確定申告することで税金が減ったり、戻ってきたりする所得税の医療費控除。どういう費用が控除の対象になり、どういう費用はならないのか、具体的に見ていきましょう。
<診療一般>
病気やけがで医療機関にかかった場合、公的医療保険の自己負担分はもちろん、控除の対象ですが、保険がきかない自費診療の費用も、あまり特殊な治療法でない限り、控除対象になります。保険適用かどうかは関係ないのです。一方、美容や健康増進を目的にした医療費は対象になりません。医療に直接関係ない費用も対象外です。以下、表の形で例示していきます。
(○=控除対象になる、△=条件によってなる、×=対象にならない)
○ 保険診療の自己負担(歯科・薬局・訪問看護を含む) |
<入院>
医療を受けている時の介護費用も対象になるので、高齢者の入院時などに負担額の大きいオムツ代を控除できます。差額ベッド代をはじめ、主として生活面と考えられる費用は対象外です。
○ 入院中の食事療養費・生活療養費の自己負担 |
<市販薬など>
くすりは、病気やけがに伴うものなら、自分で買った分も基本的に対象になります。健康の維持増進を目的にしたビタミン剤、サプリメントなどは対象外です。
○ 薬局・薬店で買った風邪薬など市販の治療薬 |
<歯科>
歯科では、インプラントを含めた自費診療分も控除の対象です。治療費がかさんだ場合はぜひ確定申告をしましょう。一方、美容目的のものは対象になりません。
○ 自費の入れ歯、金・白金・セラミック、インプラント(美容以外) |
<施術など>
はり師などの国家資格者による伝統的な施術は、病気やけがの治療が目的なら、保険が適用されないときでも、特殊な方法を除いて、控除対象になります。医療機関以外での心理カウンセリング、整体などは国家資格の制度もなく、医療費控除できません。
△ はり師・きゅう師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師の施術(疲労回復・健康維持を目的とした施術は対象外) |
<妊娠・出産>
妊娠・出産の費用は、異常がない場合でも医療費控除の対象です。不妊治療や中絶の費用も対象になります。ただし公的医療保険からの出産育児一時金や不妊治療費の公的助成を受けた場合は、その額を差し引かないといけません。
○ 出産費用、妊婦検診、産後の検診・保健指導、不妊治療、人工授精、妊娠中絶 |
<健康診断・予防接種>
基本的には対象外ですが、例外的に控除できることがあります。
○ メタボの特定保健指導(積極的支援)の自己負担 |
<交通費>
通院の交通費も医療費控除の対象です。短距離の電車・バス・船の利用は、支出のメモでも認められます。マイカーを利用した通院費用は控除できません。なお、移送費の支給を保険から受けたときは、差し引く必要があります。
○ 電車・バスによる通院費(受診に必要な付添者分も) |
<高齢者介護・看護>
介護サービスの扱いは単純ではありません。大まかに言うと、医療系サービスや、医療・看護と並行して行われる介護サービスの費用は、医療費控除の対象になります。一方、医療を伴わない施設利用や生活面のみのサービスは対象外という考え方です。実際には医療か生活かという二分法のあてはまらないサービスもあるので、たとえば特養ホームは自己負担の2分の1だけ控除できることになっています。
○ 老人保健施設、介護保険の療養病棟の自己負担(食費・居住費を含む) |
<障害者>
高齢者の場合とほぼ同様に、医療や身体介護と関連するサービスか、生活面の支援だけかという観点から区別します。
○ 自立支援医療の自己負担 |
<用具>
国税庁は、医師の指示の有無を重視しています(ちょっと古い感覚のような気もしますが......)
○ 子どもの弱視や目の病気の治療用めがね(処方の写しが必要) |
<その他>
温泉療養の費用も医師が必要性を認めれば、控除できることがあります。
○ 骨髄移植・臓器移植のあっせんに伴う患者負担金、骨髄・臓器提供者の手術費 |
差し引くもの、差し引かないもの
医療費の埋め合わせと解釈される給付は、それに対応する個々の費用の範囲内で差し引いて、控除対象額を計算します。給付額のほうが多くても、他の医療費から差し引く必要はありません。
具体的には、次のようなものが差し引きの対象です。
高額療養費制度・高額介護サービス費制度による還付金、保険給付の出産育児一時金・移送費・療養費、生命保険・民間医療保険・損害保険・互助組織から出た医療費を補う保険金・給付金、加害者から支払われた医療費など |
一方、仕事を休んだことや死亡、障害、精神的苦痛などに給付されるものは差し引きません
公的医療保険から給付される傷病手当金・出産手当金、雇用保険の育児休業給付金、埋葬費・葬祭費、加害者からの慰謝料など |
以上の内容は、国税庁に確認済みです。解釈がわからないときは、税務署、国税局、国税庁の相談窓口か、知り合いの税理士に問い合わせてください。