎症性物質が多く出やすい体質ですと、歯周病菌のような炎症を引き起こすものに鋭敏だろうと考えられます。遺伝とは異なりますが、例えば家族でリスクの高い細菌を持っていると、親子や夫婦でうつりやすいので、家族に歯周病の方がいる場合、早めに歯科医院で診てもらうのがよいと思います。

 総入れ歯の口のにおいの元はまず唾液です。それから舌についている舌苔ぜったいもにおいの元となり、歯ブラシで取るとにおいが消えたりします。入れ歯に唾液や汚れがついて、においの元になる場合もあります。入れ歯洗浄剤などを使って、清潔に保つことも大事です。


コーディネーター
南砂(まさご)読売新聞東京本社調査研究本部長

 ――大竹さんにうかがいます。「現役時代の健康管理で、口腔ケア、ブラッシングに気をつけていましたか」

 大竹 トレーニング、休息、栄養が不可欠ですので、食事は気をつけていました。スポーツ選手と歯は切っても切り離せないので、歯のケアは欠かさずしてきました。


 西尾 普段の生活にちょっと気をつけていただくと糖尿病や歯周病は予防できます。それが健康寿命の延伸につながるということを感じていただければと思います。

 中川 やはりきちんとかめることが大切です。今日は歯周病だけに焦点を当てましたが、虫歯や歯周病で歯が欠損してもインプラント、ブリッジ、義歯などでご飯がおいしく食べられるようにすることが、健康寿命の延伸につながると思います。

 大竹 好きなスルメを食べるためにも歯の健康を維持したいと思います。健康寿命を長くできるよう、歯のケアからしていきたいと思います。


嵐・二宮和也、アゴが細いので歯が1本少ない(2014/9/11 OKMusic)

9/7(日)放送の「BAY STORM」(bay fm)。

「裏」のコーナーでのこと。 

リスナーさんの「親知らずのエピソードがあったら教えてください。」というお便りからのお話です。 

嵐の二宮和也くんの歯の話になりました。 

乳歯がなかなか抜けなかったニノは、20歳を超えても乳歯が生えていたそうです。 

また、アゴが細いニノは下の歯が1本少ないそうです。 

下の歯の真ん中の歯が2本のうち1本しか生えてないと歯医者さんに言われたそうですが、「全然不便じゃない」とニノは話していました。 

歯医者さんにも「アゴが細い人や口が小さい人はそういう人がいる。」と言われたそうです。 

ニノは特に気にしていないよう

口の中の痛み (2014/9/8 福島民友新聞)

◇健    康    2014.09.08
口の中の痛み

 状況整理し医師に伝える

 歯や歯ぐきが痛くて歯科医院に行ったとき、どう伝えてよいか困ったり、原因不明と言われたことはありませんか。ひと言で痛いといっても、その原因は一つではありません。痛みの原因を探るためには〈1〉いつから痛いのか〈2〉どこが痛いのか〈3〉どんな痛みか〈4〉持続時間と強さ〈5〉時間的特徴〈6〉頻度〈7〉増悪または軽減因子の有無〈8〉随伴症状の有無―を把握する必要があります。
 痛みの種類は、鈍痛(にぶい、締め付けられるような痛み)・鋭利痛(針で刺されるような痛み)・拍動痛(ドクンドクンとした痛み)・誘発痛(刺激で痛い)・咬合(こうごう)痛(かむと痛い)・打診痛(たたくと痛い)などと表現されます。
 痛みの持続時間は痛くなってから一度治まるまでを、秒・分・時間・日で表します。強さはNRS(10段階中の位置)やVAS(10センチの線上に×印を付けてその長さを測る)などの方法で表します。時間的特徴は朝・就寝時など痛くなる時間帯を、頻度は1日や1週間に何回痛みを感じたかなどと表します。増悪因子とは、例えば「温めると痛くなる」などのことで、軽減因子とは「冷やすと楽になる」などです。随伴症状とは痛いときに一緒に出てくる症状のことで、例えば歯が痛くなると鼻水やせきが出るなどという状況をいいます。
 歯科医院を受診したとき、状況を整理して伝えていただけると、正確な診断に基づいた処置を行うことができ、早く痛みを取り除くことが可能となります。

