脂がのったサンマにマツタケ、サツマイモ、クリやナシ...。おいしいものが多い季節。つい食べ過ぎて、体重が気になる人もいるのでは。そんな「食欲の秋」には、医学的な裏付けもあるという。食欲は自分でコントロールできると唱える専門家も。太りにくい体をつくり、秋の味覚を楽しみたい。 (発知恵理子)
「秋は、全身のさまざまな器官の基礎代謝が高まる。腸などは夏よりも動きが良くなり、空腹を感じやすい」。虎の門病院(東京都港区)内分泌代謝科医長の宮川めぐみさんは、こう話す。
夏の暑さに慣れた体が秋の冷たい空気にさらされると、人は体温を保つために体内でより多くの熱を生み出そうとする。生命を維持するエネルギーである基礎代謝は上昇し、内臓などもよく動く。このため食べ物を多く必要とし、おなかもすくというわけだ。
「もちろん、おいしい食べ物が豊富で、夏の暑さから解放されることなどもある。さまざまな要素が連鎖的に反応して食べ過ぎ、太る」と言う。
脳内の神経伝達物質の一つで、精神の安定をもたらすセロトニンの不足も一因とされる。満腹感を与え、食欲を抑制する働きもあるからだ。セロトニンは日光を浴びることでも増えるが、秋からは日照時間が短くなる。不足すると、食べ過ぎやうつ病、不眠症を引き起こす原因になる。
食べ過ぎてしまったら「翌日はできるだけ小食に。午前中に水を飲んで、よく排尿すること」と話すのは、漢方専門医で山内クリニック(相模原市)院長の山内浩さん。ただ「食べ過ぎたという実感がない人も多い」と指摘する。朝起きて両手を握り、前日より力が入らずに腫れぼったく感じるようなときは、食べ過ぎの兆候だという。
◆運動し、空腹感を抑制
食欲とうまく付き合うには。「あなたは半年前に食べたものでできている」の著書がある食欲コンサルタントの村山彩さんは、「『正しい食欲』を取り戻せば、好きなものを好きなだけ食べても、健康的で太らない体を手に入れられる」と話す。
その方法とは、健康な人であれば、無理のない範囲で「ランニングなど二十分以上、汗をかく運動」をしてから「一汁三菜などバランスの良い食事を二回続けてとること」。これを「二週間のうちに三セット繰り返す」。
「ポイントは、運動が先。順番を間違えないでほしい。食べたくなったら走るなどして『体の大そうじ』から始めると、普段より野菜が食べたくなったり、脂っこいものが欲しいと思わなくなったりする」と村山さん。
無理して食欲を抑えるのではなく、運動を取り入れることで自然と食べたいものが変わっていくという。「自分の体は食べたものがつくる。何をどう食べるかは、どう生きるかと同じくらい重要」と力を込めた。