口腔ケアは健康維持の鍵 糖尿病などの全身疾患悪化や肺炎防ぐ(2014/11/26 新潟日報ネット)

口腔(こうくう)ケアにより口の中をきれいにして歯周病を予防すると、糖尿病などの全身疾患の悪化や高齢者の誤嚥(ごえん)による肺炎の発生を防ぐことは徐々に知られるようになった。最新のデータでは、入院患者への積極的口腔ケアで在院日数や合併症を減らせることなども分かり、口腔ケアが命に関わっていることがますます明らかになってきた。日本歯科大新潟生命歯学部の田中彰教授(口腔外科)は「今や口腔ケアが全身の健康維持・増進の鍵になりつつある」と話す。

 歯科領域と全身疾患の関係が分かってきたのはごく最近の話だ。1999年の英医学誌ランセットに口腔ケアで高齢者の肺炎を減らすことができると初めて報告したのは日本の歯科医だった。

 「現在は外科や泌尿器科など、口の中とは関係なさそうな領域でも口腔ケアを実施する病院が急増している。在院日数や合併症を減らし(感染を予防)、患者の回復を早めることが分かってきたからだ」と田中教授。

 従来、歯科と医療の領域は別々で、双方が関連するデータが得られなかったが、肺炎を減らせるという指摘以降、医療者側にも口腔ケアの重要性が認識され始めた。

 「自分でも確かめるため、脳梗塞や脳卒中、がんなどの入院患者を抱える新潟市内の病院で、専門的な口腔ケアをした群としない群に分けて調べてみた。ケアをした群では、明らかに体を異物から守る白血球数が少なく、体内の炎症を示すCRP値も低く、発熱も少なかった」と説明。総タンパクやアルブミンも増加し、栄養状態改善を示したという。

 歯周病では、口内の歯周病菌などの病原菌が歯と歯茎間の溝から血液中に入り、全身を回って糖尿病や心臓病を悪化させることが分かっている。

 2012年度の診療報酬改定では、手術前後の口腔ケアが健康保険で認められ、歯科チームとの医療連携が進み、全国の病院で推進されることになったという。

 昨年11月の中央社会保険医療協議会に提出された資料によると、千葉大病院の入院患者を対象とした口腔ケア実施群と非実施群の在院日数を見た比較では、消化器外科で実施群29日に対し、非実施群は42日。在院日数を13日間も減らせた。

 同じく心臓血管外科では29日対39日、小児科84日対135日、血液内科96日対108日と在院日数で大差が出た。抗菌薬の投与期間やCRP値でも明らかな改善が示され、口腔ケアの重要性が裏付けられたという。

 病院で口腔ケアが必要とされるのは、手術前後の人、集中治療室(ICU)に入っている人、がん患者はじめ、脳梗塞、臓器移植、血液透析の患者など多岐にわたる。

 「問題は、病院で行われた口腔ケアが在宅医療や外来通院、転院、また慢性期や介護状態へ移行したときに速やかに継続、移行していけるかだ。今やライフステージの全段階で専門的、日常的口腔ケアが必要とされることが分かってきた」と指摘。

 さらに、大災害の発生時の口腔ケアも特に重要だという。阪神大震災では肺炎による震災関連死が急増し、避難住民の口腔ケアの重要性が明らかになったからだ。


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このページは、Uクリニック竹内歯科が2014年11月26日 16:51に書いたニュースです。

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