 単に長生きするのではなく、健康で長生きする"健康寿命"が注目されている。高齢になっても元気でいるにはどうしたらよいのか―。国立健康・栄養研究所(東京都)健康増進研究部の宮地元彦部長は、健康で長生きするには1日40分以上運動することが大切で、「毎日買い物に行く程度の、ちょっとした心掛けで効果が期待できます」と助言する。

農作業や庭仕事も

 厚生労働省の「健康づくりのための身体活動基準2013」では、65歳以上の高齢者は毎日40分、生活の中で体を動かすことを勧めている。

 宮地部長は「高齢者は必ずしも運動をする必要はありません。家事や買い物など、日常生活の活動で十分。農作業や庭仕事、地域の子供の通学の見守りなどもよいですね」と話す。それぞれの活動は数分間ずつでも、合計で1日40分以上になればOKだ。

 ただし、下記の点などに注意が必要だ。

  • 急に頑張らず、少しずつ活動量を増やす
  • 暑い日や雨の日、体調が悪い日などには無理をせず休む
  • 持病がある人はかかりつけ医にアドバイスを求める

 まずは、いつもよりも10分間だけ多く活動してみるという「プラス10」の考え方で取り組むことを宮地部長は勧める。例えば、普段全く家事をしない人は、お茶を自分でいれたりゴミ出しをしたりすることから始めるとよい。

認知症のは症も遅くなる

 こうした活動で認知症の発症を1年遅らせることができ、さらに、1日40分の目標を達成すれば、達成していない人に比べて2年も発症が遅くなるという。

 40分の日常活動の中に運動も取り入れるといっそう効果的だ。宮地部長は、高齢者の運動にはストレッチを勧める。膝や腰周りの筋肉をゆっくり曲げたり伸ばしたりする。コツはおなかで息をしながらゆっくりと痛くない程度に1カ所に30秒行うこと。膝や腰の痛みを和らげ、血圧を下げるほか、気分を安定させる効果がある。

 「毎日を活動的に過ごすには、家族や近所の人との付き合いを良くすること。買い物や行楽などに誘われたら、面倒がらずに行ってみましょう。特に男性は、会社を退職すると社会とのつながりが薄くなる人が多いのです。自分からも旅行に誘うなど積極的に関わって」と宮地部長はアドバイスしている。


スポーツに欠かせない歯 (2014/9/5 読売新聞 一部改編)

元サッカー女子日本代表 大竹七未さん

おおたけ・なみ サッカー解説者、東京国際大女子サッカー部総監督。元サッカー女子日本代表選手。W杯やオリンピックでFWとして活躍した。


 現役時代から歯のケアへの意識はとても高いです。特にサッカーは常に歯を食いしばるスポーツです。シュートを打つ時も口を開けてはできません。試合中に口を開けるのは、シュートが決まって喜ぶ時と、がっかりした時ぐらいでしょうか。サッカー選手は一般に、歯に対しての意識がすごく高いと思います。

 現役時代から気をつけてきたことは、まず虫歯にならないことです。海外遠征すると2~3週間は帰国できないことが多いです。遠征中に痛みが出ると困るので、遠征前には必ず歯科医院に行くようにしていました。歯の健康とスポーツは、切り離せないと思っています。

 2001年に現役を引退しましたが、現役時代からの習慣で歯の健康への意識は高い方だと思います。歯ブラシの使い方や、デンタルフロス(歯間の汚れを取る細い糸状の器具)や歯間ブラシでのチェックも気をつけています。定期的に歯科医院に行って、ブラッシングしてもらったりしています。かかりつけの歯科医とは現役時代から、もう20年のつきあいになります。

 私の歯の食いしばりはとても強いらしく、歯が欠けてしまったほどなんです。なので、歯科医の先生にしっかりと指導を受けています。かみ合わせも気になります。また、歯周病にならないよう、歯茎がやせないためのケアを教えてもらっています。

