この研究は、英国の加齢に関する縦断研究 (ELSA)での60歳以上の高齢者3,166人を対象に行われ、記憶力と歩行速度のテストにおけるパフォーマンスを比較したもの。
全歯の喪失と記憶力との関連は、社会人口学的特性、健康問題の有無、身体的健康、健康上の習性(喫煙や飲酒など)、うつ病、関連バイオマーカー、社会経済的地位などを含む、広範囲の要因による調整を十分に行ったのちに、その研究結果が示された。また、可能性のあるあらゆる要因を調整したにもかかわらず、歯のない人たちは歯がある人たちに比べて、わずかに歩行速度が遅かった。
英国における全歯喪失の高齢者と、記憶力および身体的機能低下の関連は、75歳以上の高齢者よりも60~74歳の高齢者でより明らかであることも、10年後に示された。
筆頭著者であるUCL・疫学公衆衛生学分野のDr Georgios Tsakosは、「歯の喪失は、特に60~74歳の高齢者における精神的・身体的衰えの初期マーカーに使えるだろう」と述べる。「歯の喪失と精神的・身体的衰えの一般的な原因は、しばしば社会経済的地位に関連している。教育や富など、より広範な社会的決定要因の重要性を強調が、社会の最貧困層の人々の口腔および全身の健康状態の改善につながるかもしれない。歯の喪失と機能低下の関連の背後に何があろうとも、心身の機能低下のリスクが高い高齢者たちにとって、過度の歯の喪失が早期発見の機会であるという認識を持つことだ。こうした機能低下に影響する要因はたくさんある。ライフスタイルや心理社会的な要因は変化を受け入れやすい」と同氏は説明した。
"Tooth loss associated with physical and cognitive decline in older adults(高齢者の歯の喪失は、身体および認識の能力低下に関連する)"というタイトルのこの研究は、Journal of the American Geriatrics Society誌のオンライン版で発表された。