エビデンスに反する内容も
Korownyk准教授らが検証の対象にしたのは、米国で制作され、世界に配信されている人気健康情報番組「The Doctor Oz Show(Dr Oz)」と「The Doctors(Doctors)」。前者はコロンビア大学医学部心臓外科のMehmet Oz教授が、後者は救命救急医のTravis Stork氏をはじめ、産婦人科医や小児科医、家庭医、性科学者ら6人の医師が日替わりで司会を務める。
2013年に両番組で放映された内容をそれぞれ40件ずつランダムに選び、その中から番組で推奨されていた健康情報にエビデンス(根拠となる研究結果)による裏付けがあるかなどを評価した。なお、研究には家庭医学が専門のKorownyk准教授をはじめ、薬学、生物統計学など複数の医療・専門職14人から成る、「Doctors」顔負けのメンバーが参加した。
検証の結果、2番組で計160件の推奨のうち、比較的質の高いエビデンスが見つかったのは全体の54%にとどまった。特に「Dr Oz」は46%しかなく、エビデンスがないものが39%、エビデンスに反しているものが15%に上っていた。Korownyk准教授らによると、特に「Dr Oz」で取り上げられる健康情報には、これまでにも医療者から疑問や批判の声が挙がっていたという。
「Doctors」でエビデンスの裏付けがあった推奨は63%、エビデンスがないものが24%、エビデンスに反していたものは14%だった。
効果明らかにしていない推奨も6割
医師たちが司会を務めるとはいえ、全ての推奨を本人たちが伝えているとは限らない実態も分かった。「Dr Oz」ではOz教授本人による推奨は26%(479件中125件)に対し、ゲストによる推奨は65%(同310件)に上っていた。一方、「Doctors」では医師らによる推奨は65%(445件中290件)に対し、ゲストによる推奨は33%(同146件)となっている。
効果を明らかにしていない推奨は、両番組とも内容の6割近くに上っていたと指摘。「Dr Oz」での一例を挙げると、「ビタミンEによる効果は脳力アップと考えられる」と紹介したものの、その利点が目に見える、あるいは測定できるものなのかは検討されておらず、脳力がどの程度アップするかについても触れられていなかったという。
Korownyk准教授らは今回の検証から、健康情報番組で放映される推奨内容は効果に関する適切な情報に欠けることが多いと結論。視聴者に対し、こうした番組で流される健康情報をうのみにしないよう呼びかけている。