 今、虫歯はありませんが、今後も虫歯にならないよう、歯磨きに気をつけ、歯間ブラシやデンタルフロスを使ってケアしていきたいと思っています。丁寧なケアを継続することが大切だと思います。しっかりケアをしていないと、おいしい物も食べられないと思いますので。歯科医の先生に定期的に足を運んでコミュニケーションを取りながら、歯を大切にしていきたいです。


医療相談 インプラント手術で白い膜(2014/9/7 読売新聞)

インプラント手術で白い膜

 インプラント手術の後、口の中が渇きピリピリして、インプラント側の頬と舌の裏に白い膜が出来ました。金属のアレルギー検査で一部の金属に陽性反応が出ました。インプラントを外せば症状は治りますか。(66歳女性)

アレルギーなら金属除去も

 松村 光明 松村歯科医院院長(東京都世田谷区)

 症状から、扁平へんぺい苔癬たいせんの可能性があります。手や足、口の中や唇、外陰部などに赤紫色の発疹ができる病気です。

 この病気のはっきりとした原因は不明ですが、最近は金属アレルギーが関係した例が報告されています。

 扁平苔癬の治療ではまず、ステロイドの塗り薬やビタミン製剤などを試みるのが一般的です。

 金属が原因であればその金属を除去すれば、症状の改善が望めると思います。

 金属アレルギーと診断されていて、さらに口の中にアレルギーの原因(アレルゲン)となる金属があれば、その金属の除去を試みる価値はあると考えられます。

 インプラントは、一般的に三つの部分に分けられます。人工歯根と呼ばれる骨に埋まっている部分と、かぶせ物、そしてこの二つをつなぐ金属製のネジです。

 人工歯根は一般的に、アレルギーの心配のないチタンという金属を使っています。チタンのアレルギー検査が陰性ならば、骨に埋まっている部位は取り外す必要はありません。

 しかし、かぶせ物が金属製ならば、アレルゲンとなる金属が使われている可能性があります。また、つないでいるネジの成分も問題となることがあります。これらの金属の成分については、処置を行った歯科医に確認する必要があります。

 扁平苔癬は、治るまで長い経過をみる必要があります。焦らずに、かかりつけ医に相談してください。

 手のひらや足の裏に膿の入った水ぶくれ(膿疱=のうほう)ができる皮膚の病気を、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)という。最初はかゆみを伴い、かさぶたとなって皮膚の表面(角層)が剥がれ落ちる。中年の女性に多い皮膚炎で、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すのが特徴だ。聖母病院(東京都)皮膚科の小林里実科長は「症状が一定でないため、診断がつきにくく、病名を知るまでに何年も要したという患者さんもいます」と話す。

水虫と似るが他人にうつらない

 掌蹠膿疱症は症状が水虫によく似ているが、膿疱の中身に水虫の原因となるカビ(白癬菌=はくせんきん)や細菌などがないため、他人に感染させることはない。かゆみや剥がれかけた皮膚が気になることから、患部を触ってしまい、炎症を悪化させる要因となる。また、患者の2~4割で鎖骨や胸の真ん中、関節などに激痛が発生し、日常生活もままならなくなることがある。

 歯や扁桃(へんとう)に、細菌感染による慢性的な炎症(病巣感染)が見られることや、喫煙習慣が患者の多くに共通するほか、歯科金属アレルギーが関わるケースもあり、それらが何らかの原因と考えられている。

 「喫煙歴、過去の慢性扁桃炎があるかないか、歯科治療の状況など、総合的に検査・診断の上、必要な治療を開始します。歯科病巣などがある場合、治療しないと、皮膚症状も関節炎もなかなか治りません」(小林科長)

 塗り薬には、主にステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬が使われ、その際は患部にすり込まず表面に軽く塗るとよい。また、病巣感染が関わることからマクロライド系の抗生物質や、一部の患者ではビオチンというビタミン剤が、症状を軽減させることがあるという。

