今回はインフルエンザの診断について考えてみます。
インフルエンザの流行期には、多くの患者が検査を希望します。検査によって「インフルエンザかどうか診断がつく」と思っている人は多いのですが、そんなに簡単な話ではありません。がん検診の際に「検査には偽陽性と偽陰性がある」という話をしましたが、それはインフルエンザ検査も同様なのです。
インフルエンザ検査の最大の弱点は、かかり始めの初期には実際はインフルエンザであるにもかかわらず、検査が陰性になってしまう偽陰性が20~30%あるということです。つまり、インフルエンザが流行して熱の患者の半分くらいがインフルエンザというような状況では、検査が陰性でも実際は20~30%がインフルエンザなのです。
検査の結果に基づいて、医師が「陰性だからインフルエンザではない」と言えば、患者は「インフルエンザじゃなかった」と無理をして職場に行き、結果的に流行を広げてしまうことになります。困ったことですが、これは検査をするから起きる問題とも言えます。
インフルエンザの初期には、病歴と診察だけで診断した方が検査をするより正確という研究結果があります。インフルエンザにかかった場合、のどにイクラ状の盛り上がりができます。流行期にこうした症状がみられれば、検査をしなくても、かなり正確にインフルエンザであるとの診断がつきます。