子供の舌守れ、万国共通 食育から「SHOKUIKU」へ (2015/1/13 日本経済新聞)

 世界遺産・白神山地を背負う人口約3600人の小さな町が日本一に輝いた。2014年12月に開いた「全国学校給食甲子園」。秋田県藤里町立小学校の栄養教諭、津谷早苗(36)らが全国2157校の頂点に立った。

■地元産で優勝

給食甲子園で優勝した秋田県藤里町学校給食センターの出場者
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給食甲子園で優勝した秋田県藤里町学校給食センターの出場者

 この大会は実際に給食で提供する献立を使い、味や栄養、調理技術などを競う。優勝メニューは味噌付けきりたんぽや白神舞茸のうどん汁などの郷土料理。津谷がこだわるのは地元産の食材だ。13年度は主要野菜15品目のうち県産が6割を超えた。先月は清流で育ったセリを献立に加えた。

 この給食を支えるのは地元の農業生産者団体「あさひ会」だ。会長の荒川和佳子(65)は「安定供給は大変だが、孫世代のためとやりがいがある」と話す。3年前と比べ給食向けの出荷量は約5割増えた。津谷は「食べることは心と体に残る体験。将来、食や健康を考える時、給食を思い出してほしい」と話す。

優勝メニュー
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優勝メニュー

 東京医科歯科大の研究グループは12年、埼玉県の小中学生349人の味覚を調べた。全体の31%が酸味や塩味、苦味、甘味のいずれかを認識できなかった。子供の舌を守るべく給食関係者は現場からの改革を続ける。

 保育所運営のポピンズ(東京・渋谷)は野菜通販のらでぃっしゅぼーや(東京・新宿)と契約し14年11月から給食とおやつに有機・低農薬野菜を使い始めた。ポピンズで献立担当の中沢史江(33)は「食べ残しが目に見えて減った。敏感な時期にいいものを味わうことで舌の能力を高められれば」と期待する。

 食育基本法が制定されて10年が経過したが、食育の成果をどう測るか、悩む現場は多い。

 「お母さん、これ0.8%じゃないよ。もっと薄くして」。高知県香美市の家庭ではこんな会話が増えた。0.8%は味噌汁などの汁物で最適とされる塩分濃度。同市立大宮小学校では「塩分」を食育のテーマに選んだ。同市は成人の高血圧の受療率が高いからだ。

 塩について学ぶだけでなく、各学年6人と4年生全員が毎月、塩分濃度計を持ち帰って汁物の塩分を測る。高知大学と協力し、検尿から塩分摂取量を調べる。校長の竹村栄夫(59)は「食育の一つのモデルになればいい」と意気込む。

■ベトナムで開始

 ベトナム・ホーチミン市のチュンチャック小学校。昨秋から約1千人の全児童向けに給食が始まった。献立作りや調理施設整備を支援するのは味の素だ。経済成長でベトナムの都市部では肥満や生活習慣病の増加が問題化。「食習慣を改善するには給食が効果的」(同社)とベトナム全土に取り組みを広げる。

 健康の基礎となる食習慣を子供のうちに。願いは万国共通だ。「給食甲子園」には台湾などのメディアも取材に訪れ、給食への海外の関心も高まっている。日本の「食育」は世界の「SHOKUIKU」となる潜在力を秘めている。

このニュースについて

このページは、Uクリニック竹内歯科が2015年1月13日 15:30に書いたニュースです。

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