 小林科長は「手のひらや足の裏は角層が厚いため、回復に時間がかかります。皮膚を触るほどよくなく、乾燥状態もいけません」と注意。「薬を塗った後は保湿し、アトピー性皮膚炎用のチューブ式包帯などで手足を覆うとよいでしょう。剥がれる皮膚が見えなければ気になることもありません」と助言する。症状が疑われたら、まずは皮膚科専門医の受診を。


特別講演 口内細菌、歯科医で除去 (2014/9/4 読売新聞)

歯周病は35~40歳から急激に増えます。歯周病は感染症で、原因となる細菌が何種類かいると考えられています。歯と歯茎の境目を舌でなめて、ぬるっとしたところがあれば細菌です。細菌が増えると歯茎に炎症が起きます。すると、普段は約1ミリの深さの歯と歯茎の隙間にポケットができます。ポケットが2、3ミリと大きくなり、細菌がたまりやすくなります。歯周病を起こす細菌は酸素が苦手で、ポケットの中は増えやすい環境です。やがて歯を支える骨が溶けていきます。

 歯周病菌は夫婦や親子間でうつります。ただ、細菌がいるからといって、すぐに悪くならないと言われています。加齢や糖尿病、肥満、喫煙、歯ぎしりなどの要因が組み合わさると、歯周病になりやすく、悪化しやすくなります。

 体調が悪いと歯茎が腫れる方がいますが、これは異物を食べて感染を防ぐ白血球の働きが落ちるためです。免疫力が落ちると、普段はおとなしくしている細菌が悪さをするのです。このため、体調が悪いと歯周病になりやすくなります。ストレスも免疫力を弱めると考えられています。

 たばこも要因です。たばこは口腔がんのリスクも高めます。これは直接、口の中に何百という有害物質が入るためです。

 さらに、糖尿病などのメタボリックシンドロームとの関係が深い。メタボリックシンドロームとは内臓脂肪型肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症などです。歯周病菌は全身に影響することがわかってきています。糖尿病のほか、細菌性心内膜炎や動脈硬化、低体重児出産、関節リウマチ、誤嚥ごえん性の肺炎、ぜんそくが歯周病と関わっているのです。

 糖尿病の患者さんは歯周病になりやすく、治りにくい。一方、歯周病がある患者さんが実は糖尿病だったことがあります。歯周病と糖尿病の両方向の関係があるのです。

 歯周病と糖尿病を持つ患者さんで歯周病治療をすると、内科医が薬を出したのと同じぐらいヘモグロビンA1cの値が下がることがあります。まず口の中をチェックし、歯周病があれば治療することで糖尿病をよくすることができるかもしれないと言われています。

 歯周病は、普段からブラッシング力を高めて歯磨きをきちんとすることで、かなり予防できます。ですが、いったん深いポケットができると歯磨きだけでは歯周病菌を取りきれないので、歯科医の出番になります。悪い所がなければ歯科医院でプロに機械を使って定期的にクリーニングしてもらうとよいと思います。先端がゴム製の機器で、研磨剤を使って行います。これは意外と気持ちがいいです。

 自分で磨く際、歯ブラシはヘッドが小さめのシンプルなものがおすすめです。毛先を歯面に直角に当て、丁寧に磨くことです。歯ブラシで届かないところは、デンタルフロスや糸ようじを使うと効果的です。歯周病で歯茎が下がったり、上がったりして隙間が大きい場合は、歯間ブラシを有効に使うことが大切です。細菌は唾液にもたくさんいますし、舌の上の舌苔(ぜったい)も細菌です。ほおの粘膜にもたくさんついています。デンタルリンスを併用すると、歯周病になる頻度が下がるというデータが出ています。

 100%きれいに磨くことは簡単ではありません。ですので、毎日のブラッシング力をつけることが大事です。さらに、相性のいいかかりつけ歯科医をぜひ見つけていただき、プロの目でチェックしてもらうことが大切です。


目覚めの口臭ラボ_メイン
見た目や性格すべてが完璧な恋人。でも、一緒に眠りについた翌朝、相手の目覚めの口臭が気になって100年の恋も冷めてしまった、なんて笑い話はよく耳にしますよね。しかし、ただの笑い話で済まない場合もある口臭の問題。身だしなみと同じく、寝起きは誰でもいちばん油断しているタイミングですが、起床直後の口臭は1日の中で最もニオイがキツいと言われています。「いやいや、自分は大丈夫。だって毎朝パートナーと寝起きで"おはようのチュー"してるもんね」という方がもしいれば、これから紹介する動画をご覧になっても、果たして同じことが言えるでしょうか?

口腔細菌 増殖(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=dkLm5C4dqcY

目覚めの口臭ラボ_1
目覚めの口臭に関する正しい知識の発信や、口臭の対策法などを紹介している"目覚めの口臭予防ラボ"では、目覚めの口臭の原因である"口腔内細菌"増殖の再現実験を実施。約700種類と言われるほどのさまざまな細菌が、眠っている間に口の中で増殖する様子を伝えています。

目覚めの口臭ラボ_2
寝起きの口の中は細菌が最も増殖した最悪の環境に。動画には、"何だか凄くたくさんいる"ということだけはとにかく伝わってくる、画面いっぱいに増殖した細菌の姿が。朝、起きたときに口の中がネバネバしていたり不快感などがある場合には、何らかの口臭が発生している可能性があります。細菌といわれてもなかなかピンときませんが、こうして視覚的にその存在を認識してしまうと、何だか口の中がゾワゾワする感覚で気持ち悪くなってきました......。でもこれ、みなさんの口の中と同じ環境ですからね。他人事ではないですよ!?

細菌がワーっと増殖する様子がよく分かる、微速度撮影した動画も公開されています。

口腔細菌の増殖 微速度撮影(YouTube)
http://youtu.be/1uD3eeqynE0

目覚めの口臭の原因は?

強いニオイのものを食べたわけではなく、口の中の汚れも病気もないのに、目覚めると口臭が気になるのはなぜでしょうか? 口の中の細菌が増殖するのは、睡眠中に唾液の分泌量が減ることで、歯周病菌やムシ歯菌などの"嫌気性細菌"が繁殖しやすい状態を作っているためです。口の中のタンパク質成分を嫌気性細菌が分解し、口臭の原因物質である"揮発性硫黄化合物(VSC)"をたくさん作るため、ニオイが強くなってしまいます。揮発性硫黄化合物(VSC)の代表が、卵が腐ったようなニオイの硫化水素、魚や野菜が腐ったようなニオイのメチルメルカプタン、生ゴミのようなニオイのジメチルサルファイドなどのガス。これらが睡眠中にどんどんと繁殖していることを考えたら、口臭が不快に感じるのは当然のことだと分かります。

目覚めの口臭対策は?

目覚めの口臭が強くなる原因が、睡眠中に起こる口の中の細菌増殖だと分かりました。その細菌増殖を助長しているのが、唾液の分泌量の減少だということも分かりました。それを踏まえ、目覚めの口臭を抑えるにはどうしたらよいのでしょうか? 目覚めの口臭予防ラボによると、少しでもさわやかな朝を迎えるためには、やはり日々の口内ケアが大切とのこと。基本中の基本ですが、細菌の増殖が始まる直前、つまり寝る前に歯を磨くことで歯垢や汚れを取り除き、ニオイの元となる細菌を減らしておくことが最も重要なようです。

口腔内細菌が増殖する様子を、勇気をもってご覧になったみなさん。寝る前にはこの動画のことを思い出し、入念な口内ケアに努めましょう。「こんな動画見せやがって、夢の中でも細菌が増殖して寝起き最悪だったよ!」という苦情は受け付けませんので、ご了承を。

目覚めの口臭予防ラボ:
http://morning-breath.jp/


 岡山大学の工藤値英子助教・高柴正悟教授らによる研究グループは、歯周病細菌の一つであるポリフィロモナスジンジバリス菌に対する免疫抗体が多い患者は、動脈硬化に関わる悪玉コレステロールの値が高いことを明らかにした。

 これまで、歯周病が動脈硬化に関連することが指摘されてきており、マウスを用いた実験では、歯周病細菌の感染が脂質代謝に影響することで動脈硬化を悪化させることが示されていた。

 今回の研究では、平均年齢60歳の男女各45人の血液成分を調べたところ、歯周病の原因細菌の一種であるポリフィロモナスジンジバリス菌に対する免疫グロブリンGの値が高い患者では、悪玉コレステロールである低比重リポタンパク(LDL-C)の値が高いことが分かった。

 これまで歯周病が影響を与える疾患として、動脈硬化、心血管障害、糖尿病などが考えられてきたが、今回の研究成果によって、ポリフィロモナス ジンジバリス菌の感染度を血液で検査することの有用性が示された。

 今後、研究チームの検査方法で歯周病との関連を調べることで、これらの疾患の原因解明につながると期待される。また、成人のほとんどが罹っている歯周病の重症度を調べる検査指標として使用することで、適切な治療を行うことができるという。

 なお、この内容は日本の英文歯科学雑誌「Odontology」に掲載された。

 加工食品の商品開発に携わった研究者の中で私が最も心を動かされた人物は、おそらくロバート・リンだろう。1980年代、スナックメーカー大手フリトレーの研究者として輝かしい実績を残した人物である。塩分には依存性があると考え、現在は低塩分食を心がけている。その彼が、商品開発における塩分依存の状況を変えるためにもっとできることがあったはずだと悔いている。「人々にほんとうに申し訳なく思っている」と彼は私に言った。

 塩分・糖分・脂肪分に対する加工食品業界の依存度を下げるにはどうすればよいのか。その方法を見つけだすことによって、健康的な食品を求める消費者の声に対応できるよう、彼らはかつて勤めた企業に働きかけている。

 連邦政府職員をはじめ、食品政策の見直しに取り組む人々もいる。彼らの支持を集めつつある一つの案は、加工食品に流れている莫大な補助金を新鮮な野菜や果物に振り向けるというものだ。果物や野菜はクッキーやチップスより値段が高い。自分と家族の健康のために良い食生活を送ろうとすれば、高い値段を払って食品を買わなくてはならない。

■最終的な選択権はわれわれの手にある

 私が最近、強く思うのは、高校の家庭科の授業を立て直してはどうか、ということだ。つまり高校生たちが、買い物や料理のしかたを学び、健康的な食生活を身に付けられるような授業を行ったらどうだろうか。

 『フードトラップ』では、よりよい食品を求める消費者、食品企業に対して高収益を求めるウォール街、消費者にも株主にも喜んでほしいと願う食品企業という、三者の衝突を描いた。戦闘の犠牲になっている人々がいる。解決を急がなくてはならない。医学研究者たちが特に危機感を抱いているのは、肥満年齢が下がっていることだ。10代にして、まるで40代のような動脈硬化がみられる子どもたちがいる。

 食品業界がなぜこれほど塩分・糖分・脂肪分に頼るのか。この三つの成分は安い。そして互いに補い合う。この三つの成分は、不自然な食品に強大な力を与えている。

 業界が使う戦術の中には、一見それとはわからない巧妙なものもある。たとえば、CMや店頭でいかにも本物らしく演出される音や香り。レジのすぐ近くに置かれたソフトドリンクの棚。目の高さに置かれた、利益率が最も高く健康に最も悪い一部の商品。逆に、全粒粉の小麦粉や無添加のオーツ麦といった基本的な食品は最下段、新鮮な果物や野菜は店の端のほうに追いやられていることがある。こうしたさりげない戦術を知っておくことが鍵だ。

 しかも、加工食品は魅力を最大限に高めるという意図のもとで開発されている。いや、緻密な計算のもとで設計されていると言うほうが適切だろう。売り場を通りかかってつい手に取ってしまったが最後、われわれは次回もその味をしっかり覚えている。そして何より、加工食品の原材料とその配合は、熟練の科学者や技術者たちが計算しつくしたものだ。知っておくべき最も重要なポイントは、食料品店の店頭に偶然の要素は一つもないということである。すべては目的に沿ってなされている。

 原材料、心理トリック、マーケティング手法などはどれも、商品をカートに放り込ませることを狙ったものだ。向こうは塩分・糖分・脂肪分を手中にしている。しかし、最終的な選択権はわれわれの手にある。何を買うかを決めるのは私たちだ。どれだけ食べるかを決めるのも私たち消費者である。

 食品産業はさまざまなトラップを仕掛けてくる。その仕掛けを知っていることが、自分たち自身を守る力となるはずだ。

マイケル・モス
 『ニューヨーク・タイムズ』記者。カリフォルニア州ユーレカ生まれ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ニューヨーク・ニュースデイ』などを経て現職。2010年に食肉汚染の調査報道でピュリッツァー賞を受ける。1999年と2006年にも同賞のファイナリストとなった。コロンビア大学大学院でジャーナリズム学准教授なども務める。ブルックリン在住。

 お菓子を食べはじめたら、途中でやめられなくなり、気づいたら一袋を一気に食べてしまった──。そうした経験は誰にでもあるだろう。実は、加工食品のグローバル企業は、消費者が自社の食品を買い続けるよう、さまざまな罠(トラップ)を製品に仕掛けているという。『ニューヨーク・タイムズ』紙記者のマイケル・モス氏は、近著『フードトラップ』で、長期的には健康をむしばむ可能性があることを承知で、消費者をひっかける製品を次々と世に送り出す加工食品業界の実態を暴いた。著書の舞台は米国だが、登場するのは世界を市場にしている企業ばかり。当然、日本も無関係ではいられない。2010年に食肉汚染報道でピュリッツアー賞した敏腕記者モス氏が、無防備に加工食品を利用する消費者に警鐘を鳴らす。

 『フードトラップ』は大手食品企業の陰謀を臭わせる場面から始まる。しかし、調査を進めるにつれて、私は大手加工食品メーカーによる陰謀を感じることが少なくなった。個々の企業は、可能な限り魅力的な商品を作って売ることを目指しており、そのために各社各様の強力なモチベーションを持っている。

清涼飲料水の含まれる糖分は体に認識されにくいため大量に摂取しても体からストップがかかりにくい(写真:Getty Images)

清涼飲料水の含まれる糖分は体に認識されにくいため大量に摂取しても体からストップがかかりにくい(写真:Getty Images)

 新製品開発で業界の伝説的存在となっている科学者、ハワード・モスコウィッツ。彼は、炭酸飲料「ドクターペッパー」の新フレーバー開発の過程を詳しく話してくれた。原料配合がわずかずつ異なる何十ものサンプルを用意し、消費者を集めて試飲会を繰り返し、高等数学を駆使して、完璧な糖分量を見つけ出す。そのポイントにぴたりと合わせて製造すれば、飛ぶように売れる――彼はそれを「至福ポイント」と名付けた。

 私は、本書執筆のための調査中に、機密扱いのさまざまな業界記録を入手した。そこには、食品メーカーが綿密な計算のうえで原材料に塩分、糖分、脂肪分を使いこなしている様子がありありと示されていた。

■脳がカロリーを感じにくい奇跡のスナック菓子

 ポテトチップなど塩味の利いたスナック類では、使われる用語までもが華々しく、また意味深長だ。ある科学者は、パフ状のコーンスナック「チートス」を「奇跡的な創造物」と評した。欲しくてたまらなくなるような特徴を何十も備えていて、そのひとつが「カロリー密度消失」という現象だという。チートスは口の中で溶ける。すると脳はカロリーが消え失せたと勘違いしてしまい、「おいマイケル、そろそろ食べすぎだよ」という信号を発しない。

 こうした科学者たちは、加工食品に対する消費者の依存が高まってしまったことに対して、何らかの遺憾の念を表明した。この点では、業界側の言い分にも一理ある。1980年代以降、いつ、どこで、何を食べてもよいという風潮が、「一夜にして」と言えるほどのスピードで広まった。人々の気軽なスナック習慣は、大手食品企業にとって願ったりかなったりだった。