虫歯は正しくは「う蝕」という。口の中にいるミュータンス菌が砂糖を餌に歯垢(しこう)を作り、そこでできた酸が歯を溶かすことで発生する。
おとなに多い「二次う蝕」とは、治療済みの歯に詰めたものの周囲に起きる虫歯のことだ。治療から長い時間を経て詰め物と歯との間に隙間ができ、歯垢がたまりやすくなることが原因になる。
もう一つの「根面う蝕」は、歯と歯茎との境目にできる虫歯。歯周病や歯の磨き過ぎで歯茎が下がると、エナメル質に覆われていない歯根が露出する。歯根を覆っているセメント質は間もなく取れ、軟らかい象牙質がむき出しになる。この露出部分は弱い酸でも溶けてしまうため、虫歯になりやすいのだ。根面う蝕は、その発生のメカニズムから、特に高齢者に多いのが特徴となる。
若い頃に治療済みの歯がある人や歯茎が下がってきている人は、こうしたおとなの虫歯ができるリスクが高いといえる。
さらに、おとなの虫歯には厄介な面も多い。「歯のエナメル質が成熟しているので、虫歯になっても進行が遅く、痛みをあまり感じないままじわじわと進みますし、二次う蝕の場合には過去の治療で神経を抜いた歯は痛みを感じません。気づいたら虫歯がかなり進行していた、というケースが少なくないのです」(宮崎さん)。
また、根面う蝕は歯根の周りで輪状に進むため、ほかの虫歯に比べて治療の難易度が上がる。