えっ私が!? 睡眠時無呼吸症候群(中) 骨格が原因で根治せず(2014/11/7 東京新聞)

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 肥満でもない私(56)がなぜ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)になったのだろう。

 「あなたの場合は、あごが小さいことが原因でしょう」。主治医の中沢英樹・中沢プレスセンタークリニック院長の診断だ。あごが小さいのは喉までの奥行きがなく、もともと気道も狭いということ。加齢で筋肉が緩んでくるのに従い、発症しやすくなるという。

 そしてSASを放置しておくことは、確実に寿命を縮める。就寝中は一時間に十七分しかまともに呼吸していなかった私。そんな状態で健康を損なわないはずはない。少ない酸素を全身に巡らそうとすれば、心臓や血管に大きな負担がかかる。体へのストレスはホルモンや自律神経のバランスも崩す。長年の悩みである夜間頻尿も、こうしたことから起きていたようだ。

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 SAS治療が専門の虎の門病院(東京都港区)睡眠センターの成井(なるい)浩司センター長(58)によると、SASは高血圧、心筋梗塞、脳梗塞などを招く元凶。患者は健康な人に比べ二~三倍もそれらの病気になりやすい。米国ではSASの高齢者の死亡率は二・七倍との統計もある。私もあと十年足らずで六十五歳以上の仲間入り。以前から血圧も高めだった。「早死に」のリスク十分だった。

 診断された当日、クリニックから渡されたのはCPAP(シーパップ、持続陽圧呼吸)装置だ。高さと幅が約十センチ、奥行き約二十センチの本体に、長さ一・八メートルのホースがつながれ、鼻に当てるマスクとヘッドギアがつく。本体の背面から取り入れた空気に圧力をかけ、マスクから送り出す仕組み。これを装着して眠れば、空気圧で気道を押し広げてくれるという。

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 肥満だったら痩せればSASは改善するかもしれない。しかし、顔の骨格と加齢のせいだとしたら根治はない。中沢院長から「目が悪くなった人が眼鏡を掛けるのと同じ。治療器具を使い続けるしかありません」と告げられた。

 別室でスタッフに装置の使い方を教えてもらう。試着姿はものものしく、どこかの軍の毒ガス部隊かカルト教団の信者のよう。そのまま横になれば、瀕死(ひんし)の重病患者に見える。使い勝手だが、マスクから強い風が吹き出て、息を吸うのはいいがうまく吐けない。口を開けたら口から空気が漏れ出す。今度は息が吸えず、水面で苦しがる金魚のように口をパクパクさせていた。「口を閉じて自然に呼吸を」と言われ、やり直すと、息を吐く際には自然に空気の勢いが弱まることが分かり、ようやくこつがつかめた。

 しかし、これを着けて眠れるのだろうか。その夜準備を整え、緊張しつつ布団に。目を閉じる。呼吸は慣れたものの、「スーハー」という、ダース・ベイダーみたいな呼吸音が耳元に響いて気になる。頭と顔に密着するベルトやマスクも暑苦しい。「たいへんなことになったな...」。沈み込む気分とともに眠りに落ちた。 (白鳥龍也)

 <SASの患者数> 顔が長くて平らな日本人は、顔の骨格上も欧米人と比べてSASになりやすい。近年はさらに、食生活の変化などで肥満者が増加傾向にあるため、国内では現在、約500万人にSASの疑いがあるとされる。「21世紀の国民病」とも呼ばれるが、無自覚の人が多く、実際に診断を受け、CPAPの治療をしているのは約30万人という。患者はホルモンの関係で特に中高年男性に多く、同年代の女性の3倍に上るとの報告もある。

 

このニュースについて

このページは、Uクリニック竹内歯科が2014年11月10日 16:34に書いたニュースです